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『アンダードッグ効果』とは?
アンダードッグ効果とは、経済学者であるライベンシュタイン 氏が1950年の論文の中で提示した行動心理学の事象の1つです。
「アンダードッグ(Underdog)」には「負けそうな人」という意味があり、弱い立場にある人や、不利な状況に追い込まれている人に心を寄せて応援したくなるという心理を指します。
「負け犬効果」とも呼ばれています。
ビジネスにおいて、自社の商品やサービスが競合と比較して市場内シェアが占められておらず不利な状況に陥るケースがあります。そんな状況を逆手にとって光を見出すために有効なのが『アンダードッグ効果』です。
なぜ発生するのか?
元来、人間には集団で生活する中で子どもや老人など「弱い存在」を守ろうとする本能が備わっています。
この本能が「弱い立場に陥っている or 不利な状況にある」存在に対して向けられることで、アンダードッグ効果が発生することにつながります。
特に日本人はアンダードッグ効果が発揮しやすいとされています。
日本ではアンダードッグ効果を『判官贔屓(はんがん・ほうがんびいき)』とも表現されます。
弱者や不遇な者に同情して味方したり応援する心情を意味しています。平安時代の武将であった源義経が兄の頼朝にねたまれて滅んだことに当時の人々が同情を寄せたことが由来となっています。
アンダードッグ効果の活用例
アンダードッグ効果は、選挙の場面で使われ始めたと言われている心理事象です。
選挙前の勝敗予測において、劣勢であると報じられた候補者に対して、同情心から票が投じられ逆転勝利へとつながったことから来ているとされています。
弱い一面を見せることで効果を発揮する好例と言えます。
このアンダードッグ効果と反対の意味で使われるのが『バンドワゴン効果』(※)です。
バンドワゴン効果とは、「みんなが持っているなら自分も欲しい」「世の中の流行に乗り遅れたくない」という心理が作用する、他者との同質化に対する願望が評価や判断材料、行動を促す事象です。
※『バンドワゴン効果』に関しては、こちらの記事をご覧ください。
バンドワゴン効果とは? バンドワゴン効果とは、経済学者であるライベンシュタインが1950年の論文の中で提示した行動心理学の事象の1つです。 「バンドワゴン」とは行列の先頭を行く「楽隊車」を意味し、「みんなが持っているなら …
このアンダードッグ効果は、マーケティングの領域に応用できるケースもあります。
発注ミスをして大量の在庫を抱えてしまった・・・
ディスカウントストアで見かける「発注ミスで在庫を抱えすぎて困っています」というPOPで安売りしているケースです。
「発注ミスで在庫を抱えすぎた」という弱みを見せることで、それを目にした消費者に「応援してあげたい」と思わせ購買意欲を高めようとする方法です。(本当に発注ミスをしたのかはわかりませんが・・・)
売れ行きが不振な商品やサービスをテコ入れしたい・・・
自社の期待ほど売れ行きが良くない商品やサービスをテコ入れしたいケース。
「売れていませんが、実は良い商品(サービス)なのです」といったメッセージを打ち出して、売れていない・人気がないという弱みを認識してもらうことで、購買意欲が高まる可能性が生まれます。
注意点としては、その商品やサービスが社内で高く評価されていて、プロモーション次第で拡販の可能性が見込めそうであるということです。
そもそも良くない商品(サービス)だから売れないのであれば、消費者へのアピールにはなりません。
お客さんが減ってしまった・・・
特にコロナウイルス感染症の感染拡大時期においては、接客業、特に飲食業界は大打撃を受けました。
外出自粛や入店客数の制限などが行われていたタイミングにおいては、どの飲食店にも悪影響を与えていました。
そんな状況が落ち着いた中で客足を取り戻すために、目に留まるような手法で「応援したい」「少しでも助けになりたい」と思ってもらえるようにすることで、現状を打破する可能性が生まれるかもしれません。
さらに、SNSで拡散してもらえば爆発的に客数が増加する可能性もあります。
アンダードッグ効果を発揮させるための条件
『アンダードッグ効果』はマーケティングの領域でも活用できますが、発揮するためには条件が必要になります。
- 努力している
ただ単に弱い立場にある、不利な状況に追い込まれているからといって、アンダードッグ効果が発揮されるわけではありません。
応援したいと思われるような姿勢、つまり状況を打破しようと諦めずに努力している姿を見せなければなりません。 - 弱みを見せる
弱く不利な状況であることを正直にさらけ出すことも必要です。
隠すことなく見せることで、共感されやすくなり、「応援してあげたい」と思ってもらえやすくなるため効果がより発揮されやすくなります。 - 普段の姿を知ってもらえている
弱く不利な状況になる前の姿を知っておいてもらわないと効果は発揮しにくくなってしまいます。
これまで何のやり取りも交流もないのに、急に「助けて欲しい」「応援して欲しい」と求められても、よほど刺さる商品やサービスでない限り、感情が揺さぶられるのはごく稀ではないでしょうか。
つまり、何の面識もない方々には刺さりにくい・効果を発揮しにくいと言えますので、既存顧客や保有しているリードを対象にすれば効果が出やすくなると考えられます。
また、ただ弱さや不利な状況であることだけでなく、その商品やサービスの特徴やメリット、競合と比較しての優位な差別化できているポイントを伝えるようにすることが大切です。
『バンドワゴン効果』と同様に、アンダードッグ効果も日本国民に発揮されやすい傾向があるので、国内市場向けとして期待値の大きい効果であるといえます。
最後に
ビジネスやマーケティングの場面では、自社の状況だけでなく競合の影響を受けることで、不利な状況に陥ってしまうことがあります。そんな状況でも、諦めずにアンダードッグ効果を活用すれば、改善できる可能性があります。
とはいえ、消費者の感情に訴えかけることで効果を発揮するので、正直に自社が置かれている弱み、状況を打破しようと努力しているけれど報われていないことを見せ、同情を誘い過ぎず・卑屈にならずに共感を得られるようにすれば、日本のマーケットにおいては特に消費者は応援してくれるようになるはずです。
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