上げて落とす or 落として上げることで影響が大きくなる!?『ゲイン・ロス効果』

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ゲイン・ロス効果とは?

一貫した評価よりも途中で評価が逆転する方が印象などの影響が大きくなる

『ゲイン・ロス効果(Gain-Loss Effect)』とは、一貫した評価を受けるよりも、途中の段階で評価が逆転する方が、人の心に与える影響が大きくなるという心理事象です。

言い換えると、プラスの印象からマイナスへ、逆にマイナスの印象からプラスへ変化するほど、相手に与える影響が大きくなる、ということです。

ゲイン効果は印象が「上昇」すること、ロス効果は印象が「下降」することを指し、合わせて『ゲイン・ロス効果』と呼ばれています。

図解すると、以下のようになります。

ゲイン効果とは?

印象が「上昇」するゲイン効果

上司と部下を例にしてみると、部下が上司に対して感じる印象は、①プラスの評価を一貫して受ける(プラス → プラス)よりも、②マイナスの評価からプラスに転じる(マイナス → プラス)の方がプラスに感じやすい傾向があるとされています。

初めは否定的(マイナス)評価を受けて、後に好意的(プラス)評価に転じる方がより好印象を与えることができる、という効果です。
つまり、継続してポジティブな面を見せていた場合よりも、好印象を強く相手に与える傾向があるとされています。

ロス効果とは?

印象が「下降」するロス効果

一方、③マイナスの評価を一貫して受ける(マイナス → マイナス)よりも、④プラスの評価からマイナスに転じる(プラス → マイナス)の方がマイナスに感じやすいというものです。こちらの心理事象は『ロス効果』と呼ばれています。

ゲイン効果と反対に初めは好意的な評価を受けていて、後に否定的な評価に転じることで、よりマイナスの印象が強くなってしまう、という傾向があるとされています。

由来・発祥

アメリカの社会心理学者によって提唱された『ゲイン・ロス効果』

『ゲイン・ロス効果』は、アメリカの社会心理学者のエリオット・アロンソン氏とダーウィン・リンダー氏によって提唱されました。

女子大学生を被験者とした好感度の実験を行い、最初から最後まで肯定的な印象を与えるよりも、最初に否定的な印象を与えたうえで後に肯定的な印象を与える方が好感度が増すことが明らかになりました。

効果を発揮させるために必要な条件や注意点

用いるためには注意や条件が必要な『ゲイン・ロス効果』

『ゲイン・ロス効果』を発揮させるためには、条件や注意点があります。

同じカテゴリの事象で変化を与える

①同じカテゴリで変化を

例えば「時間にルーズ」と当初印象を持たれていたが、「待ち合わせに遅れない」「時間のコントロールが得意」という面を見せると印象が好転します。

これは「時間」という同じカテゴリ内で、「時間にルーズ→待ち合わせに遅れない、時間のコントロールが得意」という変化を与えたため発揮しましたが、「時間にルーズ→語学力がある」となったとしても、「時間」と「語学力」という異なる系統の事象であるため、効果が発揮しないということになります。

徐々に変化させる

②徐々に変化を

急に印象が180度真逆になってしまうような急激な転換は、効果が発揮せずに混乱を招いてしまう可能性があります。
ゲイン・ロス効果は、徐々に変化を促すことが発揮するポイントの一つとなります。

効果を用いる場面を見極める

③適した場面を見極める

ゲイン・ロス効果は、相手との継続的な関係が前提となります。

その場だけの単発のコミュニケーションの場合、例えばマイナスの印象をプラスの印象に転換させないまま終わってしまうからです。

ビジネスシーンでの活用例

人や商品の訴求時に

自身の評価を高める

①自身の評価を高める

『ゲイン・ロス効果』を用いることで、自身の評価を高める可能性が生まれます。

例えば、自身の有している知識やスキルを、関係性を築く中で徐々に出していくことで、相手によりポジティブな印象を与えることになります。最初にすべてをさらけ出してしまうと、その後のコミュニケーションの中でインパクトを与えづらくなってしまいます。

これは部下のマネジメント時にも有用です。前評判が高すぎると尻すぼみしてしまいますが、部下の良さを段階を踏んで他のメンバーに伝えていくことで、効果を発揮しやすくなります。

販売したい商品やサービスの訴求力を高める

②販売商品の訴求力を高める

例えば、自社の商品やサービスを導入するにあたってのメリットとデメリットがある場合、先にデメリットを伝え、その後メリットをより具体的に伝えることで効果を発揮しやすくなります。

『確証バイアス』が発揮するケースも

「ツンデレ」や「ギャップ萌え」と同義語ではないという見解も

『ゲイン・ロス効果』は、「ツンデレ」や「ギャップ萌え」と同義語と捉えることがありますが、ゲイン・ロス効果が必ずしも発揮しないと考えられます。

『ゲイン・ロス効果』ではなく『確証バイアス』が発揮されるケースも

確証バイアス』(※1)とは、無意識に自身にとって都合の良い情報だけを取得し、不都合な情報を避けるようになる心理傾向を指します。

人間には、自身がすでに持っている先入観や思い込み、仮説を肯定したい願望があります。
そのため、自身の先入観や思い込み、仮説が正しくないとしても、無意識のうちに合理的ではない判断をするようになりがちです。

※1:『確証バイアス』の詳細については、こちらの記事をご覧ください。

つまり、人間の心理は単純ではないため、最初のイメージや思い込みに判断が寄ってしまう『確証バイアス』が発揮するケースもあれば、最初のイメージが覆る『ゲイン・ロス効果』が発揮するケースもあるということです。

最後に

使いどころに注意が必要な『ゲイン・ロス効果』

「上げて落とす」は嫌われやすく、「落として上げる」は好かれやすい、という心理事象である『ゲイン・ロス効果』。

特に販売したい商品やサービスの提案時には用いることで効果を発揮しますが、使いどころを誤るとマイナスの印象を与えるだけに留まってしまうので、使用する場面を見極める必要があります。

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