「将来像」が明確になることで意欲的になり成長が早まる!?『ロールモデル効果』

「手本・模範となる人物」を定義・提示することで、集団の活性化を促す『ロールモデル効果』
なぜ必要になっているのか、設定することによる4つのメリット、ふさわしい人物像や入社年数別・役職ごとの『ロールモデル』例、
効果を発揮させるための手順について解説しています。

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『ロールモデル効果』とは?

「理想像」を提示することで活性化を促す心理効果

『ロールモデル効果』とは、「手本・模範となる人物」を定義・提示することで、集団の活性化を促す効果を指します。

企業組織などのビジネスシーンにおいては「仕事における言動やキャリア形成において手本となる人物像」という意味で使われます。

ビジネスにおいてはキャリア形成の「道筋」や「指標」になる

『ロールモデル』の語源は、英語の「role(役割)」「model(模範・手本)」です。

ビジネスにおける『ロールモデル』とは、『メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル』(※)によると、「社員が将来において目指したいと思う、模範となる存在であり、そのスキルや具体的な行動を学んだり模倣をしたりする対象となる人材のこと」と定義されています。

つまり『ロールモデル』とは、集団を構成する人々が前向きにキャリアを築くための「道筋」を示し、「こんな風になりたい」と思える将来像の実現に寄与する「指標」ということです。

『メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル』:平成24年度 厚生労働省委託事業 6ページ目

なぜ『ロールモデル』が必要なのか?

先行きが不透明な「VUCA時代」の到来により・・・

従業員の成長促進やキャリアプランニングにおいて、『ロールモデル』を重要と捉え策定を進める企業が増加しています。

『ロールモデル』の策定が求められるようになった背景としては、これまで続いてきた終身雇用制度の終焉や、先行きが不透明になり将来の予測が困難な状態=VUCA(ブーカ)時代が到来し、働き方の多様化が進んでいることが要因として挙げられます。

働き方の多様化は、選択肢が増えるというメリットがありますが、個々人がキャリア形成に迷うことにもなります。

そこで、将来の「理想像」である『ロールモデル』を策定・設定することで、キャリア像が明確にイメージしやすくなり、近づくために獲得していくべきスキルや経験も具体化も容易になります。

特に求められる女性の『ロールモデル』

最近では「女性活躍推進」の観点から、特に女性の『ロールモデル』が求められることが多い傾向があります。

『ロールモデル』を設定するメリット

設定・策定することによる4つの利点

『ロールモデル』を設定・策定することは、従業員側だけでなく企業側にもメリットがあります。

キャリア形成がしやすくなる

従業員側のメリット①:キャリア形成が容易に

『ロールモデル』はキャリア形成の模範になります。

その『ロールモデル』が企業内にあることで、従業員は獲得すべきスキルや得るべき経験などが認識しやすくなり、今後のキャリアプランをイメージするための具体的な「指標」になります。

モチベーションが高まり成長速度が早まる

従業員側のメリット②:仕事やスキルアップに意欲的になり成長が促進する

『ロールモデル』となる「お手本」がいることで、自身の目指す「将来像」をイメージしやすくなります。

すると、ロールモデルのキャリアと自身のキャリア状況を比較もしくは逆算することで、今後の目標設定やすべきことも具体化します。

目標や、やるべきことが具体的になることで、仕事やスキルアップへのモチベーションが高まり、結果として成長スピードが早まることが期待できるようになります。

組織が活性化する

企業側のメリット①:従業員とロールモデルが互いに高めあう相乗効果が

企業側が従業員が目指すべき『ロールモデル』を確立することによって、スキルの習得や業務経験を得ようとポジティブになり、ロールモデルとのコミュニケーションが生まれ、ロールモデル側も「手本として頑張ろう」とよりアクティブになることで、従業員とロールモデル人材が互いに刺激し合い、結果的に企業組織が活性化することが見込まれます。

離職率の低下(定着率が高まる)

企業側のメリット②:離職の抑制

社内に将来の目標となる『ロールモデル』がいれば、「この会社にいれば理想のキャリアを築くことができる」と認識するようになり、離職率の低下(定着度の高まり)につながるようにもなります。

『ロールモデル効果』が求められるケース

イメージしやすいのは以下の3つのケース

日本の政治や、企業内の女性登用、これまで社内にいなかった職種の人材を採用する場合などで『ロールモデル効果』が求められます。

日本初の女性総理誕生!?

政治の世界でも課題となっている女性の『ロールモデル』

政治の世界でも、女性の『ロールモデル』が求められ、課題になっています。

そもそも女性議員は少なく、内閣府男女共同参画局(※)によると、平成30年(2018年)2月現在で、衆議院は10.1%(47名)、参議院は20.7%(50名)に留まっています。

ですが、その後の2024年衆議院選挙では、314名の女性が立候補し当選者が73名となり、これまで最多だった2009年の54人を超える結果となりました。

男女共同参画白書(概要版) 平成30年版:第1章 第1節 国の政策・方針決定過程への女性の参画:内閣府男女共同参画局

2024年9月に実施された自民党の総裁選

2024年9月12日(木)に告示、9月27日(金)に開票された自民党総裁選2024

9名が候補者となり、その中で女性候補は高市 早苗 氏と上川 陽子 氏の2名。高市 早苗 氏が決戦投票へ進むものの、21票差で石破 茂 氏に敗れる結果となりました。

女性総理が誕生すればさらに政界進出する女性が増えるかも?

与党である自民党の総裁選で最終候補に高市 早苗 氏が残ったことで、当時「日本初の女性総理か?」と注目が集まりました

もし高市 早苗 氏が総理大臣になっていれば、「同じ女性がなれるなら私にも・・・」と他の女性たちを鼓舞することにつながり、女性の政治参画がより進むことが期待できたかもしれません。

理想のビジネスウーマン像

キャリアと子育てを両立する女性=理想?

ビジネスで特に求められているのが女性の『ロールモデル』です。

多くのビジネスウーマンの『ロールモデル』としては、子育てと仕事を両立しながら昇進し続ける女性従業員や、高いキャリアステージで活躍している女性管理職などがあります。

女性も仕事と育児の両立が人生の選択肢の一つに

昭和60年(1985年)5月に男女雇用機会均等法が制定されたことによって、仕事と子ども(出産・育児)は「二者択一」ではなくなり、子どものいる母親でも役員や経営者になれる可能性が高まりました。

そんな変化もあり、働く女性の『ロールモデル』が「キャリアと子育てを両立するスーパーウーマン」とイメージされがちですが、果たして女性の多くが『ロールモデル』に据えるのかというと疑問符が付きます。実際はキャリアと子育ての両立はレアケース

「キャリア」という範疇で考えると、社内での部署異動や転勤、もしくは退職しての転職や起業、親の介護や自身の体調問題など、(男女問わずですが)さまざまなライフイベントがあります。

さらに女性の場合、結婚や出産・育児もあり、出産するなら産休や育休、復職もあります。

それぞれ制度が整えられてはいますが、正直なところ「キャリアと子育てを両立させるスーパーウーマン」として男性と対等に活動するのはハードルが高く、特に中規模・小規模企業の場合、「スーパーウーマン」という存在自体がレアケースというのが実状です。

経営者と現場の間で『ロールモデル』のミスマッチが・・・

『ロールモデル効果』を発揮させるためには、ロールモデルは「手本・模範となる人物」であり、「スキルや経験、キャリアを積み重ねることで自分にも手が届きそう」でなければなりません。

現場の女性従業員としては、「スーパーウーマン」ではなくキャリアと子育てなどのバランスをとった「ほどほどの」将来像を望む人もいるにもかかわらず、多くの経営者は「キャリアと子育てを両立させバリバリ働く女性」や「男性と対等に働く女性」を『ロールモデル』と考えてしまいます。

つまり、経営者と現場の従業員との間に『ロールモデル』の乖離が生じやすく、それが現場の従業員に不利益を及ぼしている、ということです。

もちろん、経営者が意欲的に「活躍したい女性が活躍できる会社にしたい」「男性と対等に働きたい女性が働きやすくする」ことは望ましいですが、「どういった人物像を『ロールモデル』にするのか」については、経営者の願いや思い込みではなく、現場の従業員のイメージや思いを最優先にしなければなりません

これまで社内にマーケターがいなかったから・・・

「卵が先か鶏が先か」という話になってしまいますが。

例えば、マーケター・マーケティング担当者を社内で初めて採用する際も、『ロールモデル効果』が求められます。

これまで採用したことがないと、「自分がこの会社でどんなキャリアを築いて、どう社内でステップアップしていくのかわからない・・・」といったことが往々にして起こり、結果的に定着しなくなってしまいます。

そのため、採用前には想定キャリアプランや、評価制度などを構築しておく必要があります。

※ちなみに、株式会社SBSマーケティングでは、マーケターの採用から育成、社内での評価方法の策定を支援する『マーケティング組織設計サポートサービスがあります。ご興味ありましたら、一度お問い合わせください。

『ロールモデル』にふさわしい人物像とは?

社内の身近な人や外部、著名人も該当する

設定する『ロールモデル』は、「手に届く可能性がある」「(目標として)現実味のある」人物が理想ですが、それ以外の人物を設定することも可能です。

身近な先輩や上司

日常業務で「参考」にしやすい関係性

『ロールモデル』としてイメージしやすいのが、身近な先輩や上司です。

先輩や上司であれば、日々の業務の中で「手本」にしやすく、得たスキルやノウハウを自身の業務に活かしやすいのもメリットといえます。

関係性のある社外の人物

同業や同職種であればより参考にしやすい

例えば、同じ業界で働く取引先の担当者の中に「手本」となる人物がいれば、『ロールモデル』としてどう働いていけばよいかなどを参考にすることができます。

歴史上の人物や著名人

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歴史上の人物や著名時、ビジネスでいえば「GAFAM(ガーファム)」と呼ばれる、Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoftといった大手企業の創業者などが挙げられます。

身近な存在ではないため「手本」としては抽象的になりがちですが、理想の『ロールモデル』として「あんなビジネスパーソンになりたい」といった思いを持ってモチベーションを高められるようになります。

入社年数別・役職ごとの『ロールモデル』例

入社年数(年代)や役職(ポジション)に応じた『ロールモデル』の設定が理想的

社内で『ロールモデル』を設定する際には、入社年数(年代)や役職(ポジション)に応じて分けることが理想的です。

それぞれの年代や役職の従業員が思い描く姿とかけ離れた人物を『ロールモデル』に設定すると、理想と現実のギャップが大きく、『ロールモデル効果』が生じにくくなってしまうため、注意が必要です。

新入社員の『ロールモデル』

新入社員の『ロールモデル』の理想的な要件

  • (新入社員と)年齢が近い
  • 意欲的にさまざまな業務に取り組んでいる
  • 成果を出していて、社内の評価が高い
  • 仕事に取り組む姿勢に「軸」がある
  • 会社の方針に対する理解度が高く体現している

中堅社員の『ロールモデル』

中堅社員の『ロールモデル』の理想的な要件

  • 現場を牽引する中心的存在である
  • 部下や後輩に対して指示出しや指導経験が豊富
  • タスク管理や段取りを組むことができる
  • ディレクション(調整)能力がある

ベテラン社員の『ロールモデル』

ベテラン社員の『ロールモデル』の理想的な要件

  • 責任者として組織を指揮できる
  • 対象の個性に応じたコミュニケーションがとれる
  • 部下やメンバーのパフォーマンスを高めることができる

リーダー層の『ロールモデル』

リーダー層の『ロールモデル』の理想的な要件

  • リーダーとして、社内外の関係者と適切なコミュニケーションがとれる
  • リーダーシップを発揮し、チームなど組織運営の中核を担うことができる
  • 組織全体のビジョンや事業計画などの立案・推進を行うことができる
  • 将来のキャリアビジョンを持ち、スキルアップに努めている

管理職の『ロールモデル』

管理職の『ロールモデル』の理想的な要件

  • 管理職や役員として、組織全体や事業・プロジェクト全体をマネジメントした経験がある
  • 成功体験だけでなく失敗体験も豊富に経験している
  • ビジネスに関する知見だけでなく、基礎教養を含めたさまざまな知識や見解を有している

スペシャリストの『ロールモデル』

スペシャリストの『ロールモデル』の理想的な要件

  • 特定の分野において、多くの知識と実績を有している
  • 高度な資格の取得や学び直し(リスキリング)など、常に最新技術や情報を取り入れている


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