事前の想定よりも実際は時間がかかってしまう！？『ホフスタッターの法則』

すべての作業に対して正確に所要時間を予測することはできないという『ホフスタッターの法則』。
発生例や発生してしまう原因、起こりやすいビジネスシーン、発生を予防するための方法などについて解説しています。

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『ホフスタッターの法則』とは？

『ホフスタッターの法則（Hofstadter’s law）』とは、すべての作業に対して正確に所要時間を予測することはできない、という法則です。

つまり、どんなに緻密な計画をしたとしても作業の見込み・見通しは楽観的になってしまう傾向があり、事前の想定よりも時間がかかってしまうことを示した法則と言えます。

提唱したのは？

この法則は、アメリカの認知科学者である、ダグラス・ホフスタッター 氏が、1979年の著書『ゲーデル、エッシャー、バッハ あるいは不思議の環』（『GEB』）の中で提唱しました。

ダグラス・ホフスタッター 氏は、1979年にチェスをプレイするコンピューターに関する議論の中で、この法則を紹介しました。

当時、チェスをプレイするコンピューターは、再帰的分析（データに含まれるパターンを特定し整理する手法）では人間を上回っていたにもかかわらず、トップレベルのプレイヤーとの対戦では負け続けていました。

その要因として、次の手を「しらみつぶし」に想定するコンピューターの手法とは異なり、人間のチェスの達人は盤上の局面を即座に認識していたことが挙げられています。

ホフスタッター 氏はこういった傾向をもとに、コンピューターがチェスの世界チャンピオンになるのは「10年後」だろうと予想されていた当時、さらに10年以上かかると指摘しました。

実際に、コンピューターが世界チャンピオンになったのは18年後の1997年でした。

つまり、複雑であったり予測が不可能な要素が絡む場面において、精微に見通す・正確に評価することの難しさを、この法則は示唆しています。

『ホフスタッターの法則』の発生例

どれくらいの時間で終わるかを楽観的に見積もってしまう『ホフスタッターの法則』は、さまざまな場面で発生します。

思っていたよりも時間がかかってしまう・・・

日常生活においては、すぐに終わると思っていた食事の準備に時間がかかってしまう、というケース。

思っていた時間内に終わらない・・・

例えば、勉強をする際、「この内容なら1時間で終わるだろう」と見通しを立てていたところ、実際には2時間以上かかってしまった、というケース。

タスクが終わらない・スケジュール通りに進まない・・・

ビジネスシーンでも発生します。例えば、プロジェクトのタスク管理やスケジュール管理をする際に、生じる時間の見積もりを「楽観的に」してしまうケースが考えられます。

なぜ『ホフスタッターの法則』が発生してしまうのか？

発生してしまうと、焦燥感からミスをしてしまったり、集中力が散漫になってしまう、また計画が遅れてしまったり、予算がオーバーしてしまうといった影響を及ぼすことになってしまう『ホフスタッターの法則』。

発生する原因としては、以下の点が挙げられます。

• 「脳」に備わっている習性である
• 見通しの甘さ
• 外的要因を考慮しない
• コミュニケーションの不足

「脳」に備わっている習性である

そもそも、行う作業がどれくらいの時間で終わるのかを「楽観的に」見積もってしまうのは、人間の脳が持っている習性の一つと言われています。

見通しの甘さ

ビジネスシーンにおいても、「これくらいで終わるだろう」と見積もってしまうことが多くあります。

複数人で取り組むプロジェクトであれば、スキルの高いメンバーをベースに必要な作業時間を想定してしまう、要件や仕様が未確定の項目についてリスクを加味して工数を計上しない、ということが要因として挙げられます。

これらは、過少に・楽観的に捉えてしまう「見通しの甘さ」からくると考えられます。

外的要因を考慮しない

どんなことにも「予期しない」ことが起こる可能性があります。

想定通りであれば短時間で終わることであっても、緊急度の高いことが割り込んできたり、仕様が変わってしまうといった、予期しない外的要因が生じることで、見積もった時間よりもかかってしまいます。

コミュニケーションの不足

複数人で取り組むプロジェクトであれば、メンバー間のコミュニケーションが円滑でないことによって、事前に見積もった時間よりもかかってしまうばかりか、生産性が低下してしまうことにもなってしまいます。

特に『ホフスタッターの法則』の発生が起こりやすいビジネスシーン

この『ホフスタッターの法則』の発生が起こりやすい・注意が必要なビジネスシーンとしては、以下が挙げられます。

• これまでやったことがない業務
• 複雑な業務
• 外的要因が影響しやすい業務環境

これまでやったことがない業務

初めて行う業務（作業）の場合、（当たり前ですが）経験がないため、完了するまでどれくらいの時間がかかるのかを予想するのは難しくなります。

複雑な業務

多くの手順（ステップ）を踏まなければ進めることのできない業務の場合、進行途中で予期せぬトラブルが発生しやすいため、注意が必要です。

外的要因が影響しやすい業務環境

当初、計画していなかったタスクが急に割り込んでくるような、外部要因に影響を受けやすい業務環境の場合、プラン通りのスケジュールに収まらなくなってしまいます。

『ホフスタッターの法則』の発生を予防するための方法

この法則の発生を予防するためには、以下のような戦略が有効となります。

• スケジュールに余裕を持たせる
• タスクに優先順位を設定する
• 業務を「細分化」する
• 定期的な振り返りと改善
• ガントチャートやタスク管理アプリを活用する
• 『ポモドーロ・テクニック』を取り入れる
• 「タイムトラッキングツール」を用いる

スケジュールに余裕を持たせる

『ホフスタッターの法則』によれば、余裕を見込んでいたとしても、さらに予期せぬ事態が発生する可能性があります。

一般的に、予定よりもさらに「20％～30％の追加時間」を確保することが推奨されています。

タスクに優先順位を設定する

すべてのタスクに同じ時間を割り当てるのではなく、「優先順位」を明確に設定して、重要度の高いタスクに多くの時間を確保することが対策となります。

この際には、「最悪のシナリオ」を考慮して優先順位を設定することがポイントになります。

『ホフスタッターの法則』によれば、すべてが順調に進むという前提に根差した計画はリスクが高いため、事前に問題が発生した際に備えておくことが必要です。

業務を「細分化」する

大掛かりなプロジェクトや複雑な業務は「見通しが甘くなりやすい」ため、細分化することが有効になります。

タスクを小さな「塊」に分割して、スムーズに進行する思考法に『チャンクダウン』があります。

この『チャンクダウン』の発想を用いて、小さく切り分けることが『ホフスタッターの法則』の予防につながります。

※『チャンクダウン』の詳細については、こちらのページをご覧ください。

定期的な振り返りと改善

ほかにも、定期的に振り返りを行い改善を加えることで、事前の見通しの精度と実際の作業時間を比較し、次のステップにその情報を役立てることで、より現実的なプランニングが可能になります。

ガントチャートやタスク管理アプリを活用する

また、プロジェクトの進捗を視覚的に把握できる「ガントチャート」や、タスク管理アプリを活用することで、計画のズレに早急に対応でき、適切なスケジューリングをしやすくなります。

『ポモドーロ・テクニック』を取り入れる

タスクを「25分」ずつのセッションに分け、その間に短い休憩を挟む時間の管理術である『ポモドーロ・テクニック』を活用することも有効と言えます。

25分間の集中作業と5分間の休憩を繰り返すことで、タスクの進捗を細かく把握することができ、『ホフスタッターの法則』によって生じる「いつの間にかこんなに時間が経過していた」という事象を防止することができます。

※『ポモドーロ・テクニック』の詳細については、こちらのページをご覧ください。

「タイムトラッキングツール」を用いる

さらに、「タイムトラッキングツール」を用いることで、自身の作業時間をリアルタイムで把握することができ、次の作業時間をより正確に見通せるようになります。

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この続きでは、『ホフスタッターの法則』を前提にすることによるメリットについて解説しています。

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