物事を遂行する際に要する時間やコスト、リスクを「過小評価」し、メリットを「過大評価」してしまう心理現象を意味する『計画の誤謬(ごびゅう)』。
発生例と発生してしまう要因、克服するための方法などについて解説しています。
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『計画の誤謬』とは?

物事を遂行する際に要する時間やコスト、リスクを「過小評価」し、メリットを「過大評価」してしまう心理現象を意味する『計画の誤謬(ごびゅう)』。
『プランニング・ファラシー』や『計画錯誤』、『計画倒れ現象』とも呼ばれています。
この『計画の誤謬』は、個人の学習や業務管理だけでなく、企業の大規模プロジェクトや国家事業まで幅広く生じる現象であり、また「経験の有無」に関係なく、新人でもベテランでも繰り返し起きてしまう現象として知られています。
そもそも「誤謬」とは?

そもそも「誤謬(ごびゅう)」とは、論理的な誤りや、正しそうに見えて実際は間違っている推論・思考法を意味しています。
つまり、「計画を立てる際に、所要時間や予算、リスクを十分に考慮せずに甘く見積もってしまう」心理現象が『計画の誤謬』というわけです。
『計画の誤謬』の発生例

実際よりも甘く見積もって計画してしまう『計画の誤謬』。
以下に挙げる例のように、個人規模から企業組織・国家規模まで広く生じてしまうのが特徴です。
- 夏休みの宿題が終わらない
- 計画よりも大掃除に時間がかかってしまう
- 旅行のスケジュールが思うように進まない
- 起業の準備が進まない
- 慣れた業務への過信
- プロジェクトに遅延が生じてしまう
- 想定時間よりも延長してしまうミーティング
- プロジェクトの予算が想定よりもオーバー
- 社内システムのリプレイスが遅れてしまう
- 公的事業の長期化・予算の増加
夏休みの宿題が終わらない

夏休みの序盤に「一日の過ごし方」を計画していたのに、その計画の通りに進まずに夏休みの終わり間際に宿題が溜まってしまう。
こういった現象も『計画の誤謬』の発生ケースの一つと言えます。
計画よりも大掃除に時間がかかってしまう

「大晦日の午前中には大掃除が終わるだろう」と見通していたものの、想定外の汚れや物品の整理に時間がかかり、気が付けばもう夕方に。こんなケースも『計画の誤謬』の発生ケースと言えます。
旅行のスケジュールが思うように進まない

事前にタイムスケジュールを立てて、友人たちと旅行に行ったところ、交通渋滞が起こったり道に迷ってしまい、予定が後ろ倒しになってしまうケースも『計画の誤謬』の発生例の一つ。
起業の準備が進まない

起業するために「帰宅後に毎日2時間準備しよう」と計画を立てていたものの、残業が重なったり急な予定が入ってしまって、事前に想定していた計画が頓挫してしまう。
慣れた業務への過信

「以前よくやっていた業務だから」と所要時間を甘く見積もり、進めていくうちに事前に把握すべき事項の見落としに気づき、結果として遅延が生じてしまう。
プロジェクトに遅延が生じてしまう

「2週間で開発できる」と見込んでいたシステム開発のプロジェクト。実際に進めてみるとバグ修正や仕様変更などが生じてしまい、結果として予定よりも1か月も遅れてしまう。
想定時間よりも延長してしまうミーティング

「30分で終わる」と想定していたミーティングが、議論が紛糾して1時間延長してしまう。
プロジェクトの予算が想定よりもオーバー

『計画の誤謬』は、「計画(スケジュール)」以外にも生じてしまいます。
例えば、新規プロジェクトの予算を必要最低限の金額で計上したが、予期せぬ経費が発生して予算オーバーになってしまうケースも『計画の誤謬』の発生ケースと言えます。
社内システムのリプレイスが遅れてしまう

社内システムのリプレイスの際に、データ移行の想定時間を「過小評価」してしまった結果、稼働開始が遅れてしまう。
公的事業の長期化・予算の増加

国家事業とも言えるオリンピック関連施設や高速道路などのインフラ整備でも、裏側では当初の想定よりもプロジェクトに年数がかかったり、予算が何倍にも膨れ上がってしまうことは、決して例外的な失敗ではありません。

実際に、2021年に開催された東京オリンピック(東京2020)では、招致段階での計画費が「約7,340億円」でしたが、資材・人材費の高騰や当初見積もりの甘さによって、結果として「約1.4兆円~1.6兆円」規模にまで膨れ上がったことが知られています。
なぜ『計画の誤謬』が発生してしまうのか?

なぜ「実際よりも甘く見積もってしまう」のか。
具体的には、以下の要因が絡み合うことで発生するとされています。
- 楽観性バイアス
- 解釈レベル理論
- 双曲割引モデル
- 宣言効果が「裏目」に出てしまう
- ホフスタッターの法則
- 「最悪のシナリオ」の軽視
楽観性バイアス

まず挙げられる発生要因が『楽観性バイアス』。
「自分の想定通りに進む」「トラブルなんて起きずにうまくいくだろう」と自分にとって都合の良い「ベストシナリオ」を描いてしまう『楽観性バイアス』によって、実際よりも甘く見積もってしまう『計画の誤謬』が生じてしまう、というわけです。
※『楽観性バイアス』の詳細については、こちらのページをご覧ください。
メディアなどが発信する情報に接触する際「自分自身は影響を受けないが、世間の人たちは大きな影響を受けてしまう」と考える『第三者効果』。発生することによる影響や発生例、どんな人が陥りやすいのか、マーケティングへの応用や克服・回避する方法について解説しています。
解釈レベル理論

『解釈レベル理論』とは、出来事や目標といった「対象」に対して感じる「心理的距離」が遠いか近いかで、その対象の捉え方(解釈の度合い)が変化する、という心理学の理論です。
これはつまり、遠い未来は抽象的に捉え、近い予定は具体的に考えやすくなる、という人間心理をあらわした理論、と言い換えることができます。
この理論によって、「心理的距離」の遠い計画などは、甘く見積もってしまう、というわけです。
双曲割引モデル

人間は「将来の大きな利益」よりも、「目先の小さな利益」を過大評価してしまう、という非合理的な心理傾向を示した『双曲割引モデル』。
これはつまり、「遠い将来は待つことができるが、近い将来は待てずに気が早くなってしまう」という傾向が人間にはある、ということです。
結果が出るまでに時間がかかるタスクと、今すぐやってすぐに結果が出るタスク。この2つがあれば、誰もが「今すぐやってすぐに結果が出るタスク」を選ぶのではないでしょうか。
この『双曲割引モデル』という心理傾向によって、「遠い将来のことだから、まだ時間があるしどうにかなるさ」と甘く見積もってしまう、というわけです。
宣言効果が「裏目」に出てしまう

自身の目標を日々の生活で目の留まる場所に書き留めたり、周囲の人々に「宣言」することで、その目標の達成率が高まる『宣言効果』。
この『宣言効果』によって、目標を達成しようとモチベーションが高まると知られていますが、「計画の正確さ」という観点からみると、この「宣言」という行為が、将来の予測を歪ませる原因となってしまうことも。
人前で「宣言」する際、人間心理として「正確な計画の予測を立てる」ということよりも、「(宣言したのだから)周囲の人々によく見られたい」という欲求が優位に立ってしまうのです。
その結果として、『計画の誤謬』が生じて、計画の見通しを甘く見積もってしまう、ということになってしまうわけです。
※『宣言効果』の詳細については、こちらのページをご覧ください。
自分の目標を日々の生活で目に留まるところに書き留めたり他人など周囲に宣言することで、その目標の達成率を上げる『宣言効果』。なぜ発生するのか、どんな効果があるのか、具体例を踏まえて解説しています。
ホフスタッターの法則

「どんなに緻密なスケジュールを組んでいたとしても、超過してしまって予測以上の時間がかかってしまう」ことを意味する『ホフスタッターの法則』も、『計画の誤謬』の発生要因の一つと言えます。
※『ホフスタッターの法則』の詳細については、こちらのページをご覧ください。
すべての作業に対して正確に所要時間を予測することはできない、という『ホフスタッターの法則』。発生例や発生してしまう原因、起こりやすいビジネスシーン、発生を予防するための方法などについて解説しています。
「最悪のシナリオ」の軽視

過去の経験から、スケジュール通りにいかなったとしても、「今回は特別だ」とリスクを軽視してしまうことも、『計画の誤謬』の背景にはあります。
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この続きでは、『計画の誤謬』を克服するための5つの方法について解説しています。
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