生じた損失分を取り戻そうとして、普段よりも積極的にリスクのある判断や行動をする『ブレークイーブン効果』。
実証された実験と日常生活やビジネス、マーケティングでの発生例について解説しています。
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『ブレークイーブン効果』とは?
『ブレークイーブン効果(Break even effect)』は、損失が生じた時、その損失分を取り戻そうとして、普段よりも積極的にリスクのある判断や行動をする心理的状態のことです。
つまり、損得ゼロの状態に戻そうとする心理的バイアスとも言えます。
ビジネスにおいて、「ブレークイーブン」とは、費用と利益が一致・相殺し合う「損益分岐点」の意味であり、『スネークバイト効果』と反対の意味として、金融業界などで知られています。
リチャード・セイラー教授らによる実証実験
リチャード・セイラー 氏 とマーケティング学者のエリック・ジョンソン 氏 が行った、ギャンブラーの心の動きを観察した実験では、実験の参加者にいくつかの問いを投げかけました。
30ドル勝っている状態で、どちらの賭けを選ぶ?
問題1:今、あなたは30ドル勝っています。以下の①②のどちらの賭けを選びますか?
①50%の確率で9ドル得るか、50%の確率で9ドルを失う。(選んだ割合:70%)
②何ももらえないが、何も失わない。(選んだ割合:30%)
※②を賭けというには違和感があるかもしれませんが、「確率100%で0ドルが得られる」という意味では賭けの形式を満たしているとこの場では考えます。
この問題1の回答には、不労所得や臨時収入といった突然手にしたお金は、自分で労して稼いだ収入と比べて大胆な使い方をしやすい『ハウスマネー効果』(※1)という心理作用が働いています。
人間は通常、リスク(損失)を回避する傾向(※2)があるため、本来であれば①の「当たれば9ドル得られて外れれば9ドル失う」ギャンブルを選ぶ可能性は低いと考えられます。
ですが、すでに「30ドル勝った」状態であることから、もし負けたとしても21ドルは手元に残ることから、①のギャンブルを選択する割合が多かったと言えます。
※1:『ハウスマネー効果』の詳細については、こちらのページをご覧ください。
不労所得や臨時収入といった突然手にしたお金は、自分で労して稼いだ収入と比べて大胆に浪費しやすくなる『ハウスマネー効果』。発生するメカニズムや発生することによる弊害、実証した研究などについて解説しています。
※2:損失を回避する心理的傾向=『損失回避バイアス(損失回避の法則)』の詳細については、こちらのページをご覧ください。
利得と損失を比較する際、損失の方をより重大だと感じやすく、損失を回避しようとする心理的傾向である『損失回避バイアス(損失回避の法則)』。なぜ発生するのか、ほかの8つの心理効果との関係性、具体例やビジネスシーンへの応用例などについて解説しています。
30ドル負けている状態で、どちらの賭けを選ぶ?
問題2:今、あなたは30ドル負けています。以下の①②のどちらの賭けを選びますか?
①50%の確率で9ドル得るか、50%の確率で9ドルを失う。(選んだ割合:40%)
②何ももらえないが、何も失わない。(選んだ割合:60%)
問題1と同様の問題ですが、前提条件として「30ドル負けている」状況というのが異なる点です。
問題2では、「②何ももらえないが、何も失わない」、つまり賭けに挑戦しないと判断した割合が60%という結果になりました。
賭けに勝ったとしても、30ドルの負けを取り戻すことはできません。そのため、負けて39ドルの損失になるリスクよりも「何も起きない」選択肢を選んだと考えられます。
30ドル負けている状態で、どちらの賭けを選ぶ?②
問題3:今、あなたは30ドル負けました。以下の③④のどちらの賭けを選びますか?
③33%の確率で30ドル得るか、67%の確率で何も得られない。(選んだ割合:60%)
④確実に10ドルを得ることができる。(選んだ割合:40%)
この問題3では、60%の人がリスキーな③を選択するという結果になりました。
賭けに勝てばマイナス30ドルが帳消し(収支ゼロ)になり、負けたとしてもそれ以上悪化しないことになります。
④を選べば、確実に10ドルを得られるため、30ドルのマイナスが減少することになりますが、結果としては③の「賭けの結果で収支ゼロ」に望みをつなぐという『ブレークイーブン効果』が働きやすくなっているのが伺えます。
これはつまり、30ドルの損失を挽回できるチャンス(③)を与えられると、実験参加者の過半数がギャンブルを選択する傾向が強まるということです。
ブレークイーブン効果の典型的な例
金融投資などで多く見られる心理事象ですが、ここではそのほかの例を挙げます。
競馬
リチャード・セイラー 氏 の研究結果によると、競馬の最終レースは大穴馬のオッズが下がる傾向があるということが明らかになりました。
本来であれば、馬の状態や戦績を優先して予想するはずですが、それまでのレースで負けが込んでいると「勝ちそうにない大穴の馬に賭けて勝てば最後に損失を挽回できる」という期待感から、理屈や理論ではなく心情的に判断しリスクを負う行為であり、『ブレークイーブン効果』の典型例と言えます。
リベンジ消費・反動買い
中国で顕著に起こった「リベンジ(報復性)消費」。これも『ブレークイーブン効果』で消費意欲がかき立てられたことによって起こった現象と言えます。
コロナ禍で発出されたロックダウンなどによって外出の自粛を余儀なくされた人々が、制限の緩和後に反動で「爆買い」のように買い物に走ったという現象です。
ロックダウンが解除されたといっても新型コロナウイルスの感染リスクはありましたし、経済情勢の観点からも将来が未知数であるため、消費に対して慎重になる方が当たり前に思えますが、それでも「財布のひもが緩む」という心理には『ブレークイーブン効果』が作用して「買い物をしたいという欲求が高まった」と考えられます。
新規事業の撤退のタイミング
なかなか軌道に乗らずに利益といった成果が出ない事業であっても、それまでに投資したコストが頭をよぎって撤退の決断に踏み切れず、結果的に経営に損害を与えてしまうというケースも『ブレークイーブン効果』の影響によるものと考えることができます。
Web広告
マーケティング施策の領域でも『ブレークイーブン効果』が作用するケースがあります。
例えば、Web広告を出稿する際、目標として設定したCV(コンバージョン)を獲得できずに損失が発生している状況であるにも関わらず、「クリックされていてアクセス数はある。ココでやめてしまうとこれまでの出稿がムダになる」と継続してしまい、かつ運用システムや運用サポートの窓口担当から「現状よりも多くの費用を投下すればコンバージョンする確率が高まります」と助言を受けることで、より多くの出稿費用を投下することになってしまう。。
このような、ある意味で「泥沼」にはまってしまうのも、『ブレークイーブン効果』、もしくは『コンコルド効果(サンクコスト効果)』(※3)が作用していると考えられます。
※3:『コンコルド効果(サンクコスト効果)』の詳細については、こちらのページをご覧ください。
多数派が少数派に価値観を暗黙的に強制する『同調圧力』。なぜ発生するのか、メリットやデメリット、日本でよく見受けられる理由やビジネスへの応用について解説しています。
最後に
生じた損失分を取り戻そうとして、普段よりも積極的にリスクのある判断や行動をする『ブレークイーブン効果』。
人間誰しも、損をした時には判断が鈍る傾向があります。そもそもの考え方として、「損失は損失」と認めて割り切らなければ、知らぬ間に大きなリスクを背負ってしまうことがあるので注意が必要です。
マーケティングに関する予算を「投資」と捉えることがあります。
当たり前のことですが、投資に100%はありません。つまり、損失になる可能性が必ずあるということです。
予算を投下するマーケティング施策についても、「損失は損失」と認めて割り切って冷静に決断することがマーケター・マーケティング責任者には求められます。
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