人や物事に「ラベル」を貼る=イメージを植え付けることで評価を固定し、対象となる自分自身や相手の行動・心象に影響を与える『ラベリング効果』。ビジネスシーンでの活用例(特にマネジメント)、活用する際の注意点や類似した心理テクニックを解説しています。
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『ラベリング効果』とは?
ラベリング効果とは、人や物事に「ラベル」を貼る=イメージを植え付けることで評価を固定し、対象となる自分自身や相手の行動・心象に影響を与える心理事象を指します。
多くの場合、ごく一部の傾向がその対象の全てのように認識してしまうことで発生します。
「先入観」や「決めつけ」、「固定観念」や「思い込み」、「偏見」や「レッテルを貼る・貼られる」と類似した意味を持ちます。
例えば、「A型だから几帳面で真面目」などの血液型によって「〇〇な性格」と決めつけられるというケースや、「あなたは優しい人ですね」と他人から「ラベリング」されると、無意識・意識的に影響を受けて、優しい人になる・優しい人の振る舞いをしてしまう、というケースなどが挙げられます。
つまり、人間は何かしらの『ラベリング』をされることによって、貼られた「ラベル」を意識して強化したり、誘導されやすくなる傾向がある、ということです。
ラベリング効果の由来
ラベリング効果の「ラベル(Label)」とは、商品に付ける名称や価格、品質や内容量などが記載されたシールを意味していて、「ラベリング(Labeling)」=ラベルを貼る、対象の人や物事に思い込むイメージを貼り付ける行為を指します。
このラベリング効果は、1960年代に社会心理学者のハワード・S・ベッカー 氏が提唱した「ラベリング理論」が由来となっています。
ラベリング効果の由来となるラベリング理論
ラベリング理論とは、主に犯罪心理学や刑罰学で用いられることが多く、「社会的に逸脱した行動は他者からのラベリングによって生み出される」という理論です。
犯罪を犯して刑務所に服役・出所した人物に対して、世間はその人物に「悪者・犯罪者」というネガティブなレッテル=ラベルを貼ります。
その結果、貼られた「悪者・犯罪者」というラベルで精神的に追い詰められることによって、何度も犯罪を犯すという「常習性」を生み出してしまうというもの。
ラベリング効果の発生原理・メカニズム
ラベリング効果は、以下の4つの要素によって発生するとされています。
承認欲求
人間には「自分を見てほしい」「自分の話を聞いてほしい」「誰かに褒められたい」という他者から評価・承認されることを求める傾向があります。
そのため、他者からポジティブな『ラベリング』を受けると自己評価が上がり期待に応えようとする、逆にネガティブな『ラベリング』を受けると自己評価が下がりモチベーションが減少することがあります。
社会的認知
人間は自分自身や他者、社会的な出来事に関する情報を処理する際、その情報をカテゴリー化・簡略化する傾向があります。
これらの情報は大量であることから、負荷をかけないように効率的に処理しようとするため「ラベル」を形成することになります。
自己成就予言
人間には、根拠のない思い込みであっても、思い込んでいるうちに本当にそうなってしまう。また、先行する思い込みが、その後の思い込みや結果を生むことがあります。
これは、「思い込み」に適合させようとする傾向が、人間にあることから起こる事象です。
自己概念の変化
ラベリングする・されることで、「自分が何者であるか」という自身についての概念が変化することがあります。
特に、他者からの期待や評価が何度も伝えられると、その人物は期待や評価を受け入れることがあります。
この自身を定義する自己概念が変化することで、行動や意思決定にも影響を与えることがあります。
ビジネスシーンでの活用例
ラベリング効果は、日常だけでなくビジネスシーンにも活用することができます。
販売商品のブランド化・リピーターを創出
販売する商品にラベリングすることによって特別感を演出でき、消費者に信頼感を与えることにつながります。
すると、購買意欲を高めることにつながり、さらに他の商品とは違うという特別感(ブランド化)によって、リピーターの創出の可能性も高まります。
「ラベル」を貼って商談をスムーズに
商談の場で相手や企業に「ラベル」を貼ることで、交渉をスムーズに進めることができるようになります。
「御社の「コストダウン」に関する取り組みは素晴らしい」と伝えることで、相手の心の中に「コストダウンに取り組む姿勢を強めなくてはいけない」と無意識に心理が生じるようになります。
その後に、コストダウンについての提案を行うと、より効果的な交渉ができるようになります。
部下やメンバーへのマネジメント
上述の商品販売のシーンでもラベリング効果は活用できますが、部下やメンバーへのマネジメント時にモチベーションを高める手法として用いることもできます。
ですが、ラベリングは意識しないうちに行っていることがあるため、マネジメントをする立場の場合は特に「ポジティブなラベリング」と「ネガティブなラベリング」には注意が必要です。
ポジティブなラベリング
部下やメンバーを成長させることは、マネジメントの悩みの一つ。
励ましても叱っても、なかなか成長にはつながりません。
そこで「ポジティブなラベリング」を意識すれば、士気を上げつつ能力を引き出すことにつながります。
ポイントは「行動」にフォーカスすること。
例えば「優しいね」「真面目だね」という性格や内面、もしくは身体的特徴に対してラベリングしても、部下やメンバーは嬉しくなるものの、もっと優しくなろう・真面目になろうと意識することは仕事のパフォーマンス向上には直接的にはつながりません。
なので「仕事が早いね」「漏れやミスがないね」など、行動の良い点をラベリングすることで、承認欲求が満たされモチベーションが上がり、さらにスピードアップや精度の高い業務を意識することを促す効果が期待できます。
その結果、個々の部下やメンバーの成長につながり、チーム全体のモチベーションも上がることにもなり、事業への好影響につながります。
さらに、パフォーマンスが低下しているメンバーに対して、期待を込めて「こうなって欲しい」というプラスのイメージを持ってラベリングすることで、成長意欲や機会を生じさせやすくなります。
ネガティブなラベリング
一方、「ネガティブなラベリング」をしてしまうと、マネジメントを阻害してしまいます。
マネジメントする側によく起こるのが「仕事が遅い人」「仕事ができない人」と意識していなくても決めつけてしまう、ということ。
このようなネガティブなラベリングをしてしまうと、当人はますます自信をなくして本当に仕事が遅い・できない人になってしまいます。
また、ネガティブなラベリングに捉われている人と捉われていない人の間で評価が割れてしまい、人事評価に悪影響を及ぼすリスクもあります。
そのため、マネジメントする自身が「ネガティブなラベリング」をしていないかを把握し、企業組織に必要な人材となるようポジティブな働きかけ・ラベリングをするように心掛ける必要があります。
自分自身にラベリングしてパフォーマンスを高める
もちろん、ラベリング効果を自分自身に行うこともできます。
多くの対象者にマネジメントを実施している人でも、自身を客観的に評価することができないこともあり、「自分は実力不足」「仕事の効率が悪い」など「ネガティブなラベリング」をしがち。
そのため、「ラベリング効果」を意識し、ネガティブなラベリングの上に「自分はできる」とポジティブなラベリングを貼り重ねることで、ネガティブ思考や短所を克服しパフォーマンスを高めることが期待できます。
ラベリング効果を用いる際の注意点
前述の「ネガティブなラベリング」などの使い方をしてしまうと、マイナス方向に働くことになってしまいます。
そのため、ラベリング効果を用いる際には、以下の3点に注意する必要があります。
マイナスになるラベリングを避ける
自分自身・他者に対して、マイナスになってしまうような使い方をしないように気をつけることが必要です。
そんなつもりはなかったとしても、受け手にとってはマイナスに捉えてしまうケースもあるので、自身の発言や振る舞いがマイナスのラベリングになってしまわないか、注意することが求められます。
事実に反するウソのラベリングを避ける
ポジティブな使い方をしようとして、事実とかけ離れたウソのラベリングをすることは避けるべき。
デリカシーのない発言をしがちな人に対して「いつも気を配っているね」と言っても、その人には嫌味と捉えられる可能性があります。
意図したラベリングで対象をある意味で「誘導」するという効果がありますが、事実とは異なるようなラベリングは逆効果となります。
ラベリングする際には、事実ベースのラベルを貼ることを心掛ける必要があります。
ラベリングにとらわれ過ぎない
自分自身や相手、物事に対しては「客観的な視点」が必要になります。
ラベリング効果を多用し過ぎると、その対象に対して先入観や思い込み、偏見が強くなり過ぎてしまうので、とらわれ過ぎない姿勢が必要です。
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この続きでは、『ラベリング効果』と類似した心理テクニック5例などについて解説しています。
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