「無いことを証明する」のはほぼ不可能!?『悪魔の証明』

「無いことを証明する」ことは極めて難しく、通常ではほぼ不可能であることを意味する『悪魔の証明』
身近な発生例やビジネスシーンでの例、対抗策などについて解説しています。

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『悪魔の証明』とは?

「〇〇がないと証明できなければ、〇〇は存在する」という論法

「無いことを証明する」ことは極めて難しく、通常ではほぼ不可能であることを意味する『悪魔の証明(ラテン語:probatio diabolica、英語:devil’s proof)』

何かが「ある」ことを証明するためには、実際の事例を挙げればよいのですが、「ない」ことを証明するためには、想定される可能性すべてを挙げなければならないため、通常ではほぼ不可能と言えます。

『未知証明』とも呼ばれている『悪魔の証明』は、「~が存在しないこと」「~していないこと」を証明することが不可能もしくは非常に困難な事象であることから「悪魔」に例えられています。

「証明責任(立証責任)の転嫁」

証明責任を相手に押しつけて自身の正当性を主張する手法

「〇〇がないと証明できないのであれば、〇〇は存在する」という論法である『悪魔の証明』。

「ない」ことを証明するためには、「ある」可能性をすべて潰さなければならないことから、ほぼすべての事柄で不可能と言えます。

この論法を利用した、本来は自身が証明しなければならないにも関わらず、その証明する責任を相手に「転嫁」し、相手が証明できないと「やはり自分の理屈が正しい」と主張する「証明責任(立証責任)の転嫁」は、ビジネスシーンにおいてもよく見受けられます。

身近な『悪魔の証明』の発生例

身近でも遭遇する『悪魔の証明』

「在ること(存在すること)」よりも「無いことを証明する」ことは難しく、ほぼ不可能であることを意味する『悪魔の証明』。

身近で生じるケースとしては、特に「オカルト」を信じている人がこの論法を用います。典型的な例は以下の通りです。

  • 「UFO」は存在するのか?
  • 「幽霊」は存在するのか?
  • 「ネッシー」は実在するのか?
  • 「死後の世界」はあるのか?
  • なぜ「陰謀論」は無くならないのか?
  • 「奈良のシカを蹴る外国人」はいない?

「UFO」は存在するのか?

①「存在しないと証明できないから、UFOは存在する」

「UFO(未確認飛行物体)が存在しない」と証明できるか。このケースも『悪魔の証明』の典型例です。

「UFOが存在する」ことを証明するためには、これまでのUFOの目撃事例を挙げればよいのですが、「存在しない」ことを証明するには、宇宙の隅々まで調査しなければならないため、事実上不可能です。

つまり、「UFOは存在しない」という断定的な証拠を提示することはできないため、「存在しない可能性がゼロでないのであれば存在する」という理屈に落ち着いてしまいます。

「幽霊」は存在するのか?

②「存在しないと証明できないから、幽霊は存在する」

「幽霊は存在しない」と証明できないのも『悪魔の証明』の典型例の一つです。

「幽霊は存在する」ことを証明しようとすれば、目撃事例などの証拠を一つでも挙げればよいのですが、「幽霊は存在しない」と証明するためには、心霊現象はすべて錯覚であるということを科学的・論理的に説明しなければならず、このケースも事実上不可能です。

「ネッシー」は実在するのか?

③「存在しないと証明できないから、ネッシーは実在する」

イギリスのネス湖に生息するとされる未確認動物(UMA)の通称である「ネッシー」。

このネッシーが存在しないことを証明するのが非常に難しいことも、『悪魔の証明』の典型的な例として挙げられます。

仮に「ネッシーはいる」ことを証明するには、ネッシーを探し出せば証明できますが、「ネッシーはいない」ことを証明するには、ネス湖全域をくまなく捜索する必要があります。

UFOや幽霊と比べるとできそうな印象を受けますが、長さが約35キロメートル、幅が約2キロメートル、水深は最大で約230メートルという規模のネス湖の全域を余すことなく調査することはさすがに現実的とは言えません

「死後の世界」はあるのか?

④「存在しないことを証明できないのだから、死後の世界は存在する」

「死後の世界は存在しない」ことを証明できないのも、『悪魔の証明』の例の一つです。

「死後の世界が存在しないことを証明するために死んでみる」という人はいませんし、「死んでみたけど、死後の世界はなかった」と証明できる人はいないので、「100%死後の世界はない」と証明することは不可能と言えます。

なぜ「陰謀論」は無くならないのか?

⑤「陰謀がないことを証明できないのだからある」

『悪魔の証明』とセットで展開されることの多い「陰謀論」。陰謀論者が自説を補強し、反論を封じるために用いられることがあります。

「△△という組織が世界の経済を牛耳っている」という陰謀論者に対して批判や反論をしようとしても、「△△という組織が世界経済を牛耳っていない」ことの証明は事実上不可能であり、「証拠がないことが証拠」であるかのように陰謀論が「正しい」かのような錯覚が生じてしまうのです。

「奈良のシカを蹴る外国人」はいない?

⑥「シカを蹴った人を見たことがない」という証言=「いない」とは断定できない

2025年10月21日に第104代内閣総理大臣に就任した 高市 早苗 氏が9月の自民党総裁選で、奈良公園で外国人観光客が鹿に蹴るなどの乱暴な行為をしていると発言しました。

SNS上にアップされた動画や高市 氏自身の目撃談に基づくとされていますが、「外国人観光客によるもの」と断定できる根拠が不足しているとして、波紋を呼ぶことになりました。

このケースも『悪魔の証明』に該当します。「奈良公園の鹿を蹴る人がいた」ことを証明するためには、その現場を1件でもおさえれば成立しますが、「蹴った人はいない」ことの証明にはいくら証言を集めたとしても不可能です。

ビジネスシーンにおける『悪魔の証明』の発生例

ビジネスにおける「あるある」な3つの事案

ビジネスシーンにおいても『悪魔の証明』はたびたび発生します。

具体例としては以下のケースが挙げられます。

  • この商品・サービスは「売れない」のではないか?
  • 新規事業を立ち上げるべき?
  • この受注はマーケの成果?セールスの成果?

この商品・サービスは「売れない」のではないか?

「売れない」と断定することは事実上不可能

「この商品・サービスは売れないのではないか?」と不安に駆られて延々と社内で議論する。そんなことがあるかもしれません。

そんな不安を抱える人は「売れるという事実が存在する」という証明を求めているわけですが、事前にマーケットの動向や顧客の反応を完全に予測することはできないため、100%確実な証明は困難です。

一方で、「売れないという事実」は、マーケット・顧客のニーズなどのすべての可能性を否定することになり、「売れないことの証明」は『悪魔の証明』に該当するため、「売れない」と断定することは事実上不可能と言えます。

「答えが無い」のがビジネスの難しさ

もちろん「売れる」ようにするために、正式にリリースする前にテストマーケティングなどのアクションをするわけですが、最初から「100%売れる」と決まっている商品やサービスはありません

つまり、売れるかどうかの答えは「マーケット」や「お客様」が決めることなので、正直なところ「売ってみなければわからない」わけです。

「売れると断定できるようになってから売る」ということになると、「存在しない答えを探し続ける」ようなもので、いつまで経っても販売開始することはできなくなってしまいます。

実際に味見してみないとわからないのと一緒

例え、どんなに見栄えの良い料理であっても、味見をしないと「おいしいかどうかわからない」ように、リリースしてみてマーケットや顧客の反応を見ないことには、売れるかどうかはわかりません。

「確実にこの商品・サービスは売れる」と断定できる要因が無いことに対する不安は、誰しもが感じることです。

その不安をできる限り払拭するために『マーケティング』という手法があることを、社内に周知しておく必要があります。

新規事業を立ち上げるべき?

「新規事業の推進派」が進める理由を示さなければならない

「新規事業を立ち上げよう!」と主張する場合、本来であればその主張をする人自身が「立ち上げる理由」を示す必要があります。

ですが、反対意見が噴出してしまい「では、新規事業を立ち上げるべきでない理由を示してください。もし示せないなら、やはり立ち上げるべきだ!」と言い出したとしたら、これは典型的な『証明責任の転嫁』に該当する発言になります。

「自身の主張の方が正しい」としたいがために、確信犯的に『悪魔の証明』を用いる人がいるので、「証明責任をすべきなのは誰なのか」を押し付けられないよう、理論武装しておく必要があります。

この受注はマーケの成果?セールスの成果?

マーケとセールス「あるある」

事業会社でマーケターに従事していた際に実際に体験した『悪魔の証明』を求められたケースを紹介させていただきます。

BtoB(企業対企業取引)では、マーケティングがリード(見込み客)を獲得し、ナーチャリングなどで醸成して、フィールドセールスが商談して受注する、という流れが主流となっています。

その一般的な流れの中で受注した一つの案件に関して、「この案件を受注できたのはマーケの成果ではないのではないか?」というモノ言いがセールス側の部門長からありました。

具体的には、「この案件は、セールス側の活動があったから受注できたと認識している。もしマーケ側でセールスによるものではない、と断定できないのであれば、セールス側による成果だ」と主張されたのです。

それまでセールス部門と揉めていたわけではなく、そういった主張をしたセールスの部門長も普段から感情的な人ではなかったのですが、「人事評価」の時期が差し迫っていたこともあり、こういった主張を展開したと思われます。

マーケとセールスが協力して受注を得るのが当たり前ですが・・・

このケースでの、「セールス側の活動によるものではない、と証明できないのであれば、この案件はセールスによって受注できたのだ」という主張は『悪魔の証明』に該当すると言えます。

冒頭で述べた通り、BtoBにおいては「マーケかセールス」という二律相反ではなく、「マーケ→セールス」という協力体制で一気通貫で活動することで受注に至るわけなので、そもそも「マーケだけの成果だ」「セールスだけの成果だ」と紋切り型に判断することはできず、貢献度を測る際には「マーケ・セールスのどちらの比重が大きかったか」という線引きを明確にすることが求められます。

この発言が出た背景として、これまでその企業内で「マーケティング部署」というのが根付いてこなかったため、「マーケの役割」についての理解が社内で不十分であったことが原因と考えられますが、「急造のマーケチーム」を設ける中小規模の企業では、よく起こりがちな事象と言えます。


この続きでは、『悪魔の証明』への対抗策について解説しています。

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