スターバックスと西武園ゆうえんちのビジネスから見る『消費を促す or 利益をあげるテクニック』

ビジネスモデルとも言えるスターバックスの「カード残高の消失」

残高の失効で多くの利益が!?

通称「スタバ」と呼ばれているスターバックス

世界最大のコーヒーブランド

アメリカのシアトルで生まれたコーヒーブランドであるスターバックス。

世界中に数万のショップを展開し、世界最大のコーヒーブランドとも言える規模となっています。
日本各地にも多くのショップを出店していて、ありとあらゆる客層に支持されています。

プレゼントとして用いられる「スターバックス カード」

プレゼントの定番とも言えるスターバックス カード

そのスターバックスにはチャージ式のプリペイドカードである「スターバックス カード」があります。キャッシュレスで快適に利用でき、プレゼントとしてもよく用いられています。

スターバックス店舗のレジ横に展示されていて、¥1,000以上チャージ(入金)すればプレゼント用に包装してもらえます。

購入方法としてはほかにも、相手にメールで送付できる公式サイトでの購入(クレジットカード決済)、公式オンラインストア(My Starbucks会員への登録が必要、送料が発生)、一部のセブンイレブン店舗で購入が可能です。

毎年残高の約10%が消失=「10%の利益」に

2018年だけでも失効した残高は日本円換算で約163億円にも

そんな「スターバックス カード」ですが、そのプリペイドカードなどの残高には期限が設定されていて、金融ライターのJ・P・コーニング 氏によると、期限切れで失効した残高は2018年だけでも1億5,500万ドル(日本円換算で約163億円)にものぼるそうです(※)

スタバは1700億円近くも客からお金を借りている「金融王者」だという指摘

西武園ゆうえんち独自の「西武園通貨」

使い切れずに余った独自通貨はすべて利益に!?

1950年に開業した西武園ゆうえんち

開業から70年以上が経過している「ゆうえんち」

東京都と埼玉県の県境、多摩湖畔に位置する、西武HDが所有している西武園ゆうえんち。

近年は施設の老朽化やそれに伴う大規模アトラクションの撤去により盛況ぶりが失われていました。

そこで「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」をV字回復に導いた「株式会社 刀」(代表取締役CEO 森岡 毅 氏)によって2021年5月に大規模リニューアル。

100億円規模のリニューアル費用をかけて「ゴジラ・ザ・ライド」「夕日の丘商店街」「レッツゴー!レオランド」「銭天堂ザ・リアル」などが新設され、幅広い年代の方々が楽しめる遊園地となっています。

西武園ゆうえんちに入場した日にしか使えない「西武園通貨」

園内では手持ちの現金が使えない・・・

その西武園ゆうえんちでは、リニューアルに伴い独自の「西武園通貨」を導入しました。園内での飲食やアクティビティ、おみやげなどを購入する際には、この「西武園通貨」でしか支払うことができません(自動販売機など一部を除く)。

現代の日本円から西武園通貨に両替させることで、園内の「夕日の丘商店街」の“昭和レトロ”な世界観を演出するために導入したようです。

ちなみに、西武園通貨の「200園」を購入するには¥2,400、「300園」を購入するには¥3,600がかかります。
「1園=¥12」という相場感で、西武園通貨単品での購入以外にも「1日レヂャー切符」と「西武園通貨」がセットになった「得1日レヂャーパック」も販売しています。

発行したその日に使い切らなければ無駄になってしまう

「発行当日限り有効」「返金ができない」西武園通貨

この「西武園通貨」の大きな特徴は「発行当日限り有効」「返金ができない」という点。つまり、発行したその日に使い切らなければ、両替した通貨はムダになってしまうというわけです。

そのため、残通貨消費のために帳尻合わせの買い物をすることになったという声がSNS上であがっています。
また、休日はレストランやアトラクションだけでなく、園内通貨の交換所にも長蛇の列ができているというケースも。

園内のほとんどで必須になる「西武園通貨」の交換所に行列ができてしまうのはつらいところですが、通貨の交換所を増やすなどの対策をしているようですし、東京ディズニーランドやそれこそUSJでも休日はどのアトラクションもレストランも行列ができがちなので、リニューアルからそれほど時間が経過していない段階では(ある程度は)仕方がないかなと思いますが。。

残高や独自通貨の消費を誘引するトリガーに

「使わないと勿体ない」という心理効果を誘引

上述の2つのビジネス(モデル)の特徴をまとめると以下のようになります。

・スターバックスのプリペイドカード残高失効
2018年のペースで見ると、毎年残高の約10%が使われないまま消失していることになります。これはつまり、スターバックスにとっては「毎年約163億円の利益」となります。

・西武園ゆうえんちの西武園通貨
発行したその日しか使えず、返金ができない。つまり西武園ゆうえんちにとっては「使い切れずに余った独自通貨はすべて利益」となります。

この、スターバックスの「プリペイドカード残高の消失」、西武園ゆうえんちの「発行日に使い切らなければ無駄になってしまう独自通貨」というのは、どちらも顧客や消費者に対して「使わないと勿体ない」という心理効果を誘引します。

顧客や消費者に「使わないと勿体ない」と思わせる心理テクニック3例

「使わないと勿体ない」と思わせる3つの心理事象

「使わないと勿体ない」を誘引する心理事象の例として、以下の3つが挙げられます。

無くなる前に使い切りたい・・・『デッドライン効果』

「設定された〆切や期限までにやりきらなければならない」と思わせる『デッドライン効果』

人間の心理傾向には、〆切や期限が設定されると「その〆切や期限までにやりきらなければならない」と思わせる『デッドライン効果』があります。

スターバックスの例であれば「プリペイドカードの残高が消失する前に使い切りたい」、西武園ゆうえんちの例であれば「発行した独自通貨を使い切らないと無駄になってしまう」と思いやすくなるわけです。

『デッドライン効果』の詳細については、こちらの記事をご覧ください。

使わないのはもったいない・・・『コンコルド効果』(サンクコスト効果)

それまでに費やした投資を惜しんでやめられなくなる『コンコルド効果』(サンクコスト効果)

人間の心理傾向にはほかにも、それまでに費やした投資を惜しんでやめられなくなる『コンコルド効果』(サンクコスト効果)があります。

スターバックスの例であれば「プリペイドカードの残高を惜しんで商品を購入する」、西武園ゆうえんちの例であれば「お金と交換して得た独自通貨が無駄になってしまうので使い切ろう」と思いやすくなるわけです。

『コンコルド効果』(サンクコスト効果)の詳細については、こちらの記事をご覧ください。

期日・今日中に使わなければ・・・『カリギュラ効果』

制限などの「縛り」があることで興味関心が高まり衝動に駆られやすくなる『カリギュラ効果』

禁止や制限をされることで、かえって興味や関心が湧き、衝動に駆られやすくなる『カリギュラ効果』

使用期間に制限を加えることで、スターバックスの例であれば「プリペイドカードの残高を消失する日までに使わなければ・・・」、西武園ゆうえんちの例であれば「発行した独自通貨を今日使い切らなければ・・・」と思いやすくなることが期待できます。

『カリギュラ効果』の詳細については、こちらの記事をご覧ください。

最後に

「消費をどう促すか」というのはビジネスの大きな課題。

スターバックスの「スターバックス カード(残高失効)」と西武園ゆうえんちの「西武園通貨」のどちらも使い切ってもらえれば良し(来店・来場してもらうことで「ついで買い」の可能性が生まれる)、もし使い切ってもらわなくても、その分はそのまま企業側の利益になるので良しとなるので、マーケティングの観点からみると「うまいやり方」だなと思います。

ビジネスを進めるうえで「消費をどう促すか」というのは課題になりがちなので、2社の例(と心理テクニック)を取り入れるのも良いかもしれません。

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