「Quality(品質)」「Cost(費用)」「Delivery(納期)」の関係性をあらわす指標である『QCD』。
派生語・関連語との違い、構成する3つの要素のどれを優先すべきか、理想の考え方について解説しています。
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『QCD』とは?
『QCD』とは、「Quality(品質)」、「Cost(費用)」、「Delivery(納期)」の頭文字を並べた、3つの関係性をあらわす指標のことです。
- Quality(品質:製品やサービスが使用目的を満たしている度合い)
- Cost(費用:製造から納品までにかかる費用)
- Delivery(納期:製品やサービスを発注元へ届けるまでの期間)
この『QCD』は、1914年にアメリカの A.H.チャーチ 氏 が提唱し、モノづくり・製造業で用いられ、1960年代後半から日本に普及し、今ではIT業界をはじめ多くのビジネスシーンで用いられている考え方です。
元々使われていたモノづくり・製造業では「より良い製品を満足できる価格で希望する納期までに届ける」ことが求められます。
言い換えると「より良く、より安く、やり早く」顧客へ提供する、ということです。
そのため、「Q(クオリティ:品質)→C(コスト:費用)→D(デリバリー:納期)」の順に、重要度が示された考え方になっています。
3つの要素のうちどれを優先すべき?
もともと『QCD』は、「品質:クオリティ」が最優先される考え方です。
なぜ「品質」が最重視されるかというと、顧客へ納品する商品やサービスに品質不良が生じた場合、「費用」や「納期」にも悪影響を与えてしまうからです。
製造業において不良品を出荷してしまうと、最悪の場合、納品先・ユーザーを命の危険に晒してしまうことになってしまいます。
とはいえ、例えばシステム開発の場合は命の危険とまではいかないまでも、納品するシステムの品質不良がユーザーに不利益を与えることは同じです。
バグだらけの低品質なシステムを納品してしまえば、自社・顧客双方に不利益を招いてしまいます。
そのため、『QCD』においては「費用」や「納期」よりも「品質」を重要視しているわけです。
品質基準をクリアすることは、追加「費用」の発生や大幅な「納期」遅延を防止する、という役割も果たしています。
※業務経験の中で遭遇した「納期」と「クオリティ(品質)」のどちらを優先すべきか?に関する実例については、こちらの記事をご覧ください。
支援会社での実体験をベースに『現場レベル』で納期が遅れてしまう理由と、「納期」と「クオリティ」の関係性をあらわす指標である『QCD』、「納期を遅らせてでもクオリティを優先させるべきか?」に対する最適解と納期を遅らせずに最高のクオリティで納品する方法について解説しています。
とはいえ、「3つの要素のうち、どれを優先するかは状況による」というのが実際のところなのではないでしょうか。
以下で、それぞれを最優先した際にどんなことが発生するのかを掘り下げてみます。
「Quality(品質)」を最優先にすると・・・
言わずもがな、「Quality(品質)」が低いと商品やサービスは売れません。
ですが、品質を高めるために高性能な設備を導入したり、検査項目を増やすと、製造・検査のコストが上がり利益を圧迫することになります。
また、完成品を出荷するまでに時間がかかってしまうため、クライアントから要求された納期を守る難易度も増すことになります。
⇒「Quality(品質)」を最優先にすると・・・「Cost(費用)」アップ、「Delivery(納期)」を守るのが厳しくなる。
「Cost(費用)」を最優先すると・・・
「Cost(費用)」を優先する場合、発生するコストを下げるために、設備メンテナンスの頻度を減らし、検査基準を緩めるケースが考えられますが、そうすると「品質」が低下するリスクが高まってしまいます。
「品質」が低下すると、仮に「納期」が守れたとしても納品後に不具合が生じて交換したり作り直すケースが生じてしまうため、販売商品やサービスだけでなく、企業に対する信頼性にも悪影響を及ぼすリスクがあります。
⇒「Cost(費用)」を最優先にすると・・・「Quality(品質)」が低下するリスクが高まりやすくなり、商品やサービス、企業に対する信頼性が低下する。
「Delivery(納期)」を最優先すると・・・
「Delivery(納期)」を優先する場合、製造・制作工程に不備が生じたり、その不備を見落とすリスクが高まりやすいので、結果的に「品質」が低下する、また納期を短縮しようとして設備増強や人員を確保するためのコストが発生しやすくなります。
⇒「Delivery(納期)」を最優先にすると・・・「Quality(品質)」が低下するリスクが上昇しやすくなり、「Cost(費用)」も高まる。
派生語・関連語との違い
近年では、その時代ごとに企業活動に求められる、さまざまな要素を『QCD』に追加した考え方が広まっています。
代表例としては、以下の通りです。
QCDS
「Safety(安全性)」や「Service(顧客への対応)」を追加した『QCDS』。
どれほど高いレベルの『QCD』を兼ね備えた製品・サービスであったとしても、その生産・開発段階で人的被害が発生してしまえば、その製品やサービスは「品質が良い」とは言えません。
生産・開発現場の安全性を担保し、従業員の「Safety(安全性)」を確保することは企業活動において大前提と言えます。
また、製品やサービスを販売した後の顧客へのサポート体制は、顧客満足度が高まるという点でも有益かつ重要な要素です。
QCDE
『SDGs』という「持続可能な開発目標」の広がりもあり、企業活動においても「Environment(環境への配慮)」は一層無視できないものになっています。
一企業も環境へ配慮し、循環型社会を形成するために取り組みを強化することが求められています。
QCDF
『QCD』に「Flexibility(柔軟性)」の要素をプラスするのが『QCDF』。
DX化やグローバル化など、刻々と変化するビジネスシーンに柔軟に対応することが求められていることから、ニーズへ柔軟に対応するという意味の「Flexibility」が注目されるようになっています。
ほかにも・・・
- 『QCDSE』・・・Sは「Safety(安全性)」、Eは「Environment(環境への配慮)」
- 『QCDSM』・・・Sは「Safety(安全性)」、Mは「Moral(モラル:コンプライアンス強化など)」
- 『QCDRS』・・・Rは「Risk(リスク:リスク評価)」、Sは「Service(顧客への対応)」
- 『QCDSME』・・・Sは「Safety(安全性)」、Mは「Moral(モラル:コンプライアンス強化など)」、Eは「Environment(環境への配慮)」
5S活動
『5S活動』とは、『QCD』の管理・向上に効果的なフレームワークのことです。
「Seiri:整理」「Seiton:整頓」「Seisou:清掃」「Seiketsu:清潔」「Shitsuke:しつけ」それぞれの頭文字の「S」をとった言葉で、生産性と品質を向上させる効果のある管理手法として知られ、『QCD』と密接な関係があります。
例を挙げると、整理整頓できていない職場においては、必要な道具や部品を用意する時間を要するため、「Delivery(納期)」の遅れが生じることも。
また、『5S』が徹底されていない職場では、事故や商品・サービスの不良率が高くなるため、「Cost(費用)」がかさみます。
そして、清潔さを欠く職場で作られた商品(製品)には、ホコリやゴミが付着し、「Quality(品質)」に悪影響を及ぶリスクが生じてしまいます。
『QCD』による生産管理を実施する際には、『5S(活動)』についてもチェックすることで、より生産性を高めることにつながります。
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この続きでは、『QCD』の理想の考え方などについて解説しています。
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