マーケティングも無視できない『ネットバッシング(ネット炎上)』
インターネット上では日々、ネットバッシングやネット炎上が起こっています。
ケースによっては「叩かれても仕方がない」と思える事案もありますが、それでも「そこまでやるのか?」と思うほど、大勢がバッシングに参加し、度を越した罵詈雑言を浴びせる様子は怖さや脅威を感じます。
特にコロナ禍以降、より過激さが増し、些細な出来事への過剰反応というケースも見受けられるようになりました。
そんなネットバッシングやネット炎上ですが、マーケティング活動と無関係ではありません。プレスリリースやWebコンテンツ、出稿した広告、メール配信で発信した情報をきっかけにネットバッシング(ネット炎上)が起こる可能性があるからです。
『ネットバッシング』とは?
このネットバッシングとは、ネットリンチとも呼ばれ、インターネット上で、特定の人物や団体に対して不特定多数の人間が批判・非難するさまを指します。
ひとたびバッシングの対象になってしまうと「多勢に無勢」な状態になり、仮に事実と異なっていたとしても不利な批判があたかも事実であるかのように広まってしまう怖さがあります。
また、リアルな環境・関係性の中でのバッシングと比較すると、インターネット上のバッシングはより自制が効かず、発言が過激化しやすいのが特徴の一つです。
事実無根の過度な批判については誹謗中傷や名誉棄損に該当するケースもあるため、場合によっては警察や弁護士に相談することが可能です。
最近では、不祥事が発生した企業の謝罪会見において、対応が不十分・不適切であったために、ネットバッシングの現象が起こってしまい、それがネット炎上に発展するケースも起こっています。
そのため、クレームの対応やメディアへの対応については、SNSやメディアでの拡散リスクを考慮して対処することが求められます。
2023年のネットバッシング・ネット炎上の傾向とは?
企業が抱えるデジタルリスクを予兆・検知・解決するソリューションを手掛けている株式会社エルテス(本社:東京都千代田区、代表取締役:菅原 貴弘、証券コード:3967)が発表した、2023年上期「ネット炎上レポート」によると・・・
2023年上期全体の『炎上』傾向
2022年下期(2022年7月~12月)と比較して2023年上期(2023年1月~6月)のネット炎上件数は約10%増加しました。
業種ごとに分類すると特にメーカーとマスメディアの炎上件数が増加している傾向。
毎月の炎上件数では、上期を通じて2023年4月が最多に。4月では、画像生成AIを使用したプロモーションの炎上や、円安やウクライナ侵攻などの影響を受けた物価高騰に伴う商品の値上げに関する企業のリリースの炎上など、企業が発信した情報に対する炎上が多くみられました。
2023年上期の『炎上』トレンド①:メーカー企業の炎上が増加
2022年下期と比較して全体の炎上件数が増加傾向の中で、メーカー企業の炎上は2023年2月以降、増加し続けており、2023年上期の炎上件数は2022年下期の2.4倍となっています。
主な炎上事例としては・・・
●プロモーション動画内に動物愛護の観点での指摘を受けて炎上
●起用タレントの炎上による企業への批判
●従業員が投稿した動画をきっかけに炎上(バイトテロ)
メーカー企業含め、企業・団体で発生する炎上として、「従業員の不適切行為」が継続して発生しています。
過去に撮影された画像や動画がインターネットやSNS上で拡散されるケースが多く、批判対象となる企業・団体にとって予期せぬタイミングで批判が殺到しています。
そのため、従業員に対するSNSの使い方やコンプライアンスの徹底・研修とともに、過去の投稿が炎上していないか・炎上するリスクがないかも、チェック・キャッチアップする体制が求められています。
2023年上期の『炎上』トレンド②:マスメディアの炎上が増加
メーカー企業の炎上に加えて、マスメディアが起因となる炎上の事象が多くみられました。全体では12.9%に及び、2022年下期の4.7%から大きく増加しています。
主な炎上事例としては・・・
●報道の中でテロ行為に使用された爆弾の構造を紹介して炎上
●匿名での告発の中で映像加工が不十分だったことで身元が特定されて炎上
●懸賞企画の賞品が未発送だったことが発覚して炎上
メディアとしての役割や影響力についての配慮不足が批判につながったことが傾向として挙げられます。
2023年上期の『炎上』トレンド③:社会的な注目テーマが炎上トレンドにも影響
2022年のトレンドを継続して、「顧客クレーム・批判」「不適切発言・行為、失言」による炎上が全体の約80%を占める結果となっています。
最大の炎上要因となったのが「顧客クレーム・批判」。生成AIのプロモーション活用や原材料・輸送量の高騰に伴う商品・サービスの値上げなど、世間的なトレンドが炎上にも影響している事象が多かったようです。
主な炎上事例としては・・・
●画像生成AIをプロモーションに活用したが、着物の着用ルールから逸脱しているとして炎上
●パッケージに対して内容量が大きく減っており、ステルス値上げではないかと批判殺到
これらの事例は、違法ではないものの、消費者・ユーザーが持つ「この企業であれば〇〇してくれるはず」「〇〇であるべき」といった、企業やブランドに対する社会的期待や求められている配慮から逸脱したために炎上しています。
自社やブランドが消費者・ユーザーからどんなイメージを持たれているのか、何を期待されているのかを把握し、事象発生時においては真摯な対応が求められています。
ネットバッシング・ネット炎上参加者の傾向
上述の2023年上期のネット炎上の傾向としては、「顧客クレーム・批判」、「不適切発言・行為、失言」が多くみられ、法律・規制の観点で問題がなかったとしても、逸脱することで批判されるため、消費者やユーザーの期待に応えることが企業側に求められています。
そして、経営者とともに従業員も含め、企業として何を情報発信していくか、SNSを念頭にリテラシーを高めていく必要性が明らかになりました。
では、そのネットバッシング・ネット炎上に参加する人間の属性や、炎上に大きな影響を与える人数にはどういった傾向があるのでしょうか。
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授である、山口 真一 氏の著書『正義を振りかざす「極端な人」の正体』(光文社新書)によると・・・
ネットバッシングやネット炎上に加担する人物属性と中心(核)とは?
ネットバッシングやネット炎上に加担する、社会に大きな影響を与える「極端な人」。
よくあるイメージ像としては、年がら年中インターネットやSNSをしている「学歴の低い引きこもり」の人が挙げられますが、さまざまな事例を見てみると、高齢者やサラリーマン、主婦など、職業も性別も年齢もバラバラな属性であることがわかっています。
さらに、山口 真一 氏が2014年と2016年に実施した合計6万人のデータを対象としたネット炎上に関する研究結果では、「男性」「年収が高い」「所属する企業内の役職:主任・係長クラス以上」といった属性であると、炎上に参加する傾向にあるということが明らかになりました。
つまり、ネットバッシングやネット炎上に加担する「極端な人」は、むしろ「社会的地位の高い人」であり「学歴の低い引きこもり」とは限らないということです。
炎上の中心は4万人中7人
さらに、山口 真一 氏と慶應義塾大学 経済学部 准教授の田中 辰雄 氏が実施したインターネット利用者の4万人を対象にしたアンケート結果によると、炎上に参加するのは、感想を軽く書き込むだけの「ライトな参加者」と、何度も投稿を繰り返す「ヘビーな参加者」の二つの集団に分かれます。そして1年間に11件以上の炎上に参加し、1件あたり最大50回以上書き込んだ人は「7人」いたことがわかりました。
ちなみに、この7人(ヘビーな参加者)は学歴も年収も結婚の有無もバラバラで、属性に明確な特徴はなく、ライトな参加者については、中心世代は30代から40代で、年収が高いほど参加率(書き込む率)も高く、子どもとの同居率も高かったとのこと。
なぜネットバッシング・ネット炎上をしてしまうのか?
ネットバッシング・ネット炎上要因①:処罰感情
上述の山口 真一 氏と慶應義塾大学 経済学部 准教授の田中 辰雄 氏の調査結果によると、炎上に参加した人たちには『処罰感情』という心理が共通していることがわかりました。
処罰感情とは、犯罪が起きた時などに社会や被害者がどんな罰を与えたいのかを示すもので、処罰感情が強ければより重い処罰を求める傾向があります。
例えば、不倫した芸能人を徹底的に糾弾している人は、謝罪だけでは納得できない、テレビ番組の降板など重い罪を望む心理傾向があります。
ネットバッシング・ネット炎上要因②:被害者意識
さらに、ヘビーな参加者である「4万人中7人」に共通しているのが強い『被害者意識』だということも明らかになっています。
「罪を犯した人は世の中から退場すべき」「ずるいやつがのさぼるのが世の常」「こんな人がいるから自分が報われない」と考え、世の中に対して恨みを持ち、被害者意識が極端に強い傾向があるということです。
この被害者意識は、社会課題としてではなく「自分が傷つけられている」と自意識に端を発しており、脊髄反射的に被害者感情を爆発させやすいというのも特徴です。
ネットバッシング・ネット炎上要因③:間違った自己有用感
ネットバッシング・ネット炎上させることに多くの賛同を得られると「こんなに人のために役立った」という思いが強くなります。この心理を『自己有用感』と言います。
この自己有用感は、自身の正義漢を肯定する役割も果たしています。ネットバッシング・ネット炎上させることで「自分が役に立った」と勘違いしているというわけです。
ネットバッシング・ネット炎上要因④:正義感
さらに、山口 真一 氏の研究によると、どのような炎上事例でも書き込んでいる人の60%~70%の人が「許せなかったから」「失望したから」など、『正義感』から行動を起こしていることが明らかになりました。
ここで言う『正義感』とは、社会的正義ではなく、あくまで個人個人が持っている軸・価値観としての正義感ということです。そもそも正義感というのは、人によって異なりますが、ネットバッシング・ネット炎上に加担する人たちは、自身の中の正義に従って他者に攻撃を加えるということです。
自身の正義感を振りかざす人々の多くは、日々情報に触れる機会が多く、一定以上の知識を有している特徴があります。知識を有する中で、自身が関心のある問題に対して「〇〇は正しい」「△△は間違っている」など確固たる信念や、ロジックを抱くようになります。
そして、自身の信念やロジックに反する発言を見た時に批判をする。一部の人間は、批判だけに留まらず感情的になり「自分は直接の当事者ではないが、自分が行う処罰は正当なものだ」と胸を張り人格攻撃までしてしまう。
さらに、企業の不正行為や一般人の悪ふざけ、芸能人の不祥事などに対して「こんな人・企業には制裁を加えなければならない」「こういうことをする人・企業には叱りつけなければならない」という気持ちで書き込み・投稿をします。
人間には、正義感をもとに他人に制裁を科すと、快楽物質である「ドーパミン」が分泌されます。この快楽に溺れてしまうと極端に不寛容になり、他人を許さずに正義感から裁くことで快楽を得ようとし続けてしまう「正義中毒」になってしまいます。
しかも、インターネットやSNS上には自身と同じように「許せない」と思い、正義感から攻撃を仕掛ける人が少なからず存在するため、集団意識(仲間意識)が生まれることから現実社会よりも過激になる傾向があります。
日本人はネットバッシングしやすい?
一説には、島国の「閉鎖的な空間」によって日本人は特に「差異に敏感」であり、その特性によってネットバッシングを加速させやすいと言われています。
「閉鎖的な空間」では自然と同質集団が形成されることになり「微妙な差異に敏感」になります。つまり少し異質であっても集団から排除しようとする働きが起きやすいということです。
そのため、「アイツは浮いている」「アイツだけ出世した」など、学校や職場で起こる妬みや憎悪が「いじめ」や「ハラスメント」に発展しやすいとされています。
最後に
処罰感情や被害者意識、間違った自己有用感、そして正義感によって起こるネットバッシング・ネット炎上。
インターネット上への情報公開だけでなくSNS投稿が、意図せずネットバッシングされる・ネット炎上が起きることがあります。
以前までは、リアルな人間関係を介して話題になっていたことが、SNSが普及したことにより(良くも悪くも)デジタル空間を通じて情報交換がされることで、情報が拡散しやすくなっています。
今では、インターネット上の誹謗中傷対策を代行してくれる業者・サービスもあらわれ、SNSは、2022年7月から侮辱罪が厳罰化され、誹謗中傷への目は一層厳しくなっているものの、インターネットとともにSNSの運用や対処には注意を払う必要があります。
※『マーケティング活動(広告)で炎上が発生したら・・・』については、こちらの記事をご覧ください。
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