『ディルバートの法則』とは?
組織を構成するメンバーは、昇進し続けてステージが変わることで活躍できなくなってしまう=無能化してしまう。
その結果、組織全体が無能化し機能不全を起こしてしまう、という『ピーターの法則』(※)がありますが、このピーターの法則から派生した法則の1つに『ディルバートの法則』があります。
※『ピーターの法則』に関しては、こちらの記事をご覧ください。
興味や説得力を持たせる心理的効果が見込める『ジンクピリチオン効果』。活用例や使う際の注意点やポイントを交えて解説しています。
『ディルバートの法則』とは、「組織の損害を最小限に留めるため、あえて無能な人材を意図的に(主に中間管理職に)昇進させる」というものです。
『ディルバートの法則』の由来
『ディルバートの法則』は、アメリカの漫画家であるスコット・アダムズによって提唱されました。
IT企業でエンジニアとしての経験を持つスコット・アダムズが描いた漫画『ディルバート(Dilbert)』の中で、「企業は無能な従業員を管理職に昇進させる傾向がある」と述べ、その後経済紙のウォール・ストリート・ジャーナルに寄稿した記事の中で、「組織の生産性に直接的に関与しているのは組織の下部層で働く人たちであり、上層部に属する人間たちは生産性にほとんど寄与していない。その結果、組織は損失を最小限に留めるために、無能な人間ほど生産性に大きく関与しない上層部に昇進させられることがある」と紹介したとされています。
『ディルバートの法則』の原理・メカニズム
この『ディルバートの法則』は、「生産的な業務の大部分は組織の下層部の人々によって行われている」ことが前提条件となっており、そのため、無能な人材がその生産性の高い下層部にいると顧客の気分を害してしまう、ほかの従業員を不愉快にさせてしまう、サービス品質低下を招くリスクが高まるため、上層部に昇進させて生産性の高い業務に関わらせないようにすることで、顧客満足度・サービス品質の低下やそのほかの従業員への悪影響を避け組織運営をスムーズにする狙いがあります。
『ディルバートの法則』の回避策
『ディルバートの法則』を回避する方法は、『ピーターの法則』で述べられています。
昇進する前にポジションに応じた能力を獲得できる教育・研修制度を設ける
昇進後の管理職などの新たなポジションに求められる能力を、研修などで昇進前に獲得させる機会を設けるというものです。
教育・研修制度と併せて、新たなポジションですでに活躍している人材がフォローすることで、無能化を回避することが期待されます。
生産性の高い下部層の従業員に納得感が持てるかどうかも大切なポイントとなります。
組織の下層部と比較して上層部は給与が良い傾向が強いので、無能とされる人材が昇進するのは下層部の従業員から反発を招く恐れがあります。反発が積もり積もると所属企業を去る選択肢を選ぶケースも往々にして起こり得るので、結果的に生産性の低下にもつながってしまいます。
なので、「生産性に直結する現場には適正はないが、管理職やマネジメント層であれば適正がある」となれば、余計な軋轢や生産性の低下を避けられるはずです。
最後に
無能な人材を上のポジションに昇進させるという『ディルバートの法則』は、多くの企業に当てはまるというよりは、組織機能を維持・向上させるために大局的な判断としての荒療治的な方法を選択できる、企業体力のある大規模企業ならではの特殊ケースかもしれません。
人員の限られた中小規模の企業にとっては、一人一人の人材・管理職の役割は大きいものとなるため、『ディルバートの法則』が成り立ってしまうのは死活問題になり兼ねないからです。
とはいえ、企業規模問わず、活躍のできない人材が有能な人材に悪影響を及ぼす可能性があるのも事実なので、『ディルバートの法則』が成り立たないよう、採用のタイミングでふるいにかける・昇給や研修制度などの事前・事後対策が求められます。
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