「サブスク型音楽配信サービスは儲からない」というつぶやき
「サブスクというシステムを考えた人は地獄に堕ちてほしいと思っている」
先日、シンガーソングライターの川本真琴さんがTwitterに投稿した内容が話題を呼びました。
この川本真琴さんの「音楽のサブスクリプションサービス(サブスク)は利益が少ない、儲からない」というメッセージ。
実際のところ、1回の視聴再生回数で¥0.01以下というケースもあるようで、音楽のサブスクで収益を上げる難しさを物語っています。
ビジネス・マーケティングの視点で掘り下げてみたいと思います。
『サブスク型音楽配信サービス』とは?
一曲ごとの販売ではなく、月額の定額制で何曲でも聴き放題のサービスであるサブスクリプション(※)形態の音楽配信サービス。
利用者・ユーザーにとっては恩恵が大きく、2021年の日本国内の音楽サブスク市場は前年比で126%の744億円と市場規模が拡大しているようです。
※『サブスクリプション』の詳細に関しては、下記の記事をご覧ください。
定期的に定額の利用料を支払うことでサービスが提供される『サブスクリプション』。利用者・消費者、サービス提供者・事業者それぞれのメリットとデメリット、定額制/月額制サービス、SaaSとの違いについて解説しています。
市場が拡大し普及・浸透が進んでいる一方、音楽コンテンツを発信する側にはさまざまな意見があるようです。
上述の川本真琴さんのように収益にならず嘆く方もいれば、シンガーソングライターの山下達郎さんのようにサブスクへ配信をしない選択をとるなど、どうやら音楽業界でも賛否が分かれるようです。
また「サブスク型音楽配信サービス」は、GoogleのサーチエンジンやYouTubeのようにアルゴリズムによって、ユーザーの好み・嗜好に応じて音楽コンテンツがおすすめされる仕組みがあり、一曲まるまる聴いたか途中で離脱したかで配信単価が変わるようです。
そのため、長く聴いてもらうために音楽コンテンツの導入である『イントロ』を無くしたり、曲構成の2番を無くして曲自体を短くする、曲の盛り上がる部分である『サビ』だけを作ってSNSなどで反響を見て曲の制作に着手する、など音楽制作に大きな影響を及ぼし始めているようです。
実際のところ『サブスク型音楽配信サービス』は儲かる?儲からない?
1回の視聴再生回数で¥0.01以下というケースもあると上述しましたが、実際のところ収益はどうなのでしょうか。
サブスクリプション型の音楽サービスの運営会社によって異なるようですが、音楽配信会社への登録料などが差し引かれて、楽曲の1回の再生数当たり、¥0.3~¥1の印税が発生します。
ですが、この印税はあくまでトータルの売り上げであり、ここから楽曲権利者やレコード会社の取り分を除くと、アーティスト本人の収入としては¥0.01以下もザラのようです。
一方、以前まで主流だったCDの場合、¥1,000のシングル盤であれば流通業者や製造コストを除いたアーティストの取り分は1%の¥10程度、作詞や作曲もしていればそれぞれ3%ずつが加算されるイメージとのこと。
単純にサブスクリプション型の音楽サービスとCDを比較すると、サブスクがアーティストにとって収入が乏しい傾向にあると言えます。
どの業界でも起こり得る「対象&施策と成果」のミスマッチ
世界規模で定着している『サブスク型音楽配信サービス』。
もはや人気アーティストであっても無視のできないマーケットとなっています。
このサブスク型音楽配信サービスという『場所(マーケット)』で収益を上げるためには、(極論を言ってしまえば)サブスクユーザーに人気の出る音楽コンテンツを提供すれば良いということになりますが、ヒット曲を狙って出し続けるのは難しいことなので、結果として満足する収益を上げるためには、アーティストにとって高いハードルがあると言えます。
この「特定のマーケットで施策をして収益を上げることが難しい」という傾向は、音楽業界に限らずとも発生する事象です。
期待する成果と得られる成果のミスマッチを起こすケース
プロモーションする『場所』と実行する『施策』が、求める成果とミスマッチを起こすケースとしては、上述の音楽サブスクを含めて以下の例が挙げられます。
『場所』=SNS、『施策』=フォロワー獲得を実施
例:SNSでプロモーションしてフォロワーが増えても、販促イベントに参加してくれない。。
『場所』=新聞メディア、『施策』=広告出稿を実施
例:新聞に広告を出稿したのに、売り上げが増えない。。
『場所』=音楽サブスクサービス、『施策』=販促活動を実施
例:音楽サブスクで楽曲を配信しても、収益が上がらない。。
もちろん、アクションを起こすことで求める成果が出る場合もあります。とはいえ、求めるレベルの成果が出にくい・成果が出ても頻度が低い傾向があります。
マーケットと施策によって得られる成果の例
こういったミスマッチが発生する理由としては、アプローチするマーケットなどの対象と、プロモーションする商品やサービス・プロモーション施策が合致しない、ということです。
対象に合う/合わない、言い換えれば向き/不向きを見極めることが重要なポイントになります。
これらのケースで得られる成果の例としては下記が挙げられます。
『場所』=SNS、『施策』=フォロワー獲得を実施、『求める成果』=販促イベントに参加して欲しい。
例:SNSでプロモーションしてフォロワーが増えても、販促イベントに参加してくれない。。
→フォロワーを増やす≒メインの成果は『認知度のアップ』。
フォローとイベント参加の間には一定の乖離が存在するため、一足飛びでとはなりにくい。
継続的なアプローチ(情報発信)でその乖離を埋めて、ゆくゆくはイベント参加を、という姿勢が望ましい。
『場所』=新聞メディア、『施策』=広告出稿を実施、『求める成果』=売り上げを増やしたい。
例:新聞に広告を出稿したのに、売り上げが増えない。。
→新聞に広告を出稿する≒メインの成果は『認知度や知名度のアップ』。
新聞広告を見て「こんな会社があるんだ」「こんな商品・サービスがあるんだ」と知ってもらえる。
もちろん場合によっては直接問い合わせも見込める。広告をきっかけにWebサイトへの流入、見込み客(リード)化、問い合わせもゆくゆくは・・・?
『場所』=音楽サブスクサービス、『施策』=販促活動を実施、『求める成果』=収益を上げたい。
例:音楽サブスクで楽曲を配信しても、収益が上がらない。。
→音楽サブスクサービスで楽曲を配信する≒メインの成果は『認知度や知名度のアップ』。
もちろん利益を上げることもできるが少額のケースが多い。
これまで接触機会のないユーザーに幅広く聴いてもらえる可能性があるため「宣伝」と割り切って、ファンになってもらいライブイベントなどに参加してもらう、物販などで収益を上げるといった形で収益の軸を変える。
これらのケースのように、期待する成果と得られる成果には違いがあります。
そのため、期待する成果へステップを踏むためと割り切る思考、場合によってはアプローチする市場を変えるなどの判断が必要になります。
とはいえ、音楽サブスクサービスの場合、世界規模で広がっています。
新規ファン獲得の観点でプロモーションをしていかないと、既存ファンにビジネスの比重をかけることになり尻つぼみになってしまうので、やはり無視はできません。
『期待する成果』と『得られる成果』のミスマッチを起こさないためには?
- 商品やサービス・プロモーション施策が、アプローチするマーケットなどの対象と合致するかどうか。
- 実施するプロモーション施策がアプローチする対象に『刺さる』のか。
この2点を見極めて、精度を高め続けていく必要があります。
そのための方法としての一例としては、これらが挙げられます。
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訴求したい商品やサービス、自社の強みや弱みなどを把握し、アプローチするマーケットとの相性を見極める。
「何を」「いくらで」「どこで」「どうやって」プロモーションするかを明らかにして施策を実行し、実行した施策の成果が出ない場合もトライ&エラーで試行錯誤を繰り返すことが求められます。
また、施策を実施することが目的になってしまう場合も多くあるので、その点にも注意が必要です。
中小規模の事業会社に所属するマーケターは、少人数でマルチタスクで業務を実行しなければなりません。なりがちな「やることが目的」を回避するための方法を解説します。
まとめ
今の時代は、「良い商品・サービスを作っただけ」では売れません。
類似した商品やサービスが普及していることもあり、しっかりと消費者の『購買に向けた心理プロセス』(※)を理解し、「商品やサービスを知ってもらう」必要があります。
「良い商品・サービスを作っただけでは売れない」。ではどうすればよいのか?歴史的な例をもとに解説しています。
「商品やサービスを知ってもらう」ことに適した『場所』はどこなのか、「商品やサービスを販売する」ことに適した『場所』はどこなのか、それぞれに適したプロモーション・販売促進活動はどういったものがあるのか、をさまざまな分析手法などで見極めて精度を高め続けていくことで、認知度のアップや新規顧客の獲得といった接触機会の増加、収益を上げるアクションを効率よく実施することができる可能性が高まることになります。
といっても、接触機会を増やせる『場所』や収益を上げる『場所』を見定める、適したプロモーション・販売促進活動を見極めるのはなかなか難しい、とお思いの際には当社にご相談ください。
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マーケティングは試行錯誤を重ねる必要がありますが、リソースの制約などによって思うように時間をかけることはできません。
現状や課題、求める成果をお聞きしてマーケティングの確度を上げるために併走させていただきます。