プロジェクトの当初の範囲が、正式なプロセスを経ずに徐々に拡大してしまい、
遅延や予算超過、リソースの負担増などを引き起こす『スコープクリープ』。
発生例や生じてしまうことによる悪影響、発生してしまう原因と対策方法について解説しています。
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『スコープクリープ』とは?

『スコープクリープ』とは、プロジェクトの当初の範囲(スコープ)が、正式なプロセスを経ずに徐々に拡大してしまい、遅延や予算超過、リソースの負担増などを引き起こす現象のことです。
当初は緻密に計画されていたプロジェクトであっても、『スコープクリープ』による要件の追加や変更、タスクの優生順位の変動や制御不能なトラブルなどによって、進行が妨げられてしまうということです。

この『スコープクリープ』には「無害なもの」もあります。
対応に多少の手間はかかるものの、結果としては成果物が多少増えるだけで、プロジェクトに大きな影響を及ぼさない場合などです。
ちなみに、人員を増員するとプロジェクトが余計に遅延してしまう現象である『ブルックスの法則』については、こちらのページをご覧ください。
遅れているプロジェクトにおいて「人員追加すると余計に遅延が発生してしまう」という『ブルックスの法則』。「人員を追加するとさらに遅延する」理由とその対策、プロジェクトマネージャーに求められる役割について解説しています。
『スコープクリープ』の発生例

プロジェクトにおける『スコープクリープ』の発生例としては、以下が挙げられます。
- アイデアが「追加」される
- 気づいたら「必須」項目になってしまう
- 「関係部署から」要望が出る
- 「クライアントから」要望が出る
アイデアが「追加」される

定例会議などのミーティングをする中で「こんな機能があった方が良い」と、アイデアが生まれる。
気づいたら「必須」項目になっている

プロジェクトを進める中で「任意」的な位置付けだった機能(項目)が、時間が経過する中で「必須」項目として扱われるようになる。
「関係部署から」要望が出る

プロジェクトチーム以外の関連部署から、当初の計画には無かった機能・項目の追加の要望が発生する。
「クライアントから」要望が出る

プロジェクトが進む中で、クライアントから新たなアイデアの提案や要望を受ける。
『スコープクリープ』によって生じてしまう悪影響

プロジェクトに対して『スコープクリープ』はさまざまな悪影響を及ぼすリスクがあります。代表例としては以下の点です。
- 「予算超過」を引き起こす
- 納期が「遅延」してしまう
- 品質が「低下」してしまう
- 作業負荷の「増加」
- 関係者が「不満」を抱くようになってしまう
「予算超過」を引き起こす

『スコープクリープ』が生じてプロジェクトが拡大してしまうと、必要なリソースも増加してしまうためコストも増え、当初に割り当てられた予算を超える可能性が生じてしまいます。
納期が「遅延」してしまう

『スコープクリープ』が生じると、その追加作業に対する時間が必要になるため、当初のスケジュールを調整しなければ必然的にプロジェクトに遅延をもたらすことになります。
品質が「低下」してしまう

生じた『スコープクリープ』に対応するために急いだり妥協を余儀なくされてしまうと、最終成果物の品質が低下してしまうリスクが発生してしまいます。
作業負荷の「増加」

『スコープクリープ』が発生すると、多くの場合プロジェクトチームの作業量・作業工程などの増加につながってしまうため、メンバーに過労やストレス増、燃え尽き症候群に陥ってしまうかもしれません。
関係者が「不満」を抱くようになってしまう

『スコープクリープ』によって最終成果物のクオリティが当初の想定からかけ離れてしまうことで、クライアント含め「不満」を抱くようになり、プロジェクト自体の成功を危うくする恐れが生じてしまいます。
『スコープクリープ』が発生してしまう原因

当初の想定から拡大し、さまざまな悪影響を引き起こす『スクープクリープ』の発生原因は、主に以下の点が挙げられます。
- プロジェクト目標が「不明確」
- 設定するプロジェクトの目標が「非現実的」
- プロジェクトに「追加依頼」が舞い込む
- 顧客への「フィードバック」の頻度が低い
- プロジェクトの関係者が「多過ぎる」
- 関係者間の「利害の対立」
- チーム内の「コミュニケーション不足」
- 「予期せぬ要因」が生じてしまう
プロジェクト目標が「不明確」

プロジェクトで達成したい目標が曖昧になっていると、『スコープクリープ』が発生する素地が生まれてしまいます。
プロジェクトにおける要件や最終的に収めたい成功・成果物の概要を「プロジェクトスコープ」と呼びます。
通常、プロジェクトを計画する始めに定義されるものであり、「プロジェクト計画」や「ロードマップ」、「プロジェクト概要」といった形で表現されます。
つまり、この「プロジェクトスコープ」が不明確であるために、チームメンバーはどのタスクを優先すべきかがわからなくなり、結果『スコープクリープ』が生じやすくなってしまう、ということです。
設定するプロジェクトの目標が「非現実的」

プロジェクトの目標が設定されていたとしても、そもそも達成が不可能である非現実的な目標を掲げてしまうと、プロジェクトが失敗するか、『スコープクリープ』が生じるようになってしまいます。
プロジェクトに「追加依頼」が舞い込む

特にプロジェクトへの期待性や収益性が高く、顧客への影響力が大きい場合、各方面から新たな機能の追加や仕様の変更の要望が多い傾向があります。
そういった追加依頼に応えることが『スコープクリープ』となり、進行遅延や予算超過のリスクが増大することになってしまいます。
顧客への「フィードバック」の頻度が低い

依頼元である顧客へのプロジェクトの進捗具合を報告することは、欠かせない要素になります。
プロジェクトが進む中で、些細なトラブルや課題は生じてしまうものです。
そういった事象を発生したままでクライアントへ伝えずに時間が経過してしまうと、フィードバックを受けたタイミングには許容できないような『スコープクリープ』にまで悪化してしまうこともあります。
すると、折角進んでいたタスクを一からやり直さなければならなくなったりと、受託側にも大きな負担が生じることになります。
プロジェクトの関係者が「多過ぎる」

プロジェクトの関係者が多過ぎると、意見の集約ができなくなってしまったり、「船頭多くして船山に登る」がごとく、進行が停滞することになってしまいます。
関係者間の「利害の対立」

プロジェクトに関わる人同士に「利害の対立」が生じてしまうと、プロジェクトそのものが頓挫してしまうかもしれません。
チーム内の「コミュニケーション不足」

事前にプロジェクトの段取りをしっかり整えていたとしても、チーム内や関係者間でコミュニケーションの不足によって連携がうまくいかなければ『スコープクリープ』が生じてしまうリスクが高まることに。
「予期せぬ要因」が生じてしまう

そして、データを管理するサーバーの不具合や使用しているツールの仕様変更、大規模災害の発生などのプロジェクト外の要因によって生じることも。
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この続きでは、『スコープクリープ』の発生を防ぐための対策について解説しています。
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