議論の場での追及を避けるために、質問の核心には触れずに「論点のすり替え」をわざと行い回答する『ご飯論法』。
ご飯論法の概要と、類似した論法であるストローマン論法(藁人形論法)、お前だって論法やきなこ餅論法、それぞれの違いと
「論点のすり替え」の対処法などについて解説しています。
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『ご飯論法』とは?
『ご飯論法』とは、議論の場での追及を避けるために、質問の核心には触れずに「論点のすり替え」をわざと行い回答する論法を指します。
論点をそらす・はぐらかす形で展開される点が特徴と言えます。
イメージとしては・・・
簡単にイメージできる例としては、以下のようなやり取りが挙げられます。
- 「朝ご飯」を食べましたか?
- (パンを食べたけどご飯は食べてないから)「ご飯」は食べてません。
「朝ご飯を食べましたか?」という質問に対して、「ご飯」の意味を意図的に狭い意味として解釈し、例えパンを食べていたとしても「ご飯(米食)は食べていない」と答える、という手法です。
質問側の意図をあえて曲解して歪め、論点をずらして回答をはぐらかすというものです。
この論法は「ウソをついていない」ことになるので、後々「食べていないって言ったじゃないか」と問い詰められたとしても、「ご飯を食べていない、と言っただけで、ご飯以外のものを食べていないとは言っていない」と主張することができるのです。
このように、ウソをつかずに本当のことを言及しないのが『ご飯論法』です。
提唱したのは?
この『ご飯論法』は、2018年に法政大学の上西 充子 教授がTwitter(現X)でつぶやいたことで知られています。
その後、ブロガーの紙屋 高雪 さんが『ご飯論法』として命名し広まることになり、「流行語大賞」のTOP10に選出されて両名は共同受賞することになりました。
そもそも、この言葉は国会討論の中で、政権与党側が野党からの追及をかわすために、論点をずらしたり誤魔化すことを表した言葉として生まれました。
有名なのが、当時の安倍首相の「アベノマスク」についての記者とのやり取りです。
新聞社の記者から「アベノマスク」の配布について批判が出ていることを質問された際に「御社(記者が所属する新聞社)のネット通販でも布マスク2枚を3,300円で販売されていたことを承知しています。そのようなニーズがある中で、マスク2枚を配布しました」と安倍首相は反論しました。
記者からの質問に対して正面から答えることなく、論点をはぐらかす『ご飯論法』によって切り返した例として知られています。
類似した論法①『ストローマン論法』
論点をすり替える手法は、さまざまあります。『ストローマン論法』もその一つです。
『ストローマン論法』とは、相手の主張を単純化したり極端化して捻じ曲げて、その歪めた主張に反論・論破する(釘を打つ)ことを意味します。
「ストローマン」とは日本語で「藁人形」であることから、『藁人形論法』や『かかし論法』、『架空の論法』とも呼ばれています。
ちなみに、歪んだ情報を元に論争が起きることに疑問を抱いて、歌手の宇多田 ヒカル さんが「ツイート(Twitter:現Xでの投稿)」したことがきっかけとなり、元々あった『ストローマン論法』が話題になりました。
『ストローマン論法』の例
社内のミーティングで、こんな議題があがったとします。
- Aさん:「副流煙でほかの社員の健康を害するから、就業時間中の喫煙は止めませんか?」
- Bさん:「仕事の息抜きで少しぐらい嗜好品に頼ってもいいじゃないですか。そう言うAさんも毎朝出社する時に買っているコーヒーをやめられますか?」
この会話では、Aさんは「健康上の問題があるので、就業時間中の喫煙を止めてほしい」と主張していますが、BさんはAさんの主張を「嗜好品はすべてよくない」という主張に勝手にすり替えてAさんを非難し、タバコを吸うことを正当化しようとしています。
このように、発言者の主張を単純化したり極端なものに置き換えて歪めて、その論点を非難することで、議論を有利に進めようとする論法を『ストローマン論法』と呼びます。
『ストローマン論法』の特徴と『ご飯論法』の違い
この『ストローマン論法』には、以下の特徴があります。
- 相手の主張の一部分だけを切り取り、極端な印象を持たせたり、誇張して捉える。
- 相手の主張と関係のない立場に対して批判し論破する。
『ご飯論法』は元の質問をはぐらかしますが、『ストローマン論法』は相手の主張を歪めて攻撃を展開する点が違いと言えます。
類似した論法②『お前だって論法』
論点をすり替える論法にはほかにも、『お前だって論法』があります。
相手の主張や批判に対処せずに、相手が過去に似た言動をしたことを指摘して論点を逸らす『お前だって論法』。
相手の質問の核心に触れずに「論点のすり替え」を行う『ご飯論法』に対し、『お前だって論法』は主張する相手の過去に遡って類似した言動を指摘して、批判を逸らしたり論点を拡散させて、「泥仕合」に持ち込み「どっちもどっち」にしようとする点に違いがあります。
※『お前だって論法』の詳細については、こちらの記事をご覧ください。
相手の主張や批判に対処せずに、相手が過去に似た言動をしたことを指摘して論点を逸らす『お前だって論法』。発生することによって生じる問題点や対処方法、「お前だって」に立ち向かうために必要な2つの注意点について解説しています。
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この続きでは、『ご飯論法』と類似した『きなこ餅論法』、それぞれの違いと
「論点のすり替え」の対処法などについて解説しています。
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