「善人」を装って近づいて他人を思い通りに操ろうとする！？『マニピュレーター』

「善人」のふりをして近づいてきて、ターゲットを自分の思い通りになるように操ろうとする『マニピュレーター』。
主な特徴や「手口」、なってしまう原因、「ターゲット」にされやすい人の特徴や
出会ってしまった時の対処法などについて解説しています。

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『マニピュレーター』とは？

「善人」のふりをして近づいてきて、ターゲットを自分の思い通りになるように操ろうとする『マニピュレーター（Manipulator）』。

「マニピュレーター」とは直訳すると「操る者」という意味で、自身の望みを果たす・優越感を満たす目的で、他人の心をコントロールしようとします。

このマニピュレーターの「ターゲット」になってしまうと、気が付くと職場など自分が所属する集団内で「孤立」してしまったり、「自尊心」を傷つけられたりするため、生態を知り対策を理解しておくことが必要になります。

提唱したのは？

この『マニピュレーター』は、アメリカの臨床心理学者である、ジョージ・サイモン 氏が定義しました。

ジョージ・サイモン 氏は、『マニピュレーター』を「羊の皮をかぶったオオカミ」と例えており、暴力や威圧といった、あからさまな手法を用いることなく、周囲に悟られないよう周到に本心を隠して狡猾に相手を攻撃する特徴があります。

「一見すると善人のように見える」ことから、被害を被った人が周囲に訴えたとしても、『マニピュレーター』の言い分が正しいと錯覚されてしまうことも。

主な『マニピュレーター』の特徴

「善人」を装ってターゲットを陥れようとする『マニピュレーター』。

具体的には、以下のような特徴を有しています。

• 一見すると優しそうで親切だが時々傷つける発言をする。
• 人当たりが良く、抜け目がない。
• 他人の感情や意思を読み取ることに長けている。
• 相手の弱点や不安に思っていることを察知して利用しようとする。
• ウソやお世辞がうまい。
• 自身の失敗やミスを他人のせいにしたり悪者扱いする。
• 周囲の人の評判を落として、争いを引き起こす。
• 他者よりも優位になりたい願望が強く、承認欲求も強い。

『マニピュレーター』の「手口」

一見すると「善意」に見えることのある『マニピュレーター』の手口は「巧妙」であるため、『マニピュレーター』への理解を深めて、具体的な「手口」を知っておくことが重要です。

• 「親切」を装って貶めようとする
• 周囲から「孤立」させて「唯一の理解者」を装う
• 「被害者の顔」をして罪悪感を駆り立てる

「親切」を装って貶めようとする

『マニピュレーター』にとって邪魔な存在（ターゲット）に対して、「会社や組織を思って・・・」「そんなつもりはなかった」という態度を装って足を引っ張ったり排除しようとします。

具体的には、組織を束ねるリーダーに「（ターゲットである）〇〇さんは同僚の間では評判が良くない」と吹き込んで評価を下げようとしたり、ターゲット自身に対して「これ以上ウチの会社にいるのは、あなたにとって良くない」と言って職場から追い出そうとする、といったケースが挙げられます。

ほかにも、ターゲットになってしまった人が抱えている悩みや秘密を「そんなつもりはなかった」と広めたりしてしまうことも。

『マニピュレーター』が吹聴していることに気づき問い詰めたとしても、「天然ボケ」のふりをしたりシラを切ることがあり、「わざと言ったのではないのかも？」と思ってしまうかもしれません。。

周囲から「孤立」させて「唯一の理解者」を装う

『マニピュレーター』は、ターゲットを周囲から切り離すことで、自身の支配下に置こうとします。

悪評や噂話を広めて周囲との信頼関係を不安定にさせ、「自分（マニピュレーター）だけがあなたの理解者」と思わせる構図を意図的に作り、精神的に依存させて自身の立場を優位に保とうとするのも典型的な手口の一つです。

「被害者の顔」をして罪悪感を駆り立てる

『マニピュレーター』は、ターゲットを「悪者扱い」して罪悪感を与えることで、自身のコントロール支配下に置こうとします。

自身の立場が危うくなると、『マニピュレーター』は「あなたのせいでこうなった」と被害者を装い、ターゲットに罪悪感を植え付けるとともに周囲の同情を引こうとします。

ターゲットを「加害者」に仕立てることで、自身の正当性を主張しつつ責任逃れをするのです。

ターゲットになってしまった人が、相手が『マニピュレーター』だと気づいていない場合、人によっては「自分が悪いのかも・・・」と思い込んでしまい、言いなりになってしまうかもしれません。

『マニピュレーター』の「ターゲット」になりやすい人の特徴

自身の望みを果たす・優越感を満たす目的で「善人」のフリをして近づいてくる『マニピュレーター』。

この『マニピュレーター』の「ターゲット」にされてしまいやすい人には、以下のような特徴が見られます。

• 他人の話を「鵜呑み」にしてしまう
• 「自責思考」が強い
• 自分の意見を「ハッキリ」言えない
• 自己認識に乏しく「鈍感」
• 自分に「自信が無い」
• 「事なかれ主義」から対立を避けてしまう

他人の話を「鵜呑み」にしてしまう

根拠の乏しい噂話や事実ではない話を疑わずに受け入れてしまう人は、『マニピュレーター』によって扱いやすい「都合の良い存在」になってしまいます。

「自責思考」が強い

『マニピュレーター』が悪評や噂話を広めることに対して、原因が「自分自身」にあると捉え、自分の中に原因を探そうとする「自責思考」が強い人は、ターゲットにされやすい傾向があります。

自分の意見を「ハッキリ」言えない

自分の意見や気持ちを、率直に表現するのが苦手な人も、『マニピュレーター』のターゲットになりやすい傾向があります。

自己認識に乏しく「鈍感」

『マニピュレーター』が発するウソや噂話を敏感に見抜くことができない人も、ターゲットとして狙われやすい傾向があります。

自分に「自信が無い」

自分に対して「自信がない」人も、『マニピュレーター』のターゲットになりやすい傾向があります。

自信が無く自己肯定感が低い人ほど、褒められたり糾弾されると、その思いに応えようと相手の要求を受け入れてしまうからです。

「事なかれ主義」から対立を避けてしまう

波風を立てず、何事も穏便に済ませようとする人も、『マニピュレーター』にとっては「扱いやすい存在」となるため注意が必要です。

日本では「和をもって貴しをなす」という考え方が根付いており、周囲との調和を保ち当たり障りのない対応をしがちですが、反撃の危険の少ない存在となるため、『マニピュレーター』に狙われやすいリスクがあります。

『マニピュレーター』になってしまう原因

自身の望みを果たす・優越感を満たす目的で、他人の心をコントロールしようとする『マニピュレーター』になってしまう原因としては、以下の点が挙げられます。

• 「得になること」がある
• 「支配欲求」が強い
• 「影響力を誇示したい」という願望
• 自分の「非を認めない」頑固さ
• 「悪性のナルシシズム」を抱えている
• 「共感性」の欠落

「得になること」がある

自身にとって何らかの「得になること」があるため、『マニピュレーター』になってしまうと考えられます。

「得になること」は、得られる満足感や優越感、自身の保身や人事評価など、場合によって異なります。

「支配欲求」が強い

『マニピュレーター』は、強い支配欲求を持っています。

金銭的なメリットというよりも、ターゲットを「自分の思い通りにする」ことで得られる、満足感であったり快感を求めて行動している場合があります。

そうした支配欲求を原動力にしているため、ターゲットが困ったり動揺する様子を見て、優越感を得ているケースも考えられます。

「影響力を誇示したい」という願望

『マニピュレーター』には、自身の影響力を誇示したがる傾向があります。

自身の言動によってターゲットを従わせることで「優位に立っている」という満足感を得ようとする、というわけです。

また、影響力を誇示するために、「著名な〇〇大学の□□教授も△△と言っている」などと、周囲に『権威バイアス』を誘発させて、自身の正当性をより強めようとすることも。

こういった「虎の威を借る狐」のごとく、権威性を後ろ盾にした論調は「違和感はあるものの特段、問題とは言い切れない」ため、周囲も異を唱えることができず、気づけば集団内で『マニピュレーター』の影響力が強まってしまうこともあります。

※『権威バイアス』の詳細については、こちらのページをご覧ください。

自分の「非を認めない」頑固さ

『マニピュレーター』は「保身」を第一とすることから、仮に自分に非があったとしてもそれを認めようとはしません。

何か問題が起こった時は、すかさず他人（ターゲット）を悪者に仕立て上げ、自身への責任追及を回避しようと話をすり替えようとします。

「自分の正当性を担保しよう」とするために手段を選ぶことなく、周囲が自分に味方するように仕向けようとするのです。

ちなみに、こういった言動をする背景には、ドイツの精神科医であるクルト・シュナイダー 氏が定義した「ゲミュートローゼ」という概念があると言われています。

この「ゲミュートローゼ」は、思いやりや共感、良心や羞恥心などを欠いた人を指す概念のことで、どれだけ他者を傷つけても心に痛みを伴わない傾向があるとされています。

「悪性のナルシシズム」を抱えている

『マニピュレーター』は、周囲から責められるような言動をしても、その事実を一切認めようとはせず、「そんなことはしていない」「そういうつもりで言っていない」などと否定し、そんな出来事自体起こっていないと振る舞うことすらあるのです。

こういった振る舞いは、意図的にウソをついていると見えますが、実際には本人は無自覚に振る舞っていることが多く、ある意味で「自分自身も欺いている」と言えます。

『マニピュレーター』の代表的な、「一見普通の人に見える」「自分には欠点がないと信じ込んでいる」「周囲から善人と思われることを望む」といった特徴は『悪性のナルシシズム』に根差していると指摘されています。

人間誰しも多かれ少なかれ「ナルシシズム」を持っていますが、それが「良性」ではなく「悪性」であると問題になってしまいます。

「良性のナルシシズム」であれば、直面する現実を受けとめたり、自身を客観視するなど「補正機能」が働きますが、「悪性のナルシシズム」は現実を直視することでプライドが傷つくことを恐れるため、非を認めずに責任転嫁しようとするのです。

「共感性」の欠落

ほかにも、「共感性の欠落」も『マニピュレーター』になってしまう原因の一つとされています。

この「共感性の欠落」は、主に幼少期に原因があると考えられています。

幼少期に虐待やネグレクト、いじめなどを受けて自身を否定された経験がある、過干渉 or 過保護な親から一方的に思いを押し付けられて育った、小さい頃から「悪口」を聞いたり「他人は信用できない」と刷り込まれて育ったといったケースが例として挙げられます。

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この続きでは、『マニピュレーター』に出会ってしまった際の対処法などについて解説しています。

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