「1位」や「No.1」「ナンバーワン」という表現を用いて訴求力を高め、消費者の購買意欲を高める手法である『No.1マーケティング』。
発生する理由や得られるメリット、実施手順や注意点などについて解説しています。
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『No.1マーケティング』とは?
『No.1マーケティング』とは、「1位」や「No.1」「ナンバーワン」という表現を用いて訴求力を高め、消費者の購買意欲を高める手法です。
戦略的手法と捉えると『ナンバーワン戦略』、心理作用的に捉えると『ナンバーワン効果』と表現できますが、ここでは、マーケティング手法として捉えて『No.1マーケティング』としています。
テレビCMや街頭広告、Web広告などで目にする「昨年度・売上ナンバーワン」や「累計販売数第1位」、「顧客満足度1位」や「売上No.1」。
この「1位」や「No.1」「ナンバーワン」というキャッチコピーは、商品やサービスの訴求力を高める有効な手段として大手企業をはじめ、多く用いられています。
これらのキャッチコピーがどれだけ訴求力があるかを示す例としては、「日本で一番高い山は?」と聞かれると「富士山」と多くの人が答えられると思いますが、では「2番目に高い山は?」と聞かれてもすぐに答えられる人は少ないのではないでしょうか?(ちなみに2番目に高い山は、山梨県アルプス市にある北岳です)
このことからもわかる通り、「1位」や「No.1」「ナンバーワン」という表現は、それを目にする消費者に強いインパクトを残しますが、2番目以降はあまり記憶には残りません。それほど訴求力の強い表現と言えます。
『No.1マーケティング』効果が発生する2つの理由
限定条件下の事実
No.1マーケティング効果が発生する理由としては、『限定条件下の事実』という考え方が挙げられます。
限定条件下の事実は、ある限られた条件のもとにおいてのみ当てはまる事実という意味です。
特定の地域、特定の期間、特定の業種や職種など、条件を限定すれば、ほとんどの企業や店舗に当てはまる「No.1」という事実があるはずです。
バンドワゴン効果
次に理由として挙げられるのは、「ナンバーワンなのだから、実績や人気があって多くの人が購入・導入しているだろう」と思うことで『バンドワゴン効果』が作用しやすくなることが挙げられます。
この『バンドワゴン効果』(※)とは、「みんなが持っているなら自分も欲しい」「世の中の流行に乗り遅れたくない」という心理が作用する、他者との同質化に対する願望が評価や判断材料、行動を促す事象のことです。
世間や周囲の人々の判断や行動に同調して自身も同様の振る舞いをするようになる心理作用として知られていますが、この『バンドワゴン効果』が生じることによって、購買意欲が高まったり、実際に購買行動をする可能性が高まることになります。
※『バンドワゴン効果』の詳細については、こちらの記事をご覧ください。
バンドワゴン効果とは? バンドワゴン効果とは、経済学者であるライベンシュタインが1950年の論文の中で提示した行動心理学の事象の1つです。 「バンドワゴン」とは行列の先頭を行く「楽隊車」を意味し、「みんなが持っているなら …
『No.1マーケティング』によって得られるメリット
価格競争に巻き込まれにくくなる
市場(マーケット)には競合他社・競合商品があるため、場合によっては競合に倣って価格を下げるというケースがあります。
そうなると、いくら販売しても利益が上がらないという負のスパイラルに陥ってしまうことになってしまいます。
ですが、そのマーケットにおいてナンバーワンであれば、そういった価格競争から抜け出し、大きな利益を得られるようになる可能性が高まります。
安定した利益を確保できるようになる
市場(マーケット)において、競合と一線を画すようなナンバーワンの地位を築くことができれば、消費者に自社の商品・サービスが選ばれる確率が高まることになります。
さらに、継続して自社商品・サービスを選んでくれる『ロイヤルカスタマー』の獲得も期待できるようにもなります。
そのロイヤルカスタマーを多く獲得することになれば、より安定した利益を確保できるようになります。
『代名詞効果』を得ることができる
『代名詞効果』とは、市場(マーケット)で「No.1」「ナンバーワン」を獲得した商品やサービスの名前が広く浸透し、消費者の多くがそのナンバーワン以外の商品・サービスの名前を思い浮かべにくくなる心理作用のことです。
つまり、「〇〇と言えば(この会社の)▲▲だ」と認識されるようになる心理効果とも言えます。
この代名詞効果が得られれば、市場における優位性がより確固たるものになり、例え市場に新規参入があっても大きな影響を受けることがなくなります。
『No.1マーケティング』戦略を行う手順
大手企業はもとより、中小企業が「No.1」「ナンバーワン」の地位を獲得するためには、以下のプロセスが必要となります。
市場(マーケット)の細分化
まず行うべきなのが、市場(マーケット)を細分化することです。
例えば競合他社が大きなシェアを占めている場合、劣勢に立たされている側は「ナンバーワンを獲得できそうな市場・マーケット」を探す(※)ことが求められます。
販売ターゲット(年齢や性別、役職や職種)、商品やサービスの販売地域や利用シーンが限定されている市場・マーケットが該当します。
※市場(マーケット)の細分化に役立つ『セグメンテーション』の詳細については、こちらの記事をご覧ください。
『セグメンテーション』とは? セグメンテーションとは、現代のマーケティングの第一人者として知られている、フィリップ・コトラーが提唱した『STP分析』という手法を構成する1つです。 『STP分析』は、セグメンテーション(S …
ターゲットを限定する
市場を細分化し、自社商品やサービスにとって有利なマーケットを見つけた後は、そのターゲットに『一点集中』して商品やサービスを開発・販売、訴求していく(※)必要があります。
中小企業の場合であれば、大手企業にはない、ならではの小回りの良さを活かして対象を限定した戦略・戦術(アクション)を実行するという形になります。
※対象を限定して戦略を練り戦術を実行するために有用な『ターゲティング』の詳細については、こちらの記事をご覧ください。
ターゲティングとは? ターゲティングとは、現代のマーケティングの第一人者として知られている、フィリップ・コトラーが提唱した『STP分析』という手法を構成する1つです。 『STP分析』は、セグメンテーション(Segment …
自社独自の『価値』や『強み』を明確化
大きなシェアを占めている競合他社を回避し、販売ターゲットを一点集中したとしても、その市場には競合に位置する企業がいます。
そのため、自社独自の『価値』や『強み』を明確にして差別化を図る(※)ことが求められます。
※自社独自の価値や強みを明確にする『ポジショニング』の詳細については、こちらの記事をご覧ください。
ポジショニングとは? ポジショニングとは、現代のマーケティングの第一人者として知られている、フィリップ・コトラーが提唱した『STP分析』という手法を構成する1つです。 『STP分析』は、セグメンテーション(Segment …
「No.1」「ナンバーワン」を用いる際の注意点
「恣意的なNo.1調査」への抗議
2022年に、一般社団法人 日本マーケティング・リサーチ協会(JAMA)が、「非公正なNo.1調査への抗議」を発表しました。
これは、「No.1」を取得させるという結論ありきで、調査対象者や質問表を恣意的に設定する調査の実施を請け負う業者に対して、厳重抗議を行ったという内容です。
「顧客満足度1位」や「売上No.1」というキャッチコピーは、消費者に対して強い訴求力があるため、ホームページや広告などでよく用いられています。
しかし、そうした「No.1表示」には、同協会の指摘にもあるように、客観的な調査結果に基づいた明確な根拠がなくてはなりません。
※ですがこの抗議は穿ってみると、業界大手の調査会社が「都合の良い調査でクライアントを得ようとする競合他社を良しとしない」という声明とも言えるので、額面通りそのまま受け取ることもないとは思います。
「No.1表示」の違反をするとどんなペナルティがあるのか?
「No.1表示」については、公正取引委員会が定義しています。
2008年に公表した「No.1表示に関する実態報告書」において、以下のように定められています。
商品等の内容の優良性や取引条件の有利性を表すNo.1表示が合理的な根拠に基づかず、事実と異なる場合には、景品表示法上問題となる。
この景品表示法の違反が認められると、消費者庁から「措置命令(再発防止策の実施など)」が行われ、さらに課徴金(違法商品・サービスの売上額の3%)の納付を命じられることになります。
「No.1表示」を法的に逸脱させないためには?
では、景品表示法上、問題とならないためにはどうするべきか、上述の実態調査報告書では4通りの方法が挙げられています。
●商品等の範囲に関する表示
●地理的範囲に関する表示
●調査期間・時点に関する表示
●No.1表示の根拠となる調査の出典に関する表示
商品等の範囲に関する表示
→No.1表示の根拠となる調査結果に即して、一般消費者が理解することができるようにNo.1表示の対象となる商品等の範囲を明瞭に表示すること。
つまり、一般消費者が理解できない・しにくいと思われる場合には、理解できるよう説明を加える必要があります。
地理的範囲に関する表示
→No.1表示の根拠となる調査結果に即して、調査対象となった地域を、都道府県、市町村等の行政区画に基づいて明瞭に表示すること。
例えば、「地域No.1」と表記しても、調査対象としている地域が具体的にわからないため、問題となる可能性があります。
調査期間・時点に関する表示
→No.1表示は、直近の調査結果に基づいて表示するとともに、No.1表示の根拠となる調査の対象となった期間・時点を明瞭に表示すること。
例えば、過去の調査結果であるにも関わらず、期間を明示せずに「No.1」と表示すると、消費者が現在もNo.1だと誤認する可能性があるため、表示することが求められます。
No.1表示の根拠となる調査の出典に関する表示
→No.1表示の根拠となる調査の出典を具体的かつ明瞭に表示すること。
この「調査の出典」は、調査会社名なども表示することも該当します。
最後に
「1位」や「No.1」「ナンバーワン」という表現を用いて訴求力を高め、消費者の購買意欲を高める手法である『No.1マーケティング』。
インパクトがあり高い訴求力が期待できますが、その分、根拠と言った信頼性が厳しく問われます。
自社目線ではなく客観的な調査を実施したうえで、消費者にあらぬ誤認をさせないよう、注意して取り扱うべき手法と言えます。
実際に第三者機関である調査会社に依頼してみると「No.1」ではない結果が出ることもあります。とはいえ上述の通り、信頼性が担保された根拠がなければ大きなペナルティを負うケースもあります。
もし、「自社商品やサービスが狙うべきターゲットがわからない」「自社商品やサービスの強みや独自の価値がわからない」「No.1・ナンバーワンと言えるモノがない」際には、株式会社SBSマーケティングにまずご相談ください。
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