身近にいる!?自分もなってしまう!?『裸の王様』現象

日常生活でもビジネスシーンでも起こる『裸の王様』現象
企業で発生すると組織が機能不全を起こし経営は悪化、離職者も増えていくという世に言う『ブラック企業』化してしまいます。
なぜ発生するのか、発生を防ぐ方法などを解説しています。

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誰にとっても身近な『裸の王様』現象

周りに諫めてくれる人がおらず反感を買ってしまう

ご自身の身近に「『裸の王様』になっている人がいる」、もしくは振り返ってみると「『裸の王様』になっていることに自分自身が気づいていなかった」経験があるかもしれません。

周囲に反対や批判をしてくれる人がいないため、自分自身を理解できないまま振る舞い反感を買ってしまう『裸の王様』現象は、誰にとっても身近であり、日常生活でもビジネスシーンでもよく起こる事象です。

『裸の王様』現象とは?

『裸の王様』現象とは?

『裸の王様』現象の発祥などは、以下の通りです。※「『裸の王様』現象」は学術名などではありません。

『裸の王様』の由来

童話が由来の『裸の王様』

『裸の王様』の由来は、デンマークの作家ハンス・クリスチャン・アンデルセン氏が1837年に発表した童話からきています。

普段から周りの声を聞き入れなかった結果、裸でパレードを行ってしまった王様の物語から、「批判や反対意見を受け付けず、本当の自分を理解していない権力者」の例えとして、用いられています。

さらにこの童話は「本当の自分を理解していない王様」という一面のほかにも、詐欺師である仕立て屋が作る「(王様が着ているという)馬鹿には見えない衣装」が、「自分には見えないが見えないと言うと自分が馬鹿」ということになり、「他の人々も素晴らしい衣装だと絶賛しているので自分も同調しよう」といった、取り巻きの家来や多くの町民の「周りに同調して本当のことを王様(権力者)に言えない」という心理も取り上げられています。

社会心理学では『多元的無知』と呼ばれる事象

『多元的無知』(集団的無知)と呼ばれるバイアス

上述の童話『裸の王様』は、社会心理学で『多元的無知』(集団的無知)と呼ばれるバイアスとされています。

『多元的無知』とは、特定の社会的集団の構成員に見られるバイアスの一種で、「実験的社会心理学の父」と呼ばれるアメリカのフロイド・ヘンリー・オールポート氏とダニエル・カッツ氏、リチャード・シャンク氏によって提唱されました(時系列的にはアンデルセン氏の童話の後)。

多数が「良い」と主張するものを誰も否定できなくなってしまい、結果的に集団として誤った方向に行動してしまう現象を指します。

『裸の王様』現象と『同調圧力』

裸の王様現象と同調圧力との関係

デンマークの童話を由来とする『裸の王様』現象ですが、「空気を読む」「(言葉で伝えなくとも)文脈から真意を読み取る」「暗黙の了解」といった特徴のある日本において特に発生しやすい現象と言えます。

その日本では、『同調圧力(同調バイアス)』(※)も発生しやすい傾向があります。

同調圧力(同調バイアス)の詳細については、こちらのページをご覧ください。

この同調圧力(同調バイアス)と『裸の王様』現象(多元的無知)は、「空気を読む」「他の多くの人と同じ意見・行動をしなければならない」という心理的影響が類似していますが、関係性としては多元的無知(集団的無知)の根源にあるのが同調圧力とされています。

個人的には、より権威性が影響するのが『裸の王様』現象と考えています。

『裸の王様』現象が発生する例

学校や大学、オフィスでも生じる心理事象

この『裸の王様』現象(多元的無知・同調圧力)は、誰にとっても身近で、日常生活でもビジネスシーンでもよく起こる事象です。

学校の授業や大学の講義

『裸の王様』現象が発生する例①:授業や講義でわかったフリ

難解な学校の授業や大学の講義を受けた際、誰もその授業内容や講義内容を理解できていないにも関わらず、生徒や受講生それぞれが「理解できていないのは自分だけかも知れない。理解していないと知られるのはイヤだから、わかったフリをして頷いておこう」としてしまう。

ミーティングでの発言

『裸の王様』現象が発生する例②:会議でほかの参加者と同調

参加するメンバーの誰もが自身の本音を言い出せず、誰も望んでいない決定をされてしまうのも発生例の一つです。

「この流れを乱す意見をしてしまうと空気が読めないヤツだと思われてしまう」と、みんなが参加メンバーの多くの考えを推測して、自身の意見を述べずに多数に合わせた言動をするというケース。

サービス残業をしてしまう

『裸の王様』現象が発生する例③:サービス残業

最近は働き方改革によって是正が進んでいますが、「上司がまだ残っているから」「(自分はもう帰りたいけど)他の人たちはそう思っていないだろう」と自身の中で思ってしまい、社内で残業が常態化してしまう。

リモートワークできるのに出社してしまう

『裸の王様』現象が発生する例④:リモートワーク制度があるのに出社せざるをえない

リモートワーク(在宅勤務)の制度が社内にあったとしても「上司が出社しているから」「ほかの同僚はみんな出社しているから」と思い、結局出社を続けてしまう。

ビジネスシーンでハイリスクなのが経営者や役職者の『裸の王様』化

役職や等級の高い社員や経営者が陥ると『ブラック企業』になってしまう

企業組織内でリスクが高いのは、経営者や役職者の『裸の王様』化です。

経営者や役員、高い等級の社員が『裸の王様』になってしまうと、組織が機能不全に陥ってしまい『ブラック企業』化してしまうリスクが高まってしまいます。

経営者や役職者が『裸の王様』になることで起こる悪影響

組織が停滞し経営悪化・離職者増加・・・ブラック企業へ

組織の掲げる目標を達成するために、活動することで得られた情報を共有し、発生する課題を解決・改善していく」のが、在るべき企業組織の姿ですが、その企業組織内で高い権威性を有する、業績に大きく貢献した(している)高等級の社員や役員、もしくはワンマン経営者がいる場合、活動している現場の事実に基づいた情報がそのまま伝わらず、耳障りの良い情報だけが届くようになってしまうことがあります。

発生した課題や問題といった「悪い情報」が排除され、「良い情報」だけ届くようになると、「自身の思い通りに物事が進む」と考えるようになり、自身の考えと異なる意見を述べる社員を排除する『裸の王様』と化してしまいます。

言われるがままに動く社員か退職するか・・・

さらに『裸の王様』と化すことで、「良い情報」だけをもとにした業務指示と現場が目の当たりにする実状に乖離が生じ、組織としての一体感が失われ、生じた乖離を埋めるためのムダな業務が増え、社員の業務負担も増えることになります。

そんな状況下になった際、改めるよう苦言を呈する社員は周りにはおらず、だんだんと組織は停滞し、ゆくゆくは経営が悪化し離職者も増えていく、世に言う『ブラック企業』になってしまいます。

『裸の王様』現象の発生を防ぐには?

デメリットの多い『裸の王様』現象を防止する4つの方法

では、この『裸の王様』現象の発生を防ぐには、どうするべきなのでしょうか。

自分自身で気づきコントロールできるようにする

自問自答し自身をコントロールする姿勢

致命的なのは、『裸の王様』になっていることを経営者や役職者などの当人自身が気づいていないことが挙げられます。

『裸の王様』現象はどの組織でも起こりうる現象であると認識し、自問自答し自身をコントロールする姿勢が求められます。

耳障りの悪いことも指摘できる社員を大切にする

問題や課題を指摘する優秀な社員を重宝する

多くの経営者や役職者は、「自分の指示通りに動く社員」=優秀と考えがちです。

ですが、指示通りに動いていると、自身で試行錯誤せずに「言われたこと(だけ)をやる」思考が停止した社員になってしまいます。

本当に優秀な社員は、「会社組織の掲げる目標を達成する」ために考え行動できる人材であるはずです。

そのため、時には活動する中で発生する問題や課題を指摘しなければならない場合も。

そういった耳障りの悪いことも、上司や役職者、経営者に伝えることのできる社員こそ大切にすべきです。

「耳障りの悪い」指摘についての注意点

企業目的に即した指摘かどうか

「耳障りの悪い」指摘をできる社員について注意点があります。
それは、会社組織が結果として良くなるために述べているのか?という点です。

社員も人それぞれなので、「自身の承認欲求を満たすためだけの目的で問題を指摘する」「無理やり大きな問題として進言する」などのケースも起こります。

そういった社員には、しっかりとマネジメントする(もしくは入社前の選考の段階で相応の判断をする)ことで、余計なコミュニケーションコストをかけないようにすることが必要です。

なので、「今抱えている問題を挙げなさい」とミーティングで無理やりヒアリングしようとするのもNGです。

よほど企業組織として成熟していない限り、無理やり問題をひねり出すのは、余計なコミュニケーションコストが発生してしまいます。

緊急性の高い問題を共有してもらい、緊急度に応じて対処・改善していかないと、「会社組織の掲げる目標を達成する」という大前提を見失ってしまいかねません。

気づける組織環境・風土を作る

意見を言い合える組織風土を構築する

組織として防ぐというのも方法の一つです。

役職や立場を飛び越えて、自身の意見を安心して伝え合うことのできる環境や風土づくりができれば、客観的な視点を持てるので『裸の王様』になることを防げるはずです。

その際に注意すべきなのが、「意見を聞き過ぎない」こと。企業組織間・個人間には業務を進めるうえで利害関係が発生します。そのため、企業に所属する全員が満足する正解を出すことは不可能です。

経営者の場合、時には複数の社員から不平不満の意見が出るとしても、自身の責任として大鉈を振るう決断が求められることもあります。

意見を聞き過ぎると、当人の意見に沿わない決定をした際に不満が噴出し、それが積み重なると不信感を抱くようにもなるので、聞くにも『バランス』がとても重要です。

最後に

集団の中での「何となく」に注意

学校でも地域のコミュニティでも職場でも、特定の集団の中で多数派の意見に賛同するのは悪いことではありません。

ですが、お互いの意見を述べ合うことなく「何となく」場の空気を読んで行動してしまうと、結果として誰も望まない結論になってしまうリスクがあることを理解しておくべきです。

特に中小規模企業内のマーケティングの部署においては、多くのアクションで他部署との連携が求められることから、部署を横断しての調整スキルや強いリーダーシップ、権限が必要となります。

そのため、社長直轄の部隊になったり、前職の所属企業で華々しい成果を挙げた人材を採用するケースもありますが、そういったときには『裸の王様』現象が特に発生しがちなので、注意が必要です。

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