BANT情報とは?
BANT(バント)情報とは、確度(見込み度合い)を判断するための条件のことで、「Budget(予算)」「Authority(決裁権・権限)」「Needs(必要性)」「Timeframe(導入時期)」の4つの頭文字の略語です。
BANT情報はBtoB(企業間取引)領域の営業活動を効率的に進めるために重要です。予算、決裁権・権限、必要性、導入時期の4つの情報を得ることで、案件の見込み度を精度高く測定できるからです。
※「BANT情報」より詳細な「SCOTSMAN(スコッツマン)情報」というのもあります。
「Situation(立場)」「Competitors(競合)」「Opprrtunity(条件)」「Timeframe(導入時期)」「Size(規模)」「Money(Budget)(金額、予算)」「Authority(決裁権・権限)」「Needs(必要性、要望)」の8つの頭文字の略語です。
- 『Budget(予算)』
商品やサービスを導入するための予算を確保できる可能性があるのか。BtoBの場合、個人の財布ではなく会社の財布から導入費用が捻出されますが、年度末には次の期の予算がほぼほぼ決まっていますので、現状の予算感と併せて期のスタートがいつからかなどの情報も得られるとアプローチするタイミングが明確になります。
- 『Authority(決裁権・権限)』
BtoBの場合、商品やサービスを導入する際には社内で稟議承認が必要です。アプローチ可能な見込み客が社内の稟議申請・承認においてどのポジションにいるのか、つまり、稟議申請をする立場なのか、申請を受け承認する立場なのか、最終承認する決裁権のある立場なのかといった情報を把握した上で接触することが理想です。例え決裁権がない現場担当者であっても、導入の必要性を強く感じてもらい、稟議申請の承認に必要な情報を社内の関係者に提供してくれることで、(時間はかかるかもしれませんが)導入の確度は高まるはずです。といったように、接点のある見込み客(リード)が稟議申請・承認においてどのポジションにいるのかを把握し、そのポジションごとに応じたアプローチをすることは大切なポイントです。
- 『Needs(必要性)』
必要性を感じてくれているのは現場担当者だけか、部門としてか、会社としてか、といった形で、ニーズの強さが対象企業内でどの程度かを明らかにする必要があります。併せて、商品やサービスを導入することで解決したい『課題』を認識しているが解決するための具体的な方法や手段にピンと来ていない『ニーズ』の状態なのか、それとも、課題を解決する具体的な方策・手段を求めている『ウォンツ』の状態のどちらなのかという点も確認する必要があります。つまり、必要性を感じているのはその企業内でどの程度いるのか、また具体的に欲しい段階なのか、まだそれほど具体的ではなくフワッとした段階なのかを明らかにしたいところです。
- 『Timeframe(導入時期)』
希望・想定している導入時期を確認します。理想として「来年度中」といったおおまかな時期感ではなく、さらに踏み込んで「来年度の第2クォーター中」「来年度の〇月までに」といったように、より具体的に情報として把握することが求められます。まとめると、『Budget(予算)』を把握することで提案する予算感が定まり、『Authority(決裁権・権限)』が把握することで導入決定≒稟議承認を得るためのキーマンや関係者といった対象が判明し、『Needs(必要性)』を把握することで案件確度が高まり、『Timeframe(導入時期)』が把握することで「プッシュすべき」タイミングが明らかになります。このBANT情報を得ることができれば、受注確度が高まり、営業担当のある種の「思い込み」に拠らないより客観的な見込み客・案件管理が実現します。
※BtoBの購買特性や商文化については、こちらの記事をご覧ください。
BtoB(企業間取引)ビジネスならではの特性について理解が進んでいないと「マーケティング活動で成果が出ていない」と誤解されてしまうかもしれません。BtoB文化や商習慣などおさえておくべきポイントを解説します。
BANT情報を得るメリット
BANT情報を得ることによるメリットをまとめると下記が挙げられます。
- 受注までのボトルネックや次に行うべき活動が明確になる
BANT情報を得ることで、受注に辿り着くために乗り越えるべきハードルが具体的になります。
そのため、案件ごとに次の活動が明確になります。
- 組織的な営業戦略の立案がスムーズになる
個別の案件状況が明確になるため、個人の感覚や思い込みに拠らない組織的な営業戦略の立案がスムーズになります。 - アプローチすべき対象の精度が上がる
中には、人当たりがよく話好きな担当者だけど稟議を申請してくれるわけでもなく、申請の承認フローにも入っていない=決裁権の無いという方もいます。営業組織に人的リソースが豊富にあるのであれば、良好な関係を築くためにこういった方とのコミュニケーションに時間をかけるのも良いですが、限定的・少人数で営業活動をしている場合は、時間の割く対象を選ぶ必要があります。
※マーケティング領域で似たようなケースとして、こちらから配信するメール内のページURLをすべてクリック≒閲覧してくれているが、確認してみると、導入確度が高まっているわけでも能動的に情報収集しているわけでもなく、ただ受信したメールをくまなくチェックする方だったということがありました。こういったケースは「スコアリングの罠」と捉えていました。別のケースとして、セキュリティの観点でシステムがメール内URLをチェックする仕様になっているため、配信するたびにすべてクリックされるという企業もありました。
BANT情報を得る際のポイントとしては、直接お会いしてのヒアリングが望ましいと考えています。
BANT情報の多くは社内のセンシティブな情報となるので、メールなどでは質問せず、ヒアリングの際にも形式ばって聞かないというのがBtoBのお作法なのかなと。
BANT情報のヒアリング方法とBANT情報がわからない場合のマーケティングアクション
■「Budget(予算)」情報を聞くには?
商品やサービスの標準価格を伝えて反応を見る。
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価格に懸念を示すなら、自社側で価格調整が可能か検討する。
ヒアリングする際のポイントとしては、いくらなら捻出が可能か「定量的」に把握する、ということです。
感覚的に「それぐらいだと厳しいな」といった回答だけだと、ではいくらなら可能なのか?というのが具体的にわからないからです。
予算に関しては、企業の場合、多くは年度末に予算消化をする可能性があるので、スポット販売が可能な商品やサービスであれば、対象企業の第3Q(クォーター)には提案~稟議承認済み、第4Qに導入・サービス開始~終了のスケジュール感で進むようコミュニケーションをとることが望ましいです。
■「Budget(予算)」情報がわからない場合のマーケティングアクションとは?
マーケティングとしては予算を確保できるかわからないので、もう「コールドリード」と割り切ってしまって、予算を確保する動きを促すためにナーチャリングを継続実施するのがベストです。
■「Authority(決裁権・権限)」情報を聞くには?
当の本人に「あなたは決裁権限を持っていますか?」と聞くのはなかなか難しいので、稟議承認フローの流れをヒアリングしつつ探っていくのが望ましい形と言えます。
具体的には「(自社の商品 or サービスが)〇〇万円であれば御社の稟議申請はどういったフローになりますでしょうか?」といった形です。
こういった投げかけに対して「〇〇万円までなら部長決裁ですね」などといった形で聞くことができれば、交換した名刺の役職を見て部長職以下であれば「では〇〇様が稟議申請を進めていただける形でしょうか?」、部長職以上であれば「では〇〇様に改めてご承認いただけるよう努めます」といった形で話を進めることができるかと思います。
■「Authority(決裁権・権限)」情報がわからない場合のマーケティングアクションとは?
自社のCRMやハウスリストに同じ企業のリード情報が存在するのかを確認し、あればそのリードも含めてナーチャリング&Webへの来訪履歴を追跡し始めるといった形が考えられます。
■「Needs(必要性)」情報を聞くには?
現場担当者のみのニーズなのか、それとも部門全体、全社的に必要としているのかを聞くことになりますので、「現場のご担当者である〇〇様が検討を進めている状況でしょうか?」「(もしくは)すでにご所属の部門にてご検討されている状況でしょうか?」といった形でヒアリングする形が考えられます。
また、まだ導入にピンと来ていない『ニーズ』なのかより課題を認識しその解決をしたいと思っている『ウォンツ』の段階なのかを聞く場合、「導入の目的は何でしょうか?」「どの業務をどのように改善されたいとお考えでしょうか?」と聞くのがベターですが、まだ柔らかい認識の場合は明確な答えは返ってきません。
そういったケースは、展示会の出展しているブースに来訪、もしくは開催したセミナーに参加し、「上司に話を聞いてきてと言われて来ました」という場合です。
とはいえ、「導入の目的」「何をどう改善・解決したいのか」を投げかけて、現状認識している必要性を把握することはできるかと思います。
■「Needs(必要性)」情報がわからない場合のマーケティングアクションとは?
「押しドコロ」がよくわからないため、接点のある見込み客・その企業のリード群のどちらにアプローチするにしても均一的なレベルに留まってしまいます。
仮に「守り」の思考で進めるのであれば、接点のある見込み客のみに継続したアプローチ、「攻め」の思考で進めるのであれば、ハウスリスト内の同企業複数リードに向けたメール配信などのナーチャリング施策が挙げられます。
とはいえ「攻め」すぎると、導入を検討もしていないリードからすればノイズの接触となりますので、接点を絶たれる可能性があるので注意が必要です。
■「Timeframe(導入時期)」情報を聞くには?
「想定されている導入時期はいつごろでしょうか?」とシンプルにヒアリングするのが望ましいです。
その問いに対して「来期になったら具体的に検討したいと思います」などの答えが返ってきた場合は、「今期予算との兼ね合いでしょうか?」「何か別のプロジェクトとの兼ね合いでしょうか?」など掘り下げていくことで「来期になったら具体的に検討」の根拠が見えてくるはずです。
もしくは「時期はまだ未定です」と答えが返ってきた場合には、「来期には、といったところでしょうか?」「来期ですと上期ぐらいですかね?」など、こちらから時期感を掘り下げていくのが良いと思います。
■「Timeframe(導入時期)」情報がわからない場合のマーケティングアクションとは?
相手企業の人的リソースが限られていると、別のプロジェクトなどが進行しているため導入検討が後回しになっており、導入時期を本格的に想定できていないといったケースも考えられます。
とはいえ、例えば期末の予算消化で急に進展するケースもあるので、全くフォローしないというわけにもいきません。
なので、本腰を入れての導入検討まで一定期間を要すると判断し、「コールドリード」として継続的にアプローチするという選択が望ましいと言えます。
マーケティングにとってもBANT情報は大切
営業活動の中で取得できる・活用する機会の多いBANT情報ですが、売上増を最終目的としていることの多いマーケティングにとっても、関係のないことではありません。
マーケティング側としても、見込み客を獲得し、その見込み客からBANT情報を得られれば、そのBANT情報に基づいた受注確度の高いアクションを効率よく起こせますので有益な情報です。
なので、BANT情報は得ておきたいところなのですが、「いつごろ」「どれくらいの本気度で」「いくらくらいの」商品 or サービスを導入する予定で、稟議申請上の「キーマン」は誰々で・・・という情報はとてもセンシティブなので、社外の人間に大っぴらに教えられないケースが多いです。
そんな時は、マーケ側が得ることができる情報が、BANT情報に間接的につながることもあります。
例えば、対象のWebへの来訪履歴、メールを用いたナーチャリングによる動的な情報、スコアリングの数値などが挙げられます。
これらの情報と過去の受注傾向と照らし合わせれば、ある程度、判別する目算は立つ可能性があります。
(ですが、上述のような「罠」もありますので注意が必要です)
とはいえ、マーケティング側で得られるのは、あくまでBANT情報の「周辺情報」ですので、どうしても限界があります。
なので、セールス、マーケティング、また組織構成によってはカスタマーサクセスなどが、受注、売上アップに向けて連携して獲得に向けてアクションしていくのが望ましいと言えます。
最後に
BANT情報を得ることによって、案件の受注確度がよりクリアになります。
そして、マーケティングの領域で得られる、Webへの来訪履歴やナーチャリングによる動的な情報をベースにある程度はBANT情報を「推察」できると思いますが、断定的なことはやはり対象当人に確認しないと得られない情報であるため、時には、セールスやカスタマーサクセスなどと連動して得ていく必要があると考えています。
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マーケティングは試行錯誤を重ねる必要がありますが、リソースの制約などによって思うように時間をかけることはできません。
現状や課題、求める成果をお聞きしてマーケティングの確度を上げるために併走させていただきます。