市場の状況(需要と供給のバランス)に応じて、商品・サービスの価格を変動させる『ダイナミックプライシング(動的価格設定戦略)』。
メリットとデメリット、価格変動の条件や実践事例、価格決定プロセスと導入する際のポイント、
『ペネトレーションプライシング』・『スキミングプライシング』との違いについて解説しています。
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ビジネスの成功を左右する「値決め」

マーケティング戦略を具体化するためのフレームワークとして知られている『4P分析』を構成する要素の一つである「価格(Price)」。
商品やサービスを販売する際、成功を左右する重要な要素の一つが「価格設定(値決め)」です。
固定せずに状況に応じて価格を変動させる戦略として『ダイナミックプライシング(動的価格設定戦略)』が知られています。
※『4P分析』の詳細については、こちらのページをご覧ください。
4P~『何を』『いくらで』『どこで』『どうやって』~ マーケティング界隈でよく耳にする「4P」とは、1960年代前半にアメリカの経済学者であるジェローム・マッカーシーが提唱した、Product(商品)、Price(価格) …
『ダイナミックプライシング(動的価格設定戦略)』とは?

『ダイナミックプライシング(動的価格設定戦略)』とは、市場の状況(需要と供給のバランス)に応じて、商品・サービスの価格を変動させる戦略です。
需要が高い時は値上げをして収益を最大化し、逆に低い時は値下げをして販売機会ロスを防ぎやすくなります。

「ダイナミック」=「動的」、「プライシング」=「値付け」を意味し、「変動料金制」とも呼ばれています。
昨今では需要の変動が激しさを増しており、そういった変化の激しい市場環境に対応するため、AIを活用してリアルタイムの需要予測や価格の最適化を進めているケースが多く見受けられます。
『ダイナミックプライシング』のメリット

『ダイナミックプライシング(動的価格設定戦略)』は、適切に導入・運用することで、収益(利益)の最大化とともに、需要の平準化(混雑緩和や商品在庫の適切な管理)を同時に実現できるようになります。
- 売上・利益の最大化
- 商品在庫や人的リソースの最適化
- 「ファン創出」にもつながる
売上・利益の最大化

需要が高まる時期には価格を引き上げて収益性を高め、需要が落ち込む時期には価格を下げる『ダイナミックプライシング(動的価格設定戦略)』。
売れる見込みのタイミングで利益を確保しつつ、売れにくい局面では価格を調整して売れ残りを抑制することから、結果として売上・利益の最大化を図れるようになります。
商品在庫や人的リソースの最適化

繁忙期と閑散期の需要を平準化させることで、商品の売れ残り回避や余剰在庫・廃棄の削減、人的リソースの有効活用・最適化が図りやすくなることもメリットの一つです。
「ファン創出」にもつながる

需要が低下する閑散期のタイミングに商品やサービスを利用することで、消費者・顧客は価格面でのメリットを享受できるようになります。
つまり、タイミングによって「リーズナブル」に商品の購入・サービスに利用ができるようになるため、そんな「お得さ」を実感した消費者・顧客の中からファンになる可能性も生じてくるのです。
『ダイナミックプライシング』のデメリット

『ダイナミックプライシング(動的価格設定戦略)』は万能な手法ではなく、運用方法によってはデメリットが生じてしまうケースも。
- 価格変動に対する「反感」や「不信感」
- 過度な価格変動による「売上の減少」
- 導入には相応の「コスト」が発生する
価格変動に対する「反感」や「不信感」

『ダイナミックプライシング(動的価格設定戦略)』で注意すべきデメリットの一つは、顧客から反感や不信感を抱かれてしまうリスクがある、という点です。
需要に応じて価格を変動させる『ダイナミックプライシング』。需要が高まる際には価格が上昇するため、「価格が高すぎる」「不当に値上げしているのではないか」と感じる顧客が増えやすくなります。
特に現代ではSNSでそういった価格変動に対する不満は拡散されやすく、販売企業のブランドイメージの悪化や「炎上」リスクが生じてしまうのです。
そのため、特に「値上げ」をする際には理由を明確にし、透明性の高い説明をすることが求められます。
※『マーケティング活動(広告)で炎上したら・・・』の詳細については、こちらのページをご覧ください。
マーケティング活動の一環で出稿する広告。この広告がきっかけで発生した『炎上』トラブルにどう対応するのか、そもそもトラブルを未然に防ぐには?『炎上』が起こる条件も含め解説しています!
※『マーケティング活動(SNS投稿、配信メール、コンテンツ)で炎上したら・・・』の詳細については、こちらのページをご覧ください。
マーケティング活動の一環であるSNS投稿や配信メール、コンテンツ。これらがきっかけで発生した『炎上』トラブルにどう対応するのか、そもそもトラブルを未然に防ぐには?『炎上』が起こる条件も含め解説しています!
※『ネットバッシング(ネット炎上)がなぜ起こるのか?』の詳細については、こちらのページをご覧ください。
インターネット上で特定の人物や団体に対して不特定多数の人間が批判・非難する『ネットバッシング(ネット炎上)』。なぜ起こるのか?2023年上期のトレンド・傾向、起こす人の傾向について解説しています。
過度な価格変動による「売上の減少」

短期間での価格の変動や、時節による極端な価格差を生じさせることは、顧客や消費者の購買意欲を低下させる要因になってしまいます。
頻繁に価格を上下動させてしまうと、購入・導入を避けたり競合他社へ移行するケースが生じやすくなってしまうのです。

特に、価格が高額になる時期には、顧客や消費者の支払いも高額になってしまいます。
顧客や消費者側からすると、価格が下がるタイミングに購入をずらせればよいのですが、どうしても高額なタイミングで必要な場合、高額でも購入せざるを得ません。
すると、買い控えのリスクが生じてしまうため、適切な範囲で価格を調整し、顧客や消費者にとって納得感のある変動幅や頻度を保つことが重要になります。
導入には相応の「コスト」が発生する

『ダイナミックプライシング』の仕組みを導入する際には、データ分析基盤の整備や需要予測モデルの構築、外部データとの連携などの初期投資額が生じてしまうこともデメリットと言えます。
また、システムだけでなく運用を担当する人員の確保も必要になりますし、導入後のメンテナンスやモデル改善などのコストも継続的に発生するため、そういったコストを考慮した導入判断が求められます。
『ダイナミックプライシング』における価格変動の条件

『ダイナミックプライシング(動的価格設定戦略)』での価格変動の条件は、以下の要素が挙げられます。
- 需要・・・アクセス数やWeb検索数、購入率、アンケート調査結果などによって変動。需要が高まれば価格を上昇させる。
- 在庫状況・・・在庫数や残席といった「希少性」を示し、数量が少なくなるほど価格を上昇させ利益の最大化を図る。
- 外部要因・・・イベントや天候、季節性によって変動。悪天候の場合には来店時割引するなど。
- 競合他社・・・市場価格やキャンペーン情報をもとに変動。
- 時間帯・曜日・・・日中や夜間、早朝や平日、土日祝日によって変動。
- 顧客属性・・・価格感度が高い層へ割引、リピーターへの優待価格、特定の居住地に住む層への割引など、セグメント別に最適化。
『ダイナミックプライシング』の実践事例

『ダイナミックプライシング(動的価格設定戦略)』は、さまざまな企業で活用されており、需要と供給のバランスを取りながら価格を最適化し、収益を最大化させています。
- 小売業(ECサイト):Amazon
- 交通機関:航空業界
- ホテル業界・宿泊施設
- テーマパーク:東京ディズニーリゾート
- スポーツ業界:Jリーグ
- 2026年開催のFIFAワールドカップ
小売業(ECサイト):Amazon

『ダイナミックプライシング(動的価格設定戦略)』を取り入れている業界例として、小売業界(ECサイト)が挙げられます。
季節商品や在庫が限定的な商品を、需要が高まる時期には価格を上げ、逆に需要が低下する時期には価格を下げることで、商品の回転率を上げています。
特に、世界最大のECサイトとして知られているAmazonでは、高度なアルゴリズムを用いて価格調整を自動化し、商品や市場動向に応じて高い頻度で価格を変動させ、競争優位性を高めることに成功しています。
交通機関:航空業界

交通機関でも、『ダイナミックプライシング』の概念が採用されています。
特に航空業界では、『ダイナミックプライシング』や『レベニューマネジメント』や『イールドマネジメント』という手法を早くに取り入れていることで知られています。
航空機の座席は「在庫」として持ち越すことができないため、空席のまま離陸すれば収益機会を失うことになります。そのため、空席を減らしつつ、単価を高めることが重要な課題となります。
例として、需要が高まる繁忙期のシーズン(GWやお盆、年末年始など)では料金を引き上げ、それ以外の閑散期では割引や低価格で提供することで、利用者数を平準化しつつも収益を最大化しているのです。

ちなみに、『ダイナミックプライシング』と『レベニューマネジメント』、『イールドマネジメント』の違いをまとめると、以下のようになります。
- ダイナミックプライシング:商品やサービスの「販売開始後」の予約状況に応じて価格を変動させ、収益を最大化&機会ロスを防ぐ戦略・手法。
- レベニューマネジメント:「企業全体の過去のデータ」をもとに需要を予測し、「価格設定以外の要素」も考慮して収益を最大化させる戦略・手法。
- イールドマネジメント:「特定の資源(航空機の座席)の過去データ」から需要を予測し、価格を柔軟に変えて収益を最大化させる戦略・手法。
ホテル業界・宿泊施設

航空業界と同様に、ホテル業界・宿泊施設でも、『ダイナミックプライシング』や『レベニューマネジメント』を採用しています。
シーズンによって消費者の需要が変動するホテルの客室。
航空業界と同じように、ゴールデンウィークといった大型連休やお盆休み、年末年始などは需要が見込まれるため、稼働率の高まりに応じて宿泊料金を引き上げ、平日や閑散期では割引によって集客を図り、空室リスクを抑制しています。
テーマパーク:東京ディズニーリゾート

テーマパークなどでも、『ダイナミックプライシング』の導入が進んでいます。
東京ディズニーリゾートでは、混雑緩和と利益の平準化を目的として、曜日や時期の需要に応じて入場料金を変える「変動価格制」を採用しています。
価格を上げてピーク時の混雑を解消し、逆に価格を下げてオフピーク時の来場を促してパーク内環境の快適性を保っているのです。
スポーツ業界:Jリーグ

スポーツ業界でも、『ダイナミックプライシング』の採用が進んでいます。代表的なのが、プロスポーツの「Jリーグ」。
試合ごとに見込まれる観客動員数やチームの戦績、対戦カードや試合日程、座席や天候の良し悪しなどによって需要のブレが大きくなるため、人気の試合ではチケット価格を引き上げて収益性を高め、空席が見込まれる試合では価格を調整して集客を図ることで、全体として収益バランスを最適化しています。
2026年開催のFIFAワールドカップ

2026年北中米ワールドカップでは、国際サッカー連盟(FIFA)が公式のプラットフォーム「Resale/Exchange Marketplace」(セカンダリーマーケット)を運営し、『ダイナミックプライシング』の大規模導入や高額な手数料徴収を実施しました。
観戦チケットの二次流通をFIFAが管理下に置き、公式転売の自由化を促し、チケットの買い手・売り手の双方から高額の手数料(各15%など)を徴収する仕組みを採用。
人気の対戦カードや決勝戦などでは、定価価格や転売価格が数百万円~数十億円に達するケースも報じられ、投資・投機対象への変質、富裕層やスポンサー優遇という公平性の低下を招いたという指摘がされています。
『ダイナミックプライシング』の価格決定プロセス

『ダイナミックプライシング(動的価格設定戦略)』は、主に以下のプロセスによって運用されています。
| 価格決定プロセス | 内容 |
| データ収集 | 価格決定に関係する販売実績やWebアクセス数、在庫量や競合価格、天候などの外部要因といったリアルタイムデータを収集・蓄積 |
| 需要予測 | 収集・蓄積したデータをもとにAIが需要を予測 |
| 最適価格の算定 | 予測された需要にコスト構造や在庫状況、市場動向などを加え「最適価格」を算定 |
| システム連携・価格反映 | 外部システムにAPI経由で自動連携しサイトへ価格反映 |
| 効果検証とフィードバック | KPI検証・フィードバック・価格モデルの調整の改善を繰り返す |
『ダイナミックプライシング』を導入する際のポイント

『ダイナミックプライシング(動的価格設定戦略)』を導入する際に欠かせないポイントは、以下の通りです。
- 事前に「競合他社」や「マーケット」の分析を行う
- 自社商品同士で「カニバリ」しないか注意する
- 「販売料金」と「購買量」の相関を把握する
- 「専門のスキルを有する人材」を確保する
- 価格変動による「ブランドイメージ」や「評判」の変化に注意を払う
事前に「競合他社」や「マーケット」の分析を行う

価格調整は「経営戦略の一つの手段」であるため、「競合他社」や「マーケット(市場)」の分析結果次第では、『ダイナミックプライシング』ではない施策が適しているケースもあります。
例えば、自社と同規模の競合他社がすでに『ダイナミックプライシング』を導入している場合、収益の最大化が見込めない可能性もあります。
予め分析を行い、自社が『ダイナミックプライシング』を導入することが望ましいかどうかの判断材料を得ておく必要があるのです。
自社商品同士で「カニバリ」しないか注意する

「カニバリゼーション」の略で「共食い」を意味する「カニバリ」。
『ダイナミックプライシング』を導入すると、自社のほかの商品が売れなくなってしまうことがないよう、取り扱い商品間の売上の関係性を事前に把握しておくことも欠かせません。
「販売料金」と「購買量」の相関を把握する

「販売料金(価格)」と「購買量」は、必ずしも比例するとは限りません。
つまり、『ダイナミックプライシング』で価格を変動させたとしても、「購買量(需要)」が変動しないケースもあるため、価格設定の際には根拠のあるデータが必要になります。
「専門のスキルを有する人材」を確保する

『ダイナミックプライシング』導入の際には、商品知識や業界知識、専門的なスキルを有する人材も欠かせません。
価格変動による「ブランドイメージ」や「評判」の変化に注意を払う

顧客や消費者が、価格変動に対して「反感」や「不信感」を抱いてしまうと、取り扱い企業のブランドイメージや販売商品・提供サービスの評判に悪影響を及ぼすリスクが高まることにつながってしまいます。
そのため、価格変動の可能性について事前に納得感のある説明を行い「透明性」を確保する、また顧客や消費者との信頼関係を構築する姿勢も重要なポイントになります。
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マーケティングは試行錯誤を重ねる必要がありますが、リソースの制約などによって思うように時間をかけることはできません。
現状や課題、求める成果をお聞きしてマーケティングの確度を上げるために併走させていただきます。
















