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批判的思考(クリティカル・シンキング)とは?
批判的思考(クリティカル・シンキング)とは、先入観や固定観念にとらわれずに、健全な批判的精神に基づいて多角的・論理的に考え、本質を突き止める思考を意味しています。
「クリティカル」を日本語訳すると「批判的」となることから、物事や事柄を否定的に考えるという印象を受けるかと思いますが、そもそも「批判」の「批」は事実を突き合わせる意味、「判」は見分けて定めるという意味があり、その2文字で構成される批判的思考とは、①物事や情報を分析し、②その情報を客観的に把握、③正確に本質を理解するための考え方と言えます。
これはアカデミックな思考ではなく、ビジネスシーンにおいて最適解を見つけるためにも用いることができます。
いつから用いられるようになったのか?
この『批判的思考(クリティカル・シンキング)』は、1930年代のアメリカの教育学において主張されはじめ、1960年代の教育の現代化に伴い注目されるようになったとされています。
日本においては、1970年代に現:東京学芸大学名誉教授・創価大学名誉教授である井上 尚美 氏らによってその重要性が説かれたことが契機となっているようです。
なぜ『批判的思考(クリティカル・シンキング)』が必要なのか?
なぜ『批判的思考(クリティカル・シンキング)』が必要なのかというと、「今日まで価値のあったものが明日も価値があるとは限らない」変化の激しい現代において、前例や慣習を踏襲していくだけで良いというわけにはいきません。
さらに我々は無意識のうちに『認知バイアス』(※)の影響を受けて非合理な選択や決断をしてしまいがち。影響を受け続けることで、イノベーションやクリエイティビティに必要な創造的思考を阻害することにもなってしまいます。
そのため、「なぜ?」「どうして?」「今必要なことなのか?」「自分が今やるべきことは?」といったことを自らが思考し続ける必要があります。
適切にその時々のタイミングで、物事や事柄の本質を考え抜く『批判的思考(クリティカル・シンキング)』が必要になるというわけです。
※認知バイアス:直感や過去の経験に基づく先入観によって物事の判断が非合理的になり、偏った見方をしたり、ありのままに捉えることができなくなるバイアス。
『批判的思考(クリティカル・シンキング)』のメリット
『批判的思考(クリティカル・シンキング)』を用いることで、以下のようなメリットを享受できることが期待できます。
物事や事柄の『本質』を見極められるようになる
批判的思考(クリティカル・シンキング)とは、「どうしてこうなるのか?」「本当にこの考え方で良いのか?」という批判的、客観的に疑問を持ち物事や事柄を考え抜くことです。
繰り返して思考をし続けることで余計なものがなくなりブラッシュアップされ、結果、本質に近い最適な結論に辿り着くようになります。
『矛盾』や『漏れ抜け』を抑制できるようになる
批判的・客観的に疑問を持つ姿勢は、矛盾や漏れ抜けの洗い出しができるようになります。明らかになったそれらを一つ一つ解決することで内容が適正になり、正しい結論を導き出すことが可能になります。
意思決定にかかる時間や労力を短縮することができる
物事や事柄を懐疑的に捉えることで、検討すべき課題を掘り下げることが可能になります。
課題を掘り下げ解決し本質に近づくことによって、意思決定までの時間と労力に無駄を出さずに効率的に取り組むことができます。
論理的思考(ロジカル・シンキング)との違いとは?
クリティカル・シンキングと類似した言葉に「ロジカル・シンキング」があります。
ロジカル・シンキングとは?
ロジカル・シンキングとは、物事を根拠と結論に分類して、その論理的なつながりを捉えながら、問題解決に必要な要因の特定や解決策を練る際に有効な思考法です。「論理的思考」とも呼ばれています。
クリティカル・シンキング(批判的思考)との違い
●ロジカル・シンキング(論理的思考):物事を根拠と結論に分類して、その論理的なつながりを捉えながら、問題解決に必要な要因の特定や解決策を練る際に有効な思考法。
●クリティカル・シンキング(批判的思考):先入観や固定観念にとらわれずに、健全な批判的精神に基づいて多角的・論理的に考え、本質を突き止める思考法。
ロジカル・シンキング(論理的思考)は「物事や事柄を分類・積み上げて、論理的に解決策を練る」思考法なので、「疑う姿勢を持って本質を捉えようとする思考法」というクリティカル・シンキング(批判的思考)とはその点で異なります。
とはいえ、相反する思考法かというとそうではなく、クリティカル・シンキングを行う際にロジカル・シンキングを活かす、もしくは逆のケースも可能です。
批判的思考(クリティカル・シンキング)を行う際に必要なこと
批判的思考(クリティカル・シンキング)には3つの観点が必要となります。
事前に『目的』『ゴール』を明確にする
「何のために思考するのか」を事前に明確にしておくことがポイントです。
思考するそもそもの『目的』や『ゴール』を定めておかないと、思考する中で「何のために思考しているのか」と目的やゴールを見失いがちになります。また、明確にしておかないと、部分的な検討や意味のない課題の検討に終始してしまうことにもなりかねません。論点がブレないよう意識づけをすることが必要になります。
思い込みや思考グセがある前提を理解する
人間には、それぞれの価値観や思い込み、固定観念や偏見などの思考のクセがあります。誰もが思考するうえで、それらの影響を受けてしまうことを前提として理解しておくこともポイントとなります。
そして、その前提を踏まえたうえで、何事もそのまま鵜呑みにせず、他者の意見を尊重しつつも、客観的な視点・客観的な事実をもとに「何が正しいのか」を見極めることが求められます。
常に問い続ける
思考し続ける・考え抜く中で、障壁に向き合ってしまうと思考の途中で投げ出してしまったり、結論が出た時点で思考をストップしてしまうことがあります。
途中で投げ出したり結論が出て「はい、終わり」となるのではなく、「なぜそうなるのか」「果たしてその結論が最適なのか」といった問いを止めず思考を続けることで、本質に辿り着く可能性が高まるはずです。
批判的思考(クリティカル・シンキング)の進め方
目的やゴールの明確化
批判的思考(クリティカル・シンキング)を行う際には、まず目的(イシュー)やゴールを明確に設定し、「何をしたいのか?」「どんな課題を解決したいのか?」「どうなっているのが理想的なのか?」を明らかにすることが大切です。
現状を分析してギャップ・課題を洗い出す
明らかにした目的や設定したゴールへの達成に向けて現状を分析して、目的やゴールとの間にどの程度の乖離(ギャップ)が生じているのか、課題を洗い出す必要があります。
ギャップを埋める・課題を解決するアクションプランを策定する
生じている乖離を埋める・課題を解決するための具体的な方法、アクションプランを策定します。
批判的思考(クリティカル・シンキング)の活用例
新規事業の立案
ビジネスシーンにおいての活用例としては、新規事業の立案が挙げられます。
新規事業を起こす場合、まだ解決されていない消費者が抱える不満や市場の課題を見つけ、その解決法を考えるシーンが想定されます。
そんなシーンの場合、表面的な事象をなぞるのではなく、「なぜそんな不満を抱えているのか?」「その課題が発生しているのか?」を深掘りすることが求められます。そんな時に『批判的思考(クリティカル・シンキング)』を活用することができます。
既存の業務プロセスの改善
ビジネスシーンでは、ほかにも既存の業務プロセスの改善が挙げられます。
目先の見直しだけだと、時間が経過すると同じような課題が発生する可能性があります。そのため、課題を明確にする・事象を深掘りするなどの抜本的な解決に向けたアクションが求められます。そこで『批判的思考(クリティカル・シンキング)』を用いることで、課題などの深掘りがしやすくなり、高い精度の課題解決ができるようになる可能性が高まります。
組織の再構築
複数人で構成される組織。この組織の再構築の際にも『批判的思考(クリティカル・シンキング)』を活用することができます。
組織全体として・もしくは構成する個別メンバーごとの目指すべき目標を定義し「どういった組織が望ましい姿なのか?」を設定したうえで、抱える課題を深掘りし解決していく。
都度、「本当にそれで良いのか?」と問い続けることで、より良い組織を再構築できるようになるはずです。
最後に
先入観や固定観念にとらわれずに、健全な批判的精神に基づいて物事や事柄を多角的・論理的に考え、本質を突き止める考え方である『批判的思考(クリティカル・シンキング)』。
もちろん、マーケティングの領域にも活用できる思考法です。
用いる際の注意点としては、「疑う姿勢を持って本質を捉えようとする思考法」というのは、あくまで自身の思考に対して「本当にそれで良いのか?」と批判的・懐疑的に疑いの目を持つことであって、自身の人格を否定することでもありませんし、他者の人格を否定するものでもありません。
その点に留意しつつ、『本質』を突き止めるために「重箱の隅をつつくかのような」論点のズラしを避けるよう、取り組んで身に付けていくべき思考法と言えます。
よって、年代問わず仕事において広い領域で役立つことから、職種や業種、また社歴を問わずクリティカルシンキング研修を実施する企業も多いです。
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