調査や分析の対象となる集団から、無作為にサンプルを選ばないことで結果に偏りが生じてしまう『サンプリングバイアス』。
代表的な具体例と、回避する方法などについて解説しています。
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『サンプリングバイアス』とは、調査や分析の対象となる集団から、無作為にサンプルを選ばないことで結果に偏りが生じてしまうことです。
調査や分析をする対象の数が同じであっても、対象の属性が偏っていると結果は大きく変わってしまいます。
抽出したサンプル(標本)によって、データにバイアスが生じてしまい、誤差が起こってしまうわけです。
この『サンプリングバイアス』は、『標本抽出バイアス』や『標本の偏り』とも呼ばれています。
サンプリングバイアスの具体例
くじ引き
箱の中に入ったくじの総数と、当たりくじの数がわからない場合、正確に当たりくじの割合を調べるためには、すべてのくじを調べなければなりません。
ですが、くじの数が多いと、すべてを調べるのは現実的とは言えません。
そこで、くじの一部を取り出して、その中の当たりくじの割合を調べることで、全体の割合を推測するという方法を「標本調査」といいます。
この「標本調査」を行う際に注意しなければならないのが『サンプリングバイアス』です。
例えば「当たりくじ」の割合が10%のくじ引きがあるとします。
この時、この「10%」という割合を調べるために、くじを100回引いたとします。
引いたくじの中に「当たりくじ」が10個あれば、「当たりくじ」の割合が10%だと推測することができます。
ですが、「当たりくじ」が20個引けた場合だと「20%」、1個も引けなかった場合は「0%」ということになり、正しく10%という割合を推測することができなくなってしまいます。
街頭アンケート
「街頭アンケート」も、『サンプリングバイアス』が発生しやすい例の一つと言えます。
例えば、アンケート調査を実施する際、多くのテレビ番組では駅前などの「人通りの多い場所」で行われていることが多いのを見かけると思います。
「人通りの多い場所」が選ばれる理由として、効率良くアンケートを実施できることが挙げられます。
アンケートに協力してもらうために声掛けをしても、すべての人が協力してくれるわけではありません。
そのため、多くの回答者を得たければ、人の多い場所で実施することは当然と言えます。
そして、実際にアンケートの声掛けをする場合、明らかに急いでいる人には声をかけないのではないでしょうか。
ですが、特定の対象に絞ったアンケートでない限り、年齢や性別を問わずに、広く多くの人を調査の対象にすべきです。
つまり、アンケートを実施する人が、特定の人たちに対する調査を避けてしまうことで、無意識のうちに調査の対象から外れてしまうことになってしまい、総人口を代表していない対象から結果を導き出すことになります。
ほかにも、この街頭アンケートを「いつ・どこで」実施するかによっても、調査結果に偏りが生じてしまいます。
例えば「朝の駅前」で実施する場合、通勤・通学で駅を利用する人の割合が多くなり、駅をまったく利用しない人は調査の対象外となってしまいます。
すると、調査対象に含まれていない人たちに共通する意見があったとしても、その意見は調査結果には反映されなくなってしまうのです。
世論調査
「世論調査」も、『サンプリングバイアス』が発生しやすい例と言えます。
有名なのが、アメリカ合衆国の中西部における主要な新聞であるシカゴトリビューン紙が、1948年に実施した大統領選挙に関する調査です。
電話調査に基づいて、共和党のトマス・E・デューイ 氏が次期アメリカ大統領になると予想しましたが誤報となり、大失態を招くことになってしまいました。
電話調査した当時、そもそも電話を購入できたのは特定の富裕層だけで、かつ富裕層の多くが共和党とデューイ 氏の支持者であることを考慮していなかったため、サンプルに大きな偏りが生じてしまったことが原因として挙げられます。
自動車排ガスとぜんそく
例えば、自動車の排ガスとぜんそくの関連性を調べる場合、サンプルとして抽出された人々が、比較的排ガス濃度の高い国道周辺に住む集団に偏ったとすると、自動車の排ガスが日本全体のぜんそくの発生に与える影響を正しく評価・分析できなくなってしまいます。
ソーシャルメディア(SNS)
最近では、SNS上でもアンケート調査が行われることが多くなっています。
ですが、SNS上で実施された調査結果の信頼性に関しても、疑いの目を向ける必要があります。
理由としては、SNS上のアンケートに回答した人の多くは呼びかけた調査者のフォロワーである可能性が高いため、調査者と類似した思考であったり、調査者が賛同する意見を答える可能性も高くなります。
また、1人の回答者が複数のアカウントで回答している可能性もありますし、調査者自身が別のアカウントを使って回答している可能性も否定できません。
これらに対する疑念を完全に払しょくする方法は無いと思われます。なので、どれだけ多くの回答を得られたとしても、『標本の偏り(サンプリングバイアス)』を排除することはできないのです。
「今どきの学生は・・・」人事採用のシーン
例えば、自社の採用活動に参加した学生たちが「今の学生全体の傾向」であると考えてしまい、「これまで採用した学生と比較すると今の学生の質は劣っている」と考えてしまうことも『サンプリングバイアス』に陥った例の一つと言えます。
相対的に検証せず、また裏付ける数値などの客観的事実が無い中で、自身が接した「今現在の学生」(サンプル)だけで判断するのは、ただの個人の感想・思い込みに過ぎません。
サンプリングバイアスを回避する方法とは?
この『サンプリングバイアス』を回避するためには、サンプル対象を常に無作為に選択することで可能となります。
ですが、「常に無作為にサンプルを選択する」ことは、現実的とは言えません。状況などによって結果的に調査者・分析者自身が対象を選定する可能性はゼロにはなりません。
例えば、飲食店を情報の偏りなく探そうとして、SNSやグルメ口コミサイトを見たとしても、それらの情報には「SNSやグルメ口コミサイトの利用者のみ」の意見というバイアスが生じているわけです。
つまり、『サンプリングバイアス』を完全に回避することは難しいので、「少しでも影響を受けないよう注意を払う」のが現実味のある方法だと考えられます。
最後に
調査や分析の対象となる集団から、無作為にサンプルを選ばないことで結果に偏りが生じてしまう『サンプリングバイアス』。
サンプル調査(標本調査)自体が、「木を見て森を見ない」調査方法になるので、サンプルを無作為に抽出するのは大前提の条件になります。
『サンプリングバイアス』に陥らないよう、調査や分析の際にはサンプル抽出には注意を払うことが求められます。
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