~経営・マネジメント層も知っておきたい~ 企業組織の機能不全を招く!?『ピーターの法則』

『ピーターの法則』とは?

『ピーターの法則』とは?

『ピーターの法則』とは、企業など組織集団における法則です。

イメージとしては、それまではプレイヤーとして優秀な成績を上げていた人が管理職に昇進したら、求められる活躍ができなくなってしまう。
そんなメンバーが組織内に増え続け、その組織全体が無能な集団になってしまう
、というものです。

昇進し続けてステージが変わることで、活躍できなくなってしまう。
その結果、「組織が無能化し機能不全を起こしてしまう」というのがピーターの法則です。

イメージとしては・・・

『ピーターの法則』のイメージ

一般的に、組織に所属しその中で成果を出すと昇進します。昇進すると求められる役割・スキルも変わります。

上述の企業ビジネスに当てはめてみると以下のようになります。

①プレイヤーとして優秀な売上成績を上げる

②成果が認められ管理職に昇進しても管理職としての成果が出せない

③とはいえ、組織としてはまだ限界に達していないメンバーによって機能する

④次々とメンバーが限界に達した結果、組織が機能不全を起こす

いくらプレイヤーとして優秀でも、管理職でも同じようにパフォーマンスを発揮できるわけではありません。
そのため、このステップを踏んでしまうと、最終的には企業組織の機能不全を招いてしまうのです。

※私自身も、企業向けのテクニカルセミナーや文献書籍を企画販売する会社に勤めていた際に③の段階と同じような現象が起こり、「あと数年したら社員のほとんどが管理職になってしまうのでは?」「大丈夫か、この会社?」と疑問を抱いた経験があります。

会社組織は、このピーターの法則が成立しないようにメカニズムを理解し、対処する必要があるといえます。
なぜなら、組織の機能不全による市場での競争力低下だけでなく、当人や関連メンバーなどのモチベーションの低下や退職による企業体力の減衰を招く結果になってしまうからです。

『ピーターの法則』の由来

『ピーターの法則』の由来

この『ピーターの法則』は、アメリカの南カリフォルニア大学の教授であるローレンス・J・ピーターと小説家のレイモンド・ハルの共著『ピーターの法則~創造的無能のすすめ~』で提唱されました。

・組織において人は自身の限界まで出世する
・無能な人はそのポジションに留まり続け、有能な人も限界まで出世したポジションで無能化してしまう
・組織活動は、まだ限界に達していない人たちによって機能する
・最終的に、組織は無能化してしまう

といった内容が記されています。

『ピーターの法則』によるデメリット

『ピーターの法則』によるデメリット

『ピーターの法則』が企業組織に引き起こすデメリットとしては下記の通りです。

生産性の低下および業績の悪化

プレイヤーとして優秀な成績を上げていた人が管理職に昇進したら、求められる活躍ができなくなってしまう。
当人に適していない役職への昇進によって、企業にとっては生産性が低下し業績の悪化へつながってしまいます。

人材流出のリスクが増加

『ピーターの法則~創造的無能のすすめ~』では『創造的無能』という表現が用いられています。
『創造的無能』とは、昇進して無能化してしまうことを避けるために、昇進しないように業務をするリスクを指します。

この『創造的無能』に陥ってしまうと、本来の状態ではないため当人にとって大きな負担になります。
昇進を避けるために業務的活躍を抑えるわけですから、昇給にも関わってきます。
結果、モチベーションが下がり退職、という選択肢が浮かぶことになってしまいます。

人事評価制度の形骸化

『ピーターの法則』が引き起こされ続けると、いわゆる「無能な上司」という人材が組織内で増えてしまいます。
そうすることで、部下に当たる人材への評価も正当性や根拠が乏しいものとなり、無能な役職者がさらに増えることにつながります。

結果として、人事評価制度が本来望まれる機能を発揮しなくなり、組織機能が低下することになります。

『ピーターの法則』の回避策とは?

『ピーターの法則』の回避策とは?

『ピーターの法則』によって「無力化した人材」が発生・増加を防ぐための対策としては下記の点が挙げられます。

客観的な指標のある評価制度

フィールドセールスの場合であれば、成果=売上と数値で明確に判断できることが多いので客観的に定量評価ができますが、それ以外の職種の場合、中小規模の企業では評価の判断基準が曖昧なことが多く、その人材の有能さが主観的に判断されるケースもあります。

つまり、主観ではなく客観的な指標を用いた評価制度でなければ、『ピーターの法則』で発生した「無能な上司」に評価されやすい業務をする部下が増えてしまい、企業組織として期待する業績を上げることにはつながりません。

中小規模のBtoB事業会社のマーケティング職の場合は、比較的には定量的評価が採用されるケースが多いといえますが、評価・昇進制度が長期的な視点で構築されていない場合が多く、昇進が組織内で頭打ちになってしまうことが早いといえます。

そのため、根本的な自社ビジネスにおけるマーケティングと商文化(※)への理解が必要になります。

『BtoBマーケティングの商文化』に関しては、下記の記事をご覧ください。

ポジションごとの役割や要件定義

『客観的な指標のある評価制度』と併せて、ポジションごとに求められる役割や要件を定義することが求められます。
役割や要件が明確になっていれば、当人自身もすでにクリアしている要件なのか、これからクリアすべきなのかが自覚できるようになります。

昇進する前にポジションに応じた能力を獲得できる教育・研修制度を設ける

昇進後の新たなポジションに求められる能力を、昇進前に研修などで獲得できれば「無能化」は回避できます。
教育・研修制度とともに、新たなポジションですでに活躍している人材がフォローするなどの体制作りが重要となります。

昇進させずにそのポジションのままで『昇給』などで報酬を

『ピーターの法則』を防ぐためには、「昇進させない」という選択肢もあり得ます。

とはいえ、一定の成果を出しているのにそれに見合う昇進がないと当人のモチベーションが低下してしまいます。
そこで、活躍し続けられるポジションに留まらせつつ、昇給などの報酬で評価する形をとるのも望ましい形といえます。

降格条件と制度を設ける

昇進後に「無能化」してしまった際、その対象者を『降格』させるという手段が社内の制度で確立していれば、有効な対策といえます。

『ピーターの法則』が引き起こされているということは、当人にとっても能力が発揮できておらず、企業組織にとってもデメリットのある状況と言えます。
当人も成果を出していたポジションに戻ることでモチベーションを取り戻し、再び企業組織に有益な成果を上げてくれるようになることが見込まれます。

注意点としては、誰でもすぐに新たなポジションで成果を上げられるわけではありません。
適正の有無を判断するための期間を設けたうえで、その先の選択肢として『降格』も含めて組織運営をすることが必要になります。

外資系企業とは異なり、年功序列システムが根付いている日本企業は明確に降格制度が定められていない・機能していないことが多く、『ピーターの法則』が発生しやすい環境なので、企業組織を運営するために考慮すべき点といえます。

1on1ミーティングで相互理解を深める

制度などを構築することも『ピーターの法則』を回避するためには大切なのですが、理解を深めることも重要です。

なので、「この会社でどうなっていきたいのか」「目指すキャリアプラン」などを『1on1』で定期的にヒアリングや意見交換をすることがポイントです。
リモートワーク環境下で何気ない会話機会が乏しいかもしれませんが、意識して1か月に1度程度は実施することをオススメします。

最後に

最後に

経営者や人事担当の立場で考えると、社員一人一人の希望・適正と企業組織の要望が100%一致する人員配置は難しいとは思いますが、すべてのホームランバッターがエースピッチャーになれるというわけではないので、「適材適所」で社員を配置して、個人個人が成果を上げて企業の業績が最大化するよう、『ピーターの法則』のメカニズムを理解して回避策を企業として立てておくことが求められます。

株式会社SBSマーケティング

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