新しい商品やサービスをリリースした際、マーケットで普及するために乗り越えなければならない『キャズム』について説いた『キャズム理論』。理解する際に必須の『イノベーター理論』や『キャズム』の発生理由、乗り越えるためのポイントや乗り越えたビジネスケースなどについて解説しています。
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新商品や新サービスをリリースしても中々売れない・・・
新しく商品やサービスをリリースしても、すぐに普及するケースはごく稀です。
情報感度の高い企業(の担当者)や消費者に受け入れられても、それ以外には受け入れられないケースは往々にしてあります。
広く市場(マーケット)に受け入れられ普及させるためには、障害となる『キャズム』を乗り越えることが重要であると言われています。
※「良い商品・サービスを作るだけでは売れない」を克服した歴史的な3つの例については、こちらのページをご覧ください。
「良い商品・サービスを作っただけでは売れない」。ではどうすればよいのか?歴史的な例をもとに解説しています。
『キャズム理論』とは?
『キャズム理論』とは、新しい商品やサービスをリリースした際、市場(マーケット)で普及するために乗り越えなければならない『溝=キャズム(Chasm)』について説いた理論のことです。
主に技術革新が激しい『ハイテクマーケティング』で適用されている理論で、新規事業の立ち上げを成功させる重要な要素として知られています。
この『キャズム理論』は、「イノベーション(新しい概念・モノ)の普及の鍵はアーリーアダプターが握る」と著書『イノベーションの普及(Diffusion of Innovations)』で提唱した、米国ニューメキシコ大学の教授であるエベレット・M・ロジャース 氏 の『イノベーター理論』に一石を投じる形で、マーケティングコンサルタントのジェフリー・ムーア 氏 が著書である『キャズム(Crossing the Chasm)』の中で提唱しました。
5つの消費者層の中に潜む『キャズム』
『キャズム』は、エベレット・M・ロジャース 氏 が提唱した『イノベーター理論』の「アーリーアダプター」と「アーリーマジョリティ」の間に存在することから、『イノベーター理論』を理解することが不可欠と言えます。
『イノベーター理論』とは?
『イノベーター理論』とは、『キャズム理論』の前提となる考え方で、商品やサービスの市場で普及するプロセスを、採用するタイミングの早い消費者層の順に、「イノベーター」「アーリーアダプター」「アーリーマジョリティ」「レイトマジョリティ」「ラガード」の5つに分類し、それぞれの割合を示した理論のことです。
- イノベーター(Innovator:革新者、市場全体の2.5%)
- アーリーアダプター(Early Adopters:初期採用者、市場全体の13.5%)
- アーリーマジョリティ(Early Majority:前期追随者、市場全体の34%)
- レイトマジョリティ(Late Majority:後期追随者、市場全体の34%)
- ラガード(Laggards:遅滞者、市場全体の16%)
この5つの段階の顧客群ごとにそれぞれ異なるニーズを持っています。
情報感度の高い「イノベーター」と「アーリーアダプター」までの消費者層のことを「初期市場」、それ以降の「アーリーマジョリティ」「レイトマジョリティ」「ラガード」の消費者層のことを「メインストリーム市場」と呼ばれています。
そして『キャズム理論』では、その「初期市場」と「メインストリーム市場」の間に『キャズム=深い溝』が存在するとしており、「アーリーアダプター」の行動が、商品やサービスの普及を左右すると言われています。
イノベーター(市場全体の2.5%)
『キャズム理論』では別名「テクノロジーマニア」と呼ばれるイノベーター層は、市場全体の2.5%の割合を占める、新しい商品やサービスに魅力をいち早く感じる消費者層のことです。
多少のリスク・不具合があったとしても真っ先に手に入れようとする傾向があり、「新しい技術(テクノロジー)」そのものに興味を惹かれて購入するようになります。
アーリーアダプター(市場全体の13.5%)
『キャズム理論』では別名「ビジョナリー」と呼ばれるアーリーアダプター層は、市場全体の13.5%の割合を占める、世間に普及する可能性のある商品やサービスを先取りしたいと考える、流行に敏感な消費者層のことです。
「初期市場」を形成するために重要な役割を果たす層で、テクノロジーについての造詣が深く、多少のリスクがあっても採用・導入したいと考える点で「イノベーター」と共通していますが、「テクノロジーマニア」ではなく「採用・導入することで得られる・成し遂げられること」を優先する点が「イノベーター」とは異なります。
特徴としては、「先進事例として紹介されることを好む」「他の顧客群と比較して価格に対して寛容」であることが挙げられます。
この「アーリーアダプター」と次の「アーリーマジョリティ」の間に『キャズム』があるため、『インフルエンサー』『オピニオンリーダー』とも呼ばれるこの層に、商品やサービスを広く浸透させることが『キャズム』を乗り越える大きなポイントになります。
アーリーマジョリティ(市場全体の34%)
『キャズム理論』では別名「実利主義者」と呼ばれるアーリーマジョリティ層は、市場全体の34%の割合を占める、すでに広まっている流行に乗り遅れないよう、積極的に取り入れようとする消費者層のことです。
「インフルエンサー」「オピニオンリーダー」とも呼ばれる「アーリーアダプター」の影響を受けやすく、市場を占める割合が高いことから、最も利益を生み出す層とも言えます。
他の人々がどのように新しい商品やサービスを使用しているのかを情報交換したり、商品やサービスの提供企業・提供者同士を競争させたがる傾向があります。
商品やサービスを採用・導入するリスクに対する許容度が低く、安全策を取りながらも「流行に乗り遅れたくない」と考えることも特徴です。
レイトマジョリティ(市場全体の34%)
『キャズム理論』では別名「保守派」と呼ばれるレイトマジョリティ層は、市場全体の34%の割合を占める、新しい技術や商品・サービスに対して懐疑的な消費者層のことです。
「進歩」よりも「これまでの慣習」を重んじる傾向があり、新しい技術や商品・サービスを採用・導入している割合が多数派であると確信しなければ購買意欲が高まることはありません。
懐疑的で慎重な「レイトマジョリティ」ですが、自分たちに役立つのであれば、継続して使い続けるという傾向もあります。
ラガード(市場全体の16%)
『キャズム理論』では別名「懐疑派」と呼ばれるラガード層は、市場全体の16%の割合を占める、5つに分類した消費者層の中で最も新商品や新サービスの採用・導入に慎重な層のことです。
世間の流行に左右されず、新進気鋭の商品やサービス、テクノロジーに嫌悪感を示し、従来の商品・サービスを利用したがる傾向があり、最も新商品や新サービスの普及が難しい層と言えます。
なぜ『キャズム』が発生するのか?
この『キャズム』が生じる理由としては、「初期市場」と「メインストリーム市場」の間にある『消費者の購買意識の違い』が挙げられます。
「初期市場」に該当するイノベーターとアーリーアダプターの消費者層は、情報感度が高く、先んじて新商品や新サービスを採用・導入するという「新しさ」や「流行の先駆け」になることを重視する傾向があります。
一方、「メインストリーム市場」に該当するアーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、ラガードの消費者層は、購買の際には「安心感」を求める傾向があり、新しい商品やサービスに「慎重な姿勢」を取ります。
つまり、『キャズム』を境にした「初期市場」と「メインストリーム市場」の消費者層には、購買に関する優先順位が違う・ズレがあるということです。
仮に「初期市場」のすべてが採用・導入したとしても、市場全体の16%に過ぎないため、『キャズム』以降の「メインストリーム市場」の消費者層に「安心感」をもたらすことにはつながりません。
このズレが、『キャズム』を発生させる原因となるのです。
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この続きでは、『キャズム』を乗り越えるための7つのポイント、『キャズム』を乗り越えた4つの実際のケースについて解説しています。
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