『マーケティング職』『マーケター』は人気ですが・・・
転職市場でも人気職種の1つである『マーケティング職』『マーケター』。
なのですが、『事業会社』のマーケターに転職するか、『支援会社』のマーケターに転職するかによって求められる思考や業務の性質が異なります。
※このほかのマーケターへの転職に関する記事は下記で解説しています。
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事業会社のマーケティングとは?
まず、事業会社の定義ですが、『コトバンク』によると「事業経営を行なう会社」と定義されています。
もう少し掘り下げると、「営利を目的として自社で取り扱う商品やサービスを展開する企業」と表現できます。
その事業会社のマーケティングの定義ですが、自社が取り扱う商品やサービスの売上を増加させることを(最終)目的として、マーケティングに関連するさまざまな施策を、自社もしくは外部の支援会社と連携し実行する活動、と言えます。
事業会社のマーケターの業務とは?
事業会社のマーケターの業務範囲は会社によって異なります。
理由としては、その会社によって『マーケティング』の定義が異なるため、自ずと業務範囲もそれぞれ異なるからです。
※業務範囲が会社ごとによって異なることが、人によってイメージが違うことにもつながっています。
この点に関しては、こちらの記事をご覧ください。
事業会社によってマーケティングのイメージは異なります。他の職種にはブレが出にくいのになぜマーケティングにはいろいろなイメージを持たれてしまうのか。代表的なイメージ例をもとに分類し、定義しなければ起こってしまうリスクについて解説します。
とはいっても、フレームワークは共通しています。
共通するマーケティングの要素としては大きく『戦略』と『戦術』に分類できます。
戦略とは、目標を達成するためのシナリオを設計し、その目標達成に必要なリソース(資源)をどう最適に配分するかを決めることです。
戦術とは、戦略を実行するための手段(=施策)を決め実行することです。
※『戦略』と『戦術』については、こちらの記事をご覧ください。
「まず戦略を立てる」「戦術を実行する」。マーケティング界隈でよく耳にしますが、そもそも戦略・戦術とは何なのか、なぜ必要なのかを解説します。
戦略を決めて、その手段として戦術=施策を実行しますが、マーケティングの施策としては大きく分けて
『広報宣伝』『販売促進』『デマンドジェネレーション』の3つになります。
■広報宣伝
社外に企業や商品・サービスに関する情報を発信することで、知名度や認知度、ブランドイメージを向上させる活動を指します。
●テレビや雑誌、新聞やWebなどのメディアへ広告を出稿
●コーポレートサイトなどのオウンドメディアを運用
●新商品に関するプレスリリースを発信
■販売促進
自社の商品やサービスを知るきっかけを作る、購買意欲を促すための活動を指します。
●展示会にブースを出展する、自社で開催するセミナーを担当
●ノベルティや販促ツールを運用
■デマンドジェネレーション
自社の商品やサービスを拡販するために対象を定め、プロモーションを実施し見込み客(リード)を獲得し、獲得したリードの確度を上げ、属性や確度、意識フェーズごとにリードを分類するといった活動を指します。
●解析ツールを使ってWebサイトのアクセスなどのデータを分析
●Webなどに掲載するコンテンツを作る
●見込み客(=リード)を獲得する
これらの施策を実行していくわけです。
事業会社のマーケターの特徴をざっくりとまとめると・・・
●所属する事業会社によって、『マーケティング』の業務範囲や領域の線引きは多岐にわたりますが、共通して言えるのは「担当範囲が広い」。
マーケティングの戦略から戦術まで担当することが多いので、マーケティングの全体像を理解しやすい環境であると言えます。
●事業会社に所属して特定の商品やサービスに関するマーケティング活動を実施することから、一つの施策・プロジェクトが数年単位の期間となるのが一般的です。
つまり、継続性のある長期的なマーケティング活動となる傾向があります。
●また、事業会社に所属してマーケティング活動を実施するので『会社として』商品やサービスを販売することが求められます。
そのため、在籍する他の複数の組織・部署や担当者とのコミュニケーションや連携、調整が求められる傾向もあります。
●どの事業会社のマーケティングも、自社商品やサービスの売上拡大が目的となるので、成果としては、実行した施策がどれだけ売上に貢献したか、というのが最終成果となります。つまり、成果=売上となります。
事業会社のマーケティングのメリット/デメリットとは?
事業会社のマーケティングのメリット
●広く(浅く)マーケティングに携われる
まずメリットとして挙げられるのは、「広く(浅く)マーケティングに携われる」という点です。
自社が取り扱う商品やサービスの売上を拡大するために、どういった戦略を立案し、それに基づいた戦術(施策)を実施するのか、に広く関われるため、この点にやりがいを感じる方が多いかもしれません。
●新しいことに挑戦しやすい
次に挙げられるのは、「新しいことに挑戦しやすい」という点です。
多くの中小規模の事業会社では、マーケティングがまだ根付いていない傾向があるので、戦略をどう立てるか、どう戦術を実行するかという実績や経験値が社内で形式知として蓄積されていないことが多いため、自ずと新しいことを自ら開拓・構築することが求められるので、その点が良さなのかもしれません。
●ワークライフバランスがとりやすい(かも)
あとは「ワークライフバランスがとりやすい」という点です。
事業会社は総じてワークライフバランスがとれていることが多いので、そういった面での働きやすいかもしれません。
ですが、そんな事業会社の中でもマーケターだけは多忙を極めることもあるので、「社内でマーケだけやたら忙しい」ということになってしまうかもしれません。。
事業会社のマーケティングのデメリット
次はデメリットです。
●社内に『マーケティング』が定着していないケースが多いため、啓蒙しなければならない&理解されないことも
中小規模の事業会社では、まだまだマーケティング部門やマーケティング専門職が存在しないことも多いので、社内で『マーケティング』に対する理解が乏しいというケースがあります。
そのため、戦略を立てる際、施策を実施するたびに、社内の理解を得るための啓蒙活動が必要になることもあります。
また、理解がされていないため使える予算の制約が大きいこともあり、実施する施策のボリュームも小さくなるケースもあります。
●評価が正当でないことも
社内にノウハウや形式知が蓄積されていない、『マーケティング』に対する理解がなされていないため、マーケティング職のキャリアパスが存在しないことがあります。
それに相まって、マーケターとしての評価制度が確立されてなく、マーケティングとして正当でない評価を受けることも起こり得ます。
●マーケ以外に異動になる可能性も
事業会社では、ジョブローテーションの一環で職種を超えた人事異動が発生することがあります。
社内の人事異動で、セールスサポートなどの担当者がマーケに異動するなどのケースがあり得ますし、マーケティング担当者がフィールドセールスやインサイドセールスへ異動することもあり得ます。
そのため、自身の希望にそぐわないキャリアを歩まなければならない可能性もあります。
●『愛社精神』的なものがないと続かない
事業会社に所属する以上、自社が取り扱う商品やサービスの長期的な売上増に貢献していくので、商品やサービス、そして所属企業への「帰属意識」がないと続けていくことは難しいと言えます。
この「帰属意識」、『愛社精神』に近いものをどれだけ持ち続けられるかが在籍の長短に関わってきます。
事業会社のマーケターに求められるスキルや思考とは?
●突発的に発生する事象にも適応する力
担当する業務範囲が広くなりがちなので、マルチタスクが可能な懐の深さや適応力といったスキルが求められます。
また会社によっては、経営者などの『鶴の一声』で方針や施策内容が180度変わることもあり得るので、そういったことにも対応できる適応力が必要かもしれません。
●長期間、継続的に活動する意欲や我慢強さ
事業会社の場合、継続性のある長期的なマーケティング活動となる傾向があります。
BtoBのマーケティング施策というのはやってすぐ成果が出る性質のものではありません。そのため、長い期間にわたって継続的に実行する力やある種の『我慢強さ』が必要です。
●調整力や折衝力、言語化するスキル
施策を実施する、コンテンツや販促ツールを制作する際などで、マーケティング以外の複数の部署や担当者とのコミュニケーションや連携、調整が求められる傾向があります。そのため、社内のさまざまな部署・担当者に対する調整力や折衝力が求められます。
また、事業会社内で少数派(になりがちな)マーケティング部隊の発言権を勝ち取るため啓蒙活動や交渉なども必要になることもあり、社内政治に長ける力、そしてマーケティングがわからない人にわかってもらえるよう「わかりやすく言語化する能力」が求められる場合もあります。
最後に
下記の書籍にも書かれていますが、『マーケティング』への理解が乏しい会社ほど、マーケティングの専門家に対する要望は無闇に高くなりがちです。
成果を出すために必要な投資額や時間の見込みが甘くなり、無理筋な要求を突きつけられる恐れがあります。
さらに、成果に対する過剰な期待も持たれがちです。期待が大きい分、失望に変わると大きな摩擦が起きる要因にもなり、評価や処遇が後から大きく落ちるケースも散見されます。
『マーケティングの仕事と年収のリアル』(著)山口 義宏、ダイヤモンド社
これは事業会社にも支援会社のどちらにも言えるかもしれませんが、特に事業会社に所属するマーケターの場合、日々1つの企業に在籍して長期的に特定の商品やサービスに関するマーケティング活動を行うため、ある意味で逃げることができません。
仮に、経営陣やほかの部署などから理解を得られず、自身の実行する施策の成果も出ないとなってしまうと、針の筵(むしろ)となってしまいます。
そのため、他部署などと調整や折衝をし、マーケティングの理解を深めつつ自社の商品・サービスに合う『マーケティングの型』を見極め、戦略を描き戦術として実行することが求められます。
この『型』がハマれば相応の成果が出るはずなので、そうなればやりがいや充実感を感じながら取り組むことができます。
さらに事業会社の場合、特定の商品やサービスに日々継続的に向き合うことになるので、進める施策の成果を日々、肌で感じることができ、それが社内の評価、賞与や昇給にダイレクトに反映されれば、この点もやりがいを感じることができる大きなポイントとなります。
とはいえ、事業会社に所属するがゆえ、予期せぬ異動が発生することも考えられますので、そういった異動も、自身の人生の『いい経験』と捉えて(ある程度は)許容していく柔軟性も必要かもしれません。
長期的なキャリアプランという長い目で見つつ、柔軟性や我慢強さを持ち、日々、『自社のマーケティング』に向き合えれば、とてもやりがいを感じることができるのが事業会社のマーケティングだと言えます。
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