行動することで偶然発生した2つの別々の出来事の間に因果関係があると捉えることで、それ以降自発的に行動する頻度が増す『迷信行動』。
発生するメカニズムや種類、身近な例や向き合い方について解説しています。
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『迷信行動』とは?
迷信行動とは、行動することで偶然発生した2つの別々の出来事の間に因果関係があると捉えることで、それ以降自発的に行動する頻度が増す事象を指します。
この迷信行動は、いわゆる「縁起を担ぐ」「験(ゲン)を担ぐ」と呼ばれるものです。
ゲン担ぎで行ったことで良い結果が生じれば「思いが通じた」と喜び、逆に悪い結果が出たら「運が悪かった」「やり方・手法が間違っていた」と残念がります。
実際に、「ゲン担ぎ」の行為と発生する結果との間には因果関係はありませんが、一定以上の知能を有する生物はどこかで結びついていると思いたがる傾向があります。
実証した2つの実験
この『迷信行動』は、人間に限って起こる事象ではなく、ほかの生物でも起こるとされています。有名な2つの実験は以下の通りです。
スキナーの鳩
1つ目は、「スキナーの鳩」と呼ばれる実験です。
この実験は1948年にアメリカの心理学者であるバラス・フレデリック・スキナー 氏によって実施されました。
実験では、毎日数分間、空腹の状態のハトを実験用ケージに入れました。そして、ハトの行動に関わらず、ケージに取り付けられた給餌器から15秒の一定間隔でエサを出すように設定しました。
ある程度、時間が経過した後にハトの行動を観察すると、8羽のハトのうち6羽がエサが出てくるまでの間に、それぞれ特定の行動を繰り返すことが分かりました。
例えば、ケージの中で反時計回りにまわったり、ケージ上部の角に頭突きを繰り返したり、頭と体を振り子のように左右に振ったり。
ハトがあたかも「その行動が原因でエサが出てくると思い込んだ」かのように振る舞ったとスキナー 氏は考え、人間の『迷信行動』と同様のメカニズムで行われたとしました。
ガスリー&ホートンの猫
2つ目は、ガスリー 氏とホートン 氏が1946年に行った「ガスリー&ホートンの猫」と呼ばれる実験です。
箱の中央にポール(棒)をぶら下げて、どの方向にそのポールを傾けてもドアが開き、箱から出ることができる仕掛けを作り、さらにその箱の中に入れられたネコがポールを傾けると、設置したカメラのシャッターが切れて写真が撮影できるようにし、ネコがどのようにポールを傾けるかを記録できるようにしました。
その結果、最初の2回~3回の行動が終わると、特定の方向にだけポールを傾けるようになりました。ただ、傾ける方向や方法は個別のネコごとに異なっていました。
「スキナーの鳩」の実験のように、ネコも偶然うまくいった(と思える)行動があると、それが結果に結びついている(=正しい)と思い、その行動のみを繰り返すようになります。
その行動以外の方法を取らなくなったことから、ネコが「思い込み」によって行動するようになったと言えます。
迷信行動が発生するメカニズム
上述の「スキナーの鳩」や「ガスリー&ホートンの猫」の実験からもわかるように、何らかの行動に対して(偶然)良い結果・ご褒美が得られると(思い込むと)、それ以降その行動の頻度を高めるようになります。
バラス・フレデリック・スキナー 氏は「人間の行動は過去の行動の結果によるもの」としています。
つまり、「〇〇をしたら良い結果が出た」「△△をしたら損をした。もうやらない」という偶然の経験(偶発的随伴性)により思い込みが生じ、過去の結果に縛りつけられ、過去の行動以外の行動を行うことで生じる可能性から目を遠ざけてしまうことになるわけです。
さまざまな種類がある『迷信行動』
迷信行動には、『並列迷信』と『ルール支配行動』があると言われています。
並列迷信
例えば、4つのボタンのうち左から3番目のボタンを押せばコインを手に入れられるケースでは、多くの人は他のボタンを何度も押してから最後に3番目のボタンを押す傾向があります。
その際、コインの提示とは関係なく、たまたま近くでランプが点滅していると、ランプがついている時だけボタンを押したりします。
こういったように、行動と結果の関係が明確でない場合、すべての選択肢を選んでから結果につながる選択肢を選ぶことを『並列迷信』と呼びます。
ルール支配行動
例えば、「夜に爪を切ってはいけない」「朝出会うクモは縁起が良いから逃がす」など、自身が(偶然に)経験するものではなく、他者から社会的ルールとして与えられる行動指針を『ルール支配行動』と呼びます。
人間にとって身近な迷信行動の例
この迷信行動は、『迷信行動』と理解していなくても、人間誰しもが何らか行っています。
アスリートやビジネスマンのルーティン
ビジネスの成功者やスポーツ選手の中には「ゲンを担ぐ」ことを大切にする人が多くいます。
有名なのが元メジャーリーガーのイチロー選手。「バッターボックスで投球を迎える時の所作」のほかにも「毎朝カレーを食べること」「試合のある日の、起床から就寝までのルーティン」など、自身がやるべきことをやり続けるために、これらを習慣付けて続け、意志力とともに目標を見失わないメンタルを持ち続けたと言われています。
常に勝つか負けるかのシビアな世界に身を置く際、「ゲン担ぎ」はメンタル面で大きな役割を担っていると考えられます。
ある特定の行動をルーティンとして取り入れて定期的に行うことで、精神を落ち着かせ、モチベーションを高め良い結果を出すために取り組む。『迷信行動』のポジティブな働きを果たしている例と言えます。
ギャンブラーのジンクス
自身で勝敗をコントロールできないギャンブルなどの場面でも、迷信行動は頻繁に生じるとされています。
「試験にカツ」
試験前に「かつ」を食べたら合格できた経験があるので、それ以降、試験の前には必ず「かつ」を食べるようになった、というのも迷信行動の例として挙げられます。
流れ星に願い事をする
流れ星に願い事をして願いがかなった経験があるので、それ以降、流れ星を見るたびに願掛けするようになった、というのも例の一つ。
江戸時代に広まったアマビエ
新型コロナウイルスが流行した際、江戸時代に広まった「書き写すことで疫病の流行を防ぐご利益がある」アマビエをイラストに起こしてインターネットやSNS上にアップされたことが話題になりました。これも迷信行動の一つの例と言えます。
関西圏から広まった恵方巻
節分にその年の「恵方」を向いて無言で食べると運気が上がるとされる、関西圏発祥の恵方巻の文化も迷信行動の例の一つと言えます。
『迷信行動』との向き合い方
『迷信行動』によって一度構築された行動パターンを打ち消すための方法として、『消去』が挙げられます。
上述の「アスリートやビジネスマンのルーティン」であれば、「日々ルーティンを行っているがうまくいかない」という経験を繰り返し重ねることによって、「ルーティンをする→うまくいく」という結びつきをキャンセル(消去)するというもの。
とはいえ言うは易しで、実際に『消去』はなかなか難しいと言えます。
自分の中で「ルーティンをしてもうまくいかなった理由」を考えてしまいがちです。
『迷信行動』にはメリットもあります。迷信行動によって安心感を得たり、物事に対して前向きになれることもあるので、そもそも『消去』する必要がないというケースもあります。
ですが、「見せかけの因果関係」「根拠のない因果関係」にすがることで、本来行うべき努力を放棄してしまう、もしくは冷静な判断ができない状態に陥ってしまうリスク(デメリット)もあります。
迷信行動は、結果に対する原因とはなりません。ランダムな事柄は過去の事象から影響を受けないからです。
とはいえ人間は過去の経験や思い込みに縛られやすい生物です。
なので「成功体験」を捨てる、「迷信」や「思い込み」を取り払うためには、柔軟なメンタルや謙虚な姿勢、辛抱強さが求められます。
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