近年、社会問題になっていて業種問わずどの企業も直面し得る問題と言える「カスタマーハラスメント(カスハラ)」。
「カスハラ」「クレーム」それぞれの意味と違い、発生する原因や企業への影響や対策・対処方法などについて解説しています。
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業種問わずどの企業にも対策・対処が求められる「カスハラ」や「クレーム」
近年、社会問題になっている「カスタマーハラスメント(カスハラ)」。
店舗経営だけでなくオンライン上でもトラブルが生じており、業種問わずどの企業も直面し得る問題と言えます。
度を越した「カスハラ」は、対応する従業員のメンタルヘルスにも悪影響を与えることになり、モチベーションの低下や離職を促すことにもなりかねません。
そこで、「カスタマーハラスメント(カスハラ)」「クレーム」それぞれの意味と違い、企業への影響や対策・対処方法などについて解説します。
「カスタマーハラスメント(カスハラ)」とは?
「カスタマーハラスメント(略称:カスハラ)」とは、令和2年(2020年)1月に策定された「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)(※)によると、「顧客等からの暴行、脅迫、ひどい暴言、不当な要求等の著しい迷惑行為」と定義されています。
※「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」厚生労働省
つまり、カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、客である立場を利用して企業や従業員に不当かつ理不尽な要求をする行為を意味しています。
カスハラの具体例
カスタマーハラスメント(カスハラ)に該当する行為は多岐に渡ります。
代表例としては以下のようなケースが挙げられます。
- 罵詈雑言を浴びせられる
- 理不尽な苦情
- 長時間のやり取りを強要される
- 脅迫まがいのことを言われる
- セクハラに該当する言動や行為をする
- ストーキングなど執拗に嫌がらせをする
カスハラが多い業界は?
厚生労働省が発表した「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査報告書」によると、ハラスメントに関する相談件数の多かった業種としては、「金融業、保険業」、「教育、学習支援業」、「宿泊業、飲食サービス業」、「医療、福祉」や「生活関連サービス業、娯楽業」が多い傾向にありました。
カスハラをする傾向が高い世代は?
繊維や流通などの労働組合でつくるUAゼンセンが、2024年6月に発表した「カスハラに関する調査結果」(※)によると、カスハラをする客の推定年代別では、60代が29.4%が最も多く、次いで50代が27.2%、70代以上が19.1%となっています。
※カスハラ多いのは? “60代の客が最多” 要求 特徴 年代など UAゼンセン調査では:NHK首都圏ナビ
【NHK】「カスハラ」が多い年代、その内容や特徴について労働組合のアンケート調査の結果がまとまりました。UAゼンセンの調査によりますと、60代の客による「カスハラ」が最も多く、内容は不手際などに関する謝罪要求や商品の取り替えや再サービスの要求などが目立つということです。詳しい調査の内容のほか、街で聞いた被害を受けた人の声をまとめました。
「クレーム」とは?
カスタマーハラスメント(カスハラ)と似た事象に「クレーム」があります。
「クレーム」とは、一般的に「顧客からの苦情や改善要求」を指します。
つまり、正当なクレームへの対応は、企業体制や商品・サービスの改善のきっかけ、顧客のファン化につながるため、カスタマーサクセスの面では重要と言えます。
カスハラとクレームの違い
「カスハラ」と「クレーム」に明確に線引きすることはできませんが、従業員や企業に対して度を超えて要求をするなどの「不当性があり業務に支障が出るような悪質性のあるクレーム」が、カスハラに該当すると考えることができます。
つまり、以下のようなイメージとなります。
- 正当なクレーム:指摘される企業側にとってもカスタマーサクセスの面でメリットのある苦情や改善要求。
- 不当なクレーム:不当性があり業務に支障が出るような悪質性のあるクレーム。特に要求がなく単なる嫌がらせ行為も該当。
「カスハラ」かどうかの判断基準
業界や企業によってさまざまな判断基準がありますが、上述の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」によると、以下の2つの観点で判断することができます。
- 顧客等の要求内容に「妥当性」があるか:自社に過失、商品に瑕疵などがなければ正当な要求ではないなど。
- 顧客の要求を実現するための手段・態様が「社会通念上」相当であるか:長時間に及ぶクレームや暴力的・威圧的・差別的言動などである場合はカスハラに該当し得る。
カスハラによって生じる悪影響
カスハラは、対応する従業員だけでなく多くの悪影響を及ぼします。
具体的には、以下のような例が挙げられます。
従業員のメンタルヘルス問題が生じやすくなる
「不当性があり業務に支障が出るような悪質性のあるクレーム」であるカスハラに対応する従業員は、ストレスや不安を抱えるようになり、場合によってはうつ病といったメンタルヘルスの問題が生じるようになります。
「(正当な)クレーム」とは異なり、対応したところで商品やサービスの改善にはつながらず、理不尽な要求に対応することになり、精神的なダメージを負いやすくなります。
従業員が退職してしまう
理不尽な「不当なクレーム」「カスハラ」に対応することは、従業員にとって大きなストレスであり、業務に対するモチベーションを低下させることにつながります。
「カスハラ」の対応業務が増えれば増えるほど、仕事がイヤになり退職につながりやすくなります。
その従業員が退職してしまうと、担当業務を別の従業員が対応・カバーしなければならなくなり、さらに退職者が増えるという負のスパイラルが生じてしまいます。
「顧客離れ」が起こり業績が悪化してしまう
「カスハラ」をする側は、ただ不当で理不尽なクレームを投げかけるだけでなく、その企業に対してSNSなどでネガティブな情報を発信したり、ほかの従業員にも同じようなハラスメントを行う可能性があります。
その結果、「問題のある企業」として評判が広がってしまうようになり、そういった事情を知らない顧客がネガティブな風評だけで評価し離れていってしまう危険性があります。
また「カスハラ」によって、対応する従業員が退職しないまでも、モチベーションや生産性に悪影響を及ぼすことになります。
そのため、業績の悪化に発展してしまうリスクも生じやすくなってしまいます。
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この続きでは、「カスハラ」が発生する原因、「カスハラ」の事前・事後対応策について解説しています。
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