「良い商品・サービスを作っただけでは売れない」。ではどうすればよいのか?歴史的な例をもとに解説しています。
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「良い商品・サービスを作っただけでは売れない」。
「良い商品・サービスを作っただけでは売れない」とよく耳にすると思います。
今では、類似した商品やサービスが普及していることもあり、しっかりと消費者の『購買に向けた心理プロセス』(※)を理解し、「作った商品やサービスを知ってもらう」必要があるのです。
これは、現代だけに限ったことではありません。
これまでの歴史でも、「開発した商品が売れない」という課題に直面し、解決してきた例があります。
それらの例は、『マーケティング戦略』によって開発した商品の消費活動を習慣化させるためにブームを作り、それが認知されて文化にまで発展し、ライフスタイルまで変えて普及させることができました。
※『購買に向けた心理プロセス』については、こちらの記事をご覧ください。
刺さる施策や効率的なアクションをするためには、顧客の心理プロセスを把握することが必要です。そんな時に有効な考え方である『AIDMA』『AISAS』に関して解説します。
代表的な例を3つ、紹介します。
土用の丑の日に鰻を食べる
「土用の丑の日」とは?
そもそも土用とは、立春・立夏・立秋・立冬の直前の約18日間を指します。
年に4回訪れるこの時期は季節の変わり目とされているため、精のつく食べ物を食べると良い時期とされていました。
「土用の丑の日に鰻を食べる」ようになったきっかけ・課題
江戸時代、夏でも鰻(うなぎ)の蒲焼を売れるようにしたかった鰻屋が、当時から蘭学者として有名だった平賀源内にアドバイスを求めたことが始まりと言われています。
「鰻の蒲焼が夏でも売れるようにする」ために・・・
鰻屋から相談を受けた平賀源内は、丑の日にちなんで、「丑の日には『う』のつく食べ物を食べると縁起が良い」という語呂合わせを考えて、「丑の日に鰻を食べると夏負けを防ぐ」という健康法を広めることになりました。
その結果として・・・
平賀源内からアドバイスを受けた鰻屋は、店の前に「本日、土用丑の日」と書いた看板を置き、それが呼び水となって大繁盛となったそうです。
それを見たほかの鰻屋もマネをするようになり、それ以降、土用の丑の日に鰻を食べる風習・習慣が広まりました。
現在も、土用の丑の日、特に夏場の立秋直前の時期に鰻を食べる習慣は根づいています。
バレンタインデーに女性からチョコレートを贈る
「バレンタインデー」とは?
バレンタインデーはもともと海外の行事ですが、由来としては、3世紀頃のキリスト教の聖職者だったヴァレンティヌスを祭る日と言われています。
3世紀当時、皇帝のクラウディウスは、兵士らに家族ができると士気が弱まるという軍事的な面から、結婚を禁止していました。
しかし、キリスト教の司祭だったヴァレンティヌス(バレンタイン)はその命に背いて密かに若者や兵士たちを結婚させていたため、クラウディウス皇帝によって処刑されてしまいました。
後世の人々は、このヴァレンティヌス司祭の勇気のある行動に感化され、処刑された2月14日を「聖バレンタイン」と呼ぶようになったのが由来とされています。
14世紀頃から、男女の恋愛に結びつけられるようになり、戦後にアメリカから日本に伝わったと言われています。
「バレンタインデーに女性からチョコレートを贈る」ようになったきっかけ・課題
アメリカから伝わった「バレンタインデー」は、恋人たちの間でプレゼントやラブレターを贈る習慣だったので、「女性からチョコレートを贈る」というものではありませんでした。
この「チョコレートを贈る」という習慣・風習の始まりについては諸説ありますが、一説によると、1936年頃、神戸のチョコレートメーカーのモロゾフ製菓が、外国人向けの英字新聞『ザ・ジャパン・アドバタイザー』に「愛の贈り物としてチョコレートを贈りましょう」と宣伝広告を掲載したのが始まりと言われています。
「バレンタインデーに女性からチョコレートを贈る」ようにするために・・・
日中戦争の時期だったこともあり、当時は定着しなかったようですが、1951年に改めて、バレンタインデーにチョコレートを宣伝し、それが阪急百貨店の目に留まり、恒例の企画となったそうです。
このように、関西から広まった「バレンタインデーに女性からチョコレートを贈る」という習慣ですが、1958年に大田区の製菓であるメリーチョコレートカンパニーが、新宿伊勢丹で「バレンタインセール」の看板広告を出稿したのが、関東での始まりとされています。
毎年バレンタインデー企画を実施していく中で、新聞や雑誌にも広告を出稿し、小学校高学年~高校生の学生層、主婦層に浸透していったと言われています。
その結果として・・・
1970年代後半にはOLがチョコレートを購入するようになって売り上げが右肩上がりになり、1980年代に「義理チョコ」文化が誕生すると、チョコレートのマーケットは3,000億円を超える規模になったようです。
朝食にトースターで焼いたパンを食べる
「朝食にトースターで焼いたパンを食べる」ようになったきっかけ・課題
トーマス・エジソンが、1910年に電気トースターを発明しましたが、当初売り上げが芳しくない状況だったようです。
「朝食にトースターで焼いたパンを食べる」ようにするために・・・
そこで、トーマス・エジソンは「朝食に(発明した電気トースターで)パンを焼いて食べる」ことを宣伝し、それまで、1日2食だった習慣を「1日3食」が良い、と併せて広めたことで、売り上げが拡大していきました。
その結果として・・・
トーマス・エンジンが打ち出した「朝食にトースターで焼いたパンを食べる」&「1日3食」というキャンペーンは、それまでのライフスタイルの根底を覆して文化として定着し、巨大な経済規模に膨れ上がりました。
※さらに、トーマス・エジソンは電力会社を経営していたと言われています。電気トースターを購入して使ってもらうことで、自社の電力会社の報酬にも好影響を与えようとしたとも言われています。
まとめ
これらの3つの例は、『マーケティング戦略』の成功事例と言えます。
まず『開発した商品(・サービス)を知ってもらう』。
そのために、消費活動が促進・習慣化するようにキャンペーンを継続して実施することで、認知度や知名度が上がり、結果として文化にまで発展して、それまでのライフスタイルまで変えることになった歴史上の例です。
現代では、SNSで「バズる」という現象が起こりますが、一過性の『ブーム』(※)に終わらせずにライフスタイルまで変えるというのは、さすがに難しいかもしれません。
商品やサービスを開発するだけではなく、普及させるために既存の風習や文化に新たな価値を盛り込むことで『0から1を生み出す』ことができるのが『マーケティング戦略』の理想だと言えます。
※『ブーム』や『バズる』といった現象の詳細については、こちらのページをご覧ください。
取り扱う商品・サービスがより売れる『起爆剤』として思い浮かぶ『ブーム』や『流行』、『バズる』といった現象。それぞれの意味と違い、発生する要因や近年ブームになった商品のブームの持続期間などについて解説しています。
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