目標(ノルマ)を達成したり目標達成に近づくと、それ以上頑張ろうとせずに手を抜くようになる『天井効果』。
発生を防ぐ方法と注意点、最適な目標設定も含めて解説しています。
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難しさのある目標設定
よく「曖昧ではなく明確で具体的、多少困難な目標設定」の方が理想と言われます。
それを学術的に立証したのが、心理学者のレイサム 氏が行った実験です。
木材の伐採作業員に対する実験
レイサム 氏は、木材の伐採をする作業員を2つのグループに分け、片方のグループには伐採すべき木の本数について具体的かつ困難な目標を与え、もう片方のグループにはできるだけ多くの木を伐採するよう「最善を尽くせ」と伝えました。
その結果、前者の具体的で困難な目標を与えられたグループの方が、最善を尽くすよう伝えられたチームよりも多くの木を伐採することができました。
具体的で多少困難な目標でないと成果が出にくい理由1
なぜ「具体的で困難な目標」でないと成果が出にくいかというと、「最善を尽くせ」という指示では、評価も場当たり的になりやすく、「これぐらいで良いだろう」という判断は人それぞれに異なるからと指摘されています。
つまり、どのくらい頑張ればよいのかが曖昧だと、つい自分に甘い度合いにしがちである、ということです。
具体的で多少困難な目標でないと成果が出にくい理由2
また、「最善を尽くせ」という具体性のない目標の場合、評価者である上司と実行者である部下それぞれが想定する「最善の基準」にズレが起こりがちなことも問題になります。
部下としては「こんなに頑張っても評価してくれない」思う一方、上司の側でも「なぜこれしかやらないのか」と、双方が不満を抱くという事態を招いてしまうかもしれません。
一方、目標が明確であれば、どの程度努力すればよいのか、どんな方法を選べばよいのかを具体的に考えやすくなったり、目標を達成するための「覚悟」をしやすくなります。
絶妙な目標設定の例
多少無理なくらいの高い目標設定の例としては、以下のような形です。
これまでの実績から少なくとも100は可能な場合、頑張れば伸ばせるかもしれない120に目標を据えます。
仮に目標を無難に105あたりにすると、達成はしやすいものの、チャレンジ性が乏しいため、モチベーションはそれほど高まりません。
また同じ状況で目標を150に設定したとすると、これまでの実績からみて1.5倍の高い目標になります。
そのため、達成できない可能性は高いものの、チャレンジ性は高く、最大限のモチベーションを持って限界に挑戦することになるので、目標の150は無理だとしても、130くらいまでは伸ばせるかもしれません。
さらに200などの非現実的な目標を設定してしまうと、最初から無理だと諦めてしまいモチベーションは上がりません。
チャレンジ性が高く、モチベーションが高まるような目標設定には、『絶妙な』サジ加減が必要になるというわけです。
『天井効果』とは?
苦難を乗り越えて設定した目標の達成過程で起こりがちなのが『天井効果』。
『天井効果』とは、数字の伸びが頭打ちになる効果のことで、目標(ノルマ)を達成したり、目標達成に近づくと、それ以上頑張ろうとせずに手を抜くようになる事象のことです。
発生する要因:次期の目標設定が高くなりすぎることへの警戒感
多くが「今期の実績に●●%上乗せする」など、今期の実績に基づいて目標を設定します。
そのため今期頑張りすぎてしまうと、次期にあまりに高い目標を設定されて苦しむことが予想されます。なので、今期の実績をほどほどにしておこうとする心理が働くようになります。
発生する要因:目標を超過して達成した分についての損失感
目標を達成したかどうかで評価される場合、できる限り目標値スレスレに抑えないと、「超過分は損になる」と思い、追加の受注は来期に遅らせることは、一般的によく見られる事象です。
そのため、目標達成が見えてきたら、それ以上の成果を出さないようセーブしようとする心理が働くようになります。
天井効果を防止するためには?
今期の実績だけで目標設定をしない
『天井効果』を防ぐ方法の一つとして、まず「次期の目標を必ずしも今期の実績をもとに設定しないこと」が挙げられます。
今期の実績が良かったことを賞賛しつつも、その結果には特殊な要因が作用したかもしれないと考慮し、次期の目標は過去数年の平均を若干上回る数値に設定するなどの工夫が求められます。
目標を超過した分に対しても評価する
2つ目の方法としては、目標を超過した分に対しても評価すること。
超過分の報酬を算出したり、超過分も得点化され評価に反映されるようになれば、「頑張りすぎてしまった」という損失感は生まれません。
これらの点に注意することで、努力を惜しむことによって生じる天井効果の発生を防止でき、当期を最後まで全力を尽くそうとポジティブに業務に取り組むことにつながります。
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この続きでは、人事評価をする際の落とし穴である『数字の帳尻合わせ』について解説しています。
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