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『アインシュテルング効果』とは?
『アインシュテルング効果』とは、自身の経験や思い込みを優先して思考、対応を固執してしまう、「自身の経験に固執する心理事象」を指します。
認知バイアス(※)の一つであり『構え効果』とも呼ばれています。
この『アインシュテルング効果』の影響を受けると、自身が慣れている考え方などを優先するため、それに反する意見を無視するようになってしまいます。
つまり、思考の偏りを生じさせてしまい、より優れた提案や、新しい創造性・アイデアを拒否したり、別の考え方や発想の可能性を無視するようになります。
ほとんどの人間が陥ってしまう「認知機能の罠」として知られています。
※認知バイアス:直感や過去の経験に基づく先入観によって物事の判断が非合理的になり、偏った見方をしたり、ありのままに捉えることができなくなるバイアス。
ちなみに、このアインシュテルング効果は『アンコンシャスバイアス』の具体例の一つで、アンコンシャスバイアスを生じさせるのが『ヒューリスティック』とされています。
※『ヒューリスティック』に関しては、こちらの記事をご覧ください。
自身の経験や先入観などに基づく直感が、意思決定に影響を与える『ヒューリスティック』。発生するメカニズムやメリットとデメリット、代表的な種類、活用シーン、注意点について解説しています。
発生例①:トラブル発生時
何かイレギュラーな事態が発生したとしても、マニュアル通りの対応に終始してしまう。
発生例②:売上の低迷時
ビジネスを進める中で売上が低迷する状況下になっても、それまでと同様の戦略をとり続けてしまう。
発生例③:金融取引
過去の成功体験にこだわってしまい、市場(マーケット)の変化に柔軟に対応できない。
発生例④:医師の診断時
患者を診断する際、最初に見つけた異常に気を取られて、ほかの大きな兆候を見落としてしまう。
なぜ発生するのか?
人間の脳は、起こる問題を解決する際、自身が導き出した仮説や結論と一致しない事実やデータを無視する傾向があるため、物事をさまざまな観点から見ることができず、創造的に思考することが困難になってしまい、その結果として『アインシュテルング効果』が発生するとされています。
発見・実証した実験
アインシュテルング効果は、アメリカの心理学者であるアブラハム・S・ルーチンス 氏の1942年に実施した実験によって発見・実証されました。
3つの大きさの異なる水瓶を用いて、必要な量の水を得る「ルーチンスの水瓶」として知られています。
ルーチンス 氏が被験者に問題を提示。序盤の問題までは3段階の手順で解ける問いを示し、その後の問題は2段階の手順でも3段階の手順でも解ける形式の問いが出題されます。
すると、多くの被験者が最初の5問を3段階の手順で解きましたが、2段階の手順で解けるが3段階の手順では解けない問題を出すと、被験者たちは解けないと回答。
この実験の結果から、被験者たちは成功した先行経験(3段階で問題を解いた経験)が、目の前の問題に対して「構え=アインシュテルング」を形成し、問題を解くことに対して柔軟さを抑制するとルーチンス 氏は考えました。
『アインシュテルング効果』を乗り越えるには?
アインシュテルング効果を認識・逃れられないと意識付けする
『アインシュテルング効果』が発揮してしまうと、柔軟な発想の弊害となってしまいます。
なので発揮させないのが理想的ですが、人間がアインシュテルング効果から完全に逃れることはできません。
人間は、過去の経験をもとに発生する事象を予測・対処します。そのため、アインシュテルング効果によって素早い決断を行える(思考を節約できる)というメリットがあります。仮にアインシュテルング効果から完全に免れるのであれば、事象や物事に対する決断に膨大な時間を要することになってしまいます。
そのため、乗り越えるための方法の一つは「アインシュテルング効果(認知バイアス)を認識し、アインシュテルング効果から逃れるのは不可能」と意識付けするということ。
「自身の経験によって、思考が阻害されていないか?」そう自分に問うことが、乗り越える一つの要因となります。
見識を広げ続ける
知識を得て、見識を広め続けることで、多面的に事象や物事を見ることができやすくなります。
自身の考えと違うことをメモなどで残す
進化論で有名なダーウィンは、何かの事実や観察結果、新しい思考法が発表され、それが自分の考え方に反している場合、必ずメモをして残しておいたそうです。
自分が理解できないことこそメモなどで残しておくことで、後に新たな気づきが得られたり、相対的に自身の考えを捉えられるようになりやすくなります。
周囲の人の意見に耳を傾ける
アインシュテルング効果を乗り越えるためには、自分とは違う他者の意見を聞くことで、客観的な視点や気づきを得られやすくなります。
(とはいえ、アインシュテルング効果が発揮していると他者の意見を取り入れるのは難しいので「アインシュテルング効果を認識・逃れられないと意識付けする」ことが前提として必要になります)
最後に
自身の経験や思い込みを優先して思考、対応を固執してしまう『アインシュテルング効果』。
定石化したプランや定番の手法は「これまで」の(成功)実績があるため、リスクが無いように感じます。ですが、それらの既成概念に囚われ過ぎると、挑戦する意欲が低下・マンネリ化し、新しいアイデアや挑戦を阻害する要因になってしまいます。
社会情勢や人々の価値観は時代とともに変化します。社会情勢でいえば「新型コロナウイルス感染症との向き合い方」、価値観でいえば「働き方改革」や「LGBTQ」などさまざま。現代では、それらの変化に対応し、新たな思考や取り組みを進めていく必要性が高まっています。
もちろん、変化を何でも迎合する必要はありません。ですが、過去の経験や成功に固執してばかりだと、時間の経過とともに成果が出なくなる可能性が高まってしまいます。
物事や事象に向き合う際、「年齢を重ね、経験豊富になるがゆえに頭が固くなっていないか?」と自身に疑問を投げかける、(簡単ではありませんが)他者の意見にも耳を傾ける姿勢が、気づきが生まれるチャンスかもしれません。
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