前後のつながりのない画像や映像を無意識に関連付ける『クレショフ効果』。
由来やテレビCMを中心とした具体例、類似した心理効果とメリットや注意点などについて解説しています。
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『クレショフ効果』とは?
『クレショフ効果』とは、前後のつながりのない画像や映像を無意識に関連付ける心理事象のことです。
認知バイアスの一つとして知られており、主にテレビ広告(テレビCM)などで用いられています。
由来
クレショフ効果は、1922年にロシア(旧ソビエト連邦)の映画監督や脚本家を兼ねていた、レフ・ウラジミロヴィチ・クレショフ 氏が提唱した「モンタージュ理論」で示されました。
「モンタージュ理論」とは、本来関係のない映像をモンタージュ(編集)することで、連続した前後の映像に関連があるかのように錯覚する現象のことです。
この理論を検証する過程で発見された効果を指し、名前をとって「クレショフ理論」と名づけられました。
実証した実験
クレショフ 氏による実験では、被験者を3つのグループに分け、1つ目のグループには「スープの皿」、2つ目のグループには「遺体が入った棺」、3つ目のグループには「ソファに横たわる女性」を見せた後に「無表情の男性」を見てもらい、男性が考えていることを回答してもらいました。
その結果、「スープの皿」を見たグループは「空腹」、「遺体が入った棺」を見たグループは「悲しみ」、「ソファに横たわる女性」を見たグループは「欲望」という印象を持ったと回答しました。
この実験によって、同じ「無表情の男性」を見たとしても、前後に見る映像や画像によって印象が変わることが実証されることになりました。
クレショフ効果の具体例
連続して見る映像や画像から関連性を連想する・紐づける『クレショフ効果』には、身近な例が多くあります。
ニューヨーク+アパート=「同じ場所」と連想
例えば、ニューヨークのイメージを見た後にアパートを見ると、ニューヨークのアパートだと印象を持ちやすくなります。
このように、違う場所の映像や画像を連続で見ると「同じ場所」と連想しやすくなります。
赤ちゃん+女性=「女性は赤ちゃんの母親」と連想
例えば、赤ちゃんと女性のイメージを連続で見せると、「女性は赤ちゃんの母親」だという印象を持ちやすくなります。
このように、異なる人間を連続して見ることで「2者は関連する」と連想しやすくなります。
テレビCM(テレビ広告)でよく用いられる例
テレビCM(テレビ広告)では特に、クレショフ効果の利用例を目にする機会があります。
例えば、野菜ジュースのCMの場合、「飲むと元気になる」「健康になる」と連想させるために、事前に「疲れた人」を登場させて商品を出すという形です。
そうすると、「疲れた人」と「野菜ジュース」の印象が結びつき、関連性が強まることになります。
柔軟剤のCMの場合、映像や画像では伝わりにくい「匂い」を表現し伝えることが可能になります。
化粧品のCMの場合、まず女優が登場し、その後化粧品が出てくると「あの有名な女優が宣伝している化粧品」とイメージを連想させやすくなります。
高級車のCMであれば、エレガントなモデルを登場させ、その後高級感のある自動車の走行シーンを出すことで「リッチな人が乗車する車」と印象を与えやすくなります。
ブライダル系のCMであれば、女性の後に指輪のイメージが流れることで「婚約」や「結婚」「結婚式」などのイメージを連想しやすくなります。
クレショフ効果と類似した心理効果
プライミング効果
『プライミング効果』(※)とは、あらかじめ受けた刺激(情報)がきっかけになって、人間の脳の中で情報が連想・ネットワークされて、その後の判断や行動に無自覚の中で影響を及ぼす心理的効果のことです。
取得した情報がきっかけとなって、頭の中で情報が紐づくのが類似した点と言えます。
※『プライミング効果』の詳細については、こちらのページをご覧ください。
あらかじめ受けた刺激によって、その後の判断や行動が無意識に影響される心理的効果であるプライミング効果。メカニズムと活用例、注意点やアンカリング効果との違いについて解説しています。
文脈効果
『文脈効果』とは、文章を理解するために、自身の知識や経験から補足情報を得て意味を連想させる心理事象のことです。
『クレショフ効果』は2つの「映像や画像」といった情報がトリガーとなり関連性を連想しているのに対し、『文脈効果』では特定の情報や周囲の状況をもとに自身の知識や経験といった脳内記憶が紐づくことで、対象となるモノの意味合いが変化する点が異なります。
クレショフ効果のメリットと注意点
『クレショフ効果』には、受け手側が「関連性」を連想することで、商品やサービスの知名度や認知度が高まる、購買意欲が高まるなどのポジティブなイメージを持つ可能性が高まります。
そのためには、発信する情報次第で、逆にネガティブな印象を植え付けてしまうケースもあるので、打ち出し方などの細部にまで気を配る必要があります。
また、印象を連想させる心理効果であるため、受け手に「どんなイメージを持って欲しいのか」を具体化しなければ、曖昧な表現をしてしまうと伝わらなかったり、誤解を招いたり不快に感じさせることもあるため、注意して活用することがポイントです。
まとめ
前後のつながりのない画像や映像を無意識に関連付ける『クレショフ効果』。
商品やサービスの知名度や認知度が高まる、購買意欲が高まる効果が期待できることから、マーケティングや販売促進分野で大きく効果を発揮する心理事象ですが、使い方によってはネガティブなイメージを植え付けてしまうリスクもあるため、情報の受け手である消費者などの立場に立った視点で、誤解や不快感を招かないようなイメージ表現を行うことが求められます。
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