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『デフォルト効果』とは?
『デフォルト効果』とは、最初に選択されている意思決定や、設定されている初期値(デフォルト)に従ってしまう・そのまま受け入れやすくなってしまう心理傾向のことです。
何か選択肢がある場合、変更するメリットをよほど感じない限り、変えるためのエネルギーを消費することを回避し、変更することを「安定の損失」と認識することによって、最初の状態に留まるケースが多いという心理事象とも言えます。
『ステータス・クオバイアス』とも呼ばれています。
また、『現状維持バイアス』(※1)や『保有効果』(※2)と類似する心理事象です。
※1:『現状維持バイアス』の詳細については、こちらの記事をご覧ください。
何かを変化させれば現状がより良くなる可能性があるとしても、損失の可能性を考慮して現状を保持しようとする『現状維持バイアス』。発生する要因や発生例、予防策・克服方法について解説しています。
※2:『保有効果』の詳細については、こちらの記事をご覧ください。
一度所有したモノや環境に(高い)価値を感じて、それを手放すことに抵抗を感じるようになる『保有効果』。発生する要因やマーケティングシーンでの活用例などについて解説しています。
実証実験①:臓器提供
心理学者である、エリック・ジョンソン 氏とダン・ゴールドスタイン 氏は、ヨーロッパ各国の臓器移植の同意率を調査しました。
その結果、ドイツでは12%程度、オーストリアでは99%程度の同意率となり、明確な違いがあることを発見しました。
要因としては「臓器移植に同意する」をデフォルトにしているか、「臓器移植に同意しない」をデフォルトにしているかどうかの違いであることが明らかになりました。
ドイツ → デフォルト「臓器移植に同意しない」 ・・・同意率=12%程度
オーストリア → デフォルト「臓器移植に同意する」 ・・・同意率=99%程度
臓器移植の同意は、各国の国民性や宗教観などによるものではなく、初期設定(デフォルト)が、許諾の意思を示す「オプトイン」か、許諾しない意思を示す「オプトアウト」どちらの形式かによって変わるということです。
オプトイン 提供を許諾する臓器を意思表示する形式 ドイツや日本などが採用
オプトアウト 提供を許諾しない臓器を意思表示する形式 オーストリアやアメリカなどが採用
臓器移植の同意率のケースでは、国民の大半が初期設定(デフォルト)に沿うようになるということで、どちらでもよい・もしくはわざわざ申し出をしてまで変更するものではないと捉えていると考えられます。
実証実験②:自動車保険
アメリカでは、自動車保険に関する調査が行われました。
ニュージャージー州とペンシルベニア州では、「通常の保険」と「権利の一部が限定された安価な保険」の2つの自動車保険のデフォルトを以下のように設定しました。
ニュージャージー州 権利の一部が限定された安価な保険
ペンシルベニア州 通常の保険(比較して高い)
その結果、それぞれの州でデフォルトとして設定した保険を選択する人が圧倒的に多数となりました。
デフォルト効果を発生させる心理的メカニズム
神戸学院大学心理学部 教授の 秋山 学 氏によると、デフォルト効果を発生させる心理的メカニズムとしては、以下の3つが挙げられるとされています。
努力
例えば、自動車を購入する場合、車体の色やタイヤの種類といったオプションに何を設定するのか、自動車保険はどのような条件を設定するかなど、さまざまなことを決める必要があります。
そのため、自動車の購入に不慣れな人であれば、多くの選択肢のあるオプションを組み合わせることでどういった車に仕上がるのか、どの保険会社の保険であればもしもの時に助かるのか判断することが難しく、自分に合った選択を行うために「努力」が必要になります。
そんな時に、オプションにデフォルトが設定してあれば、そのオプション設定を選ぶ(変更しない)ことによって、購入者は多くの労力を割くことなく、自動車の購入や保険を契約することができるようになります。
暗黙の推奨
商品やサービスの購入時におけるデフォルト設定は、デフォルトを提供する側からの「お勧め」と消費者は見なすとされています。
デフォルトを提示する事業者に対する信頼が前提とはなりますが、この「暗黙で推奨される設定」によって、デフォルト効果が発生しやすくなります。
損失回避・参照依存性
デフォルトとして設定された商品やサービスを「授かりもの」として捉え、その選択をしないことによる損失を回避しようとする心理的傾向によって、『デフォルト効果』が発揮されるケースがあるとされています。
さらに、設定されたデフォルトを「参照点(利得と損失の判断を分ける基準点)」として消費者が認識することで、(上述のように)設定されたデフォルトを選択しないことによる損失を回避しようとするケースも。
ビジネスシーンにおけるデフォルト効果の発生例
スマートフォンの初期設定
わかりやすい例としては「スマートフォンの初期設定」。
より便利になるとしても初期設定のままで特に問題がないこともあり、変更しようと思えばできますが面倒に感じてしまい、ズルズルとそのまま使い続ける方も多いのではないでしょうか。
これも、設定されている初期設定のままを維持して、(変更する)面倒を避けて時間やエネルギーを消費しないようにする『デフォルト効果』の一つと言えます。
メールマガジンの配信停止
「メールマガジンの配信停止」も、『デフォルト効果』の一つと言えます。
受信しているメールマガジンの配信停止も、所定の手続きをすれば(多くは)すぐにできるものですが、その手続きをするのが面倒で、そのまま受信し続けるというケース。
配信するマーケター側からすると、リードナーチャリング(※3)の一環で配信するメールに対して停止を希望されている方に、手間なく手続きができるUIを設計することや配信頻度などに注意が必要になります。
※3:『リードナーチャリング』については、こちらのページをご覧ください。
「リードナーチャリング」の検索結果一覧です。Just another WordPress site
最後に
最初に選択されている意思決定や、設定されている初期値(デフォルト)に従ってしまう・そのまま受け入れやすくなってしまう『デフォルト効果』。
選択肢のある物事に決断を下すためには、これまでの自身の経験を振り返ったり、決断したらどうなるかをそれぞれイメージし、選択肢を比較することになります。
そのため、(重要度にもよりますが)意思決定する際には、多くの時間とエネルギーを費やすことになります。
よって、確固たる決断ができない選択肢の場合、他者の推奨する選択肢を選びがちです。明確に判断できるケースばかりではないため、この『デフォルト効果』が大きく作用することになります。
そもそも人間は基本的に保守的な生き物です。変化を嫌い「いつもと同じで」と、現状維持を好む性質があります。
だからこそ、初期設定(デフォルト)が重要になるわけです。
初期設定(デフォルト)があれば、意思決定にかかる時間やエネルギーを消費することなく、物事を決めたり商品やサービスを購入・利用することができます。
ですが、デフォルト設定をする側への信頼度が低い、また受け手側にとって許容できる適切な設定でなければ、消費者から非難を浴びることになったり、懐疑的に見られたり無視されてしまうこともあるので、そういった点には注意が必要です。
こういった注意点を踏まえて活用すれば、顧客や消費者の意思決定を操作・誘導しやすくなるので、セールスやマーケティング活動に有効な効果をもたらすことが期待できる心理事象です。
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