賞賛や報酬などの外発的な刺激によって、やる気やモチベーションが高まる『エンハンシング効果』。
作用する2つの要因、対照的な効果と類似した効果、ビジネスシーンにおける活用例、効果を高めるためのポイントなどについて解説しています。
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『エンハンシング効果』とは?
賞賛や報酬などの外発的な刺激によって、やる気やモチベーションが高まる『エンハンシング効果(Enhancing Effect)』。
別名『賞賛効果』とも呼ばれる『エンハンシング効果』は、自分の外側からの「動機付け」をきっかけにして、自身の中から意欲が湧いてくる心理作用を意味しています。
つまり、何らかの「外発的動機付け」によって「内発的動機付け」が高まり、モチベーションが上がる心理作用のことを指します。
ちなみに、エンハンシング効果と真逆な心理作用は『アンダーマイニング効果』と呼ばれています。以下で解説しています。
「金銭報酬や賞賛が行動を促す」例
イメージしやすい例としては、親からお小遣いをもらえたり、褒められることをきっかけに興味を持つようになり、子どもが熱心に勉強するようになる、というケースです。
金銭報酬や賞賛が「外発的動機付け」となり、それらをきっかけに興味を持つ=「内発的動機付け」ようになって、モチベーションが高まり行動を促すようになる、というメカニズムです。
小学生を対象にした賞罰実験
『エンハンシング効果』の実証実験としては、1925年に発達心理学者であるエリザベス・B・ハーロック 氏 が報告した「賞罰実験」が知られています。
実験内容としては、小学生たちを3つのグループに分け、それぞれグループごとに対応を変え、算数のテストを5回行いました。
- A:テストのたびに褒める
- B:テストのたびに叱る
- C:何も指摘しない
この結果は、以下の通りです。
- A:71%の生徒の成績が上がった
- B:2回目は20%の生徒の成績が上がったが、次第に成績が下がった
- C:2回目は5%の生徒の成績が上がったが、その後は変化が無かった
褒められ続けたAグループは、テストを行うたびにやる気が高まり、成績が上がりました。
一方、叱られ続けたBグループは、初めは叱られないように努めるものの、その後も叱られ続けると意欲が低下しました。
この実験結果から、「叱る」よりも「褒める」方がポジティブな効果が生じることが明らかになりました。
『エンハンシング効果』が作用する要因である「2つの動機付け」
『エンハンシング効果』という心理作用に必要なのが、「外発的動機付け」と「内発的動機付け」です。
『外発的動機付け』
『外発的動機付け』とは、外部から与えられる動機付けのことです。
「報酬を与えられる」「〆切やノルマ・罰則を設けられる」「第三者から褒められる」「評価をされる」など、他者からの干渉によって発生するものが例として挙げられます。
『外発的動機付け』のデメリットは、次第に「金銭的報酬を得られる」「褒められる・賞賛される」ことが目的となってしまうため、それらが得られないとモチベーションが低下するようになってしまうという点です。
『内発的動機付け』
『内発的動機付け』とは、好奇心や探求心、向上心など、本人の内面から発生する動機付けのことです。
「もっとうまくなりたい」「スキルアップしたい」「時間を忘れて取り組みたい」という、やりがいや興味などの自発的な意欲が例として挙げられます。
『アンダーマイニング効果』と『ピグマリオン効果』
『エンハンシング効果』に関連する心理作用として、反対の効果を意味する『アンダーマイニング効果』と、類似する『ピグマリオン効果』があります。
対照的な『アンダーマイニング効果』
『エンハンシング効果』とは逆に、すでに「内発的動機付け」で活動しているのに、新たに「外発的動機付け」を加えることで、モチベーションを削いでしまう心理作用を『アンダーマイニング効果』と呼びます。
やりがいや満足感を得るために自発的に行動している人に対して、例えば金銭的報酬やノルマを与えることによって「内発的動機付け」が失われ、金銭的報酬に目的がすり替わってしまう現象を指します。
※『アンダーマイニング効果』の詳細については、こちらのページをご覧ください。
やりがいや満足感を得るために自発的に手掛けていた行為に、金銭といった物質的な報酬などを与えてしまうことで、モチベーションを削いでしまう『アンダーマイニング効果』。ビジネスシーンで発生する要因や具体的な影響、予防策について解説しています。
類似する『ピグマリオン効果』
類似した心理事象に『ピグマリオン効果』があります。
『ピグマリオン効果』とは、「他者から期待を受けることによって、学習や業務の成果が高まる」という心理現象のことです。
例えば、上司が期待をかけて指導すると、部下はその期待に応えようと思いモチベーションが上がり、一生懸命に取り組むようになります。
その結果として、成長につながって良い業務成果が出るようになることが期待できるようになります。
「外発的動機付け」によってモチベーションを高める点、対象よりも目上の立場の人間から期待されることで、より効果を発揮するという点、そして「褒め過ぎ」に注意する点が『エンハンシング効果』と共通しています。
※『ピグマリオン効果』の詳細については、こちらのページをご覧ください。
期待を受けることによって、学習や業務の成果が高まる『ピグマリオン効果』。ビジネスシーンでの活用例と混同されやすい心理効果、注意すべきポイントについて解説しています。
ビジネスシーンにおける活用例
この『エンハンシング効果』は、マーケティング(販促)や企業内での人材マネジメント、カスタマーサポートなどで活用することができます。
マーケティング(販売促進)
マーケティング(販売促進)でも、BtoB(企業対企業取引)であれば割引、BtoC(企業対消費者取引)であればクーポン発行をきっかけに、取り扱い商品・サービスを購入・導入してもらい、利活用する中で「良さ」や「メリット」を享受することで、継続購入(リピート化)につながる可能性が生じるようになります。
マネジメント
従業員の業務パフォーマンスは、本人の能力のほかに「動機付け」が重要になります。
人事評価やボーナスなどを「外発的動機付け」にしてしまうと、一時的にやる気が出たとしても長続きはしません。
それよりも、仕事自体に興味や関心を持たせて、打ち込むことに対する充足感を知るようにしたり、同僚と協力・切磋琢磨することに意義を感じるようになることの方が効果的です。
マネジメントする際には、『エンハンシング効果』をうまく活用し、「2つの動機付け」によってやる気を引き出すような組織風土を構築することが求められます。
カスタマーサポート
ほかにも、顧客の期待に沿ったサポート(外発的動機付け)を展開すれば、不安や問題を解消し好印象を与えることができるので、「今後も使い続けよう」と内発的動機付けが作用しやすくなり、継続利用・契約やブランディングに影響を与えることにつながります。
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この続きでは、『エンハンシング効果』を高めるための4つのポイントなどについて解説しています。
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