個人が特定の集団の信念や価値観、行動様式を「自身のもの」と見なし、集団と自己を一体化させる心理的プロセスを意味する『集団同一視』。
そもそもの「同一視」の意味と『集団同一視』の特徴と影響、典型例と発生する背景、
『バイラルマーケティング』との関係性とデメリットについて解説しています。
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所属組織を高く評価し自分を「同一視」する心理的プロセス

高度成長期の日本では、「モーレツ社員」と呼ばれる人がいました。
とある企業がCMのワンフレーズとして使用した「モーレツ社員」とは、家庭を顧みずに、会社のために献身的に働いたサラリーマンのことです。
「イケイケドンドン」の時代であった高度成長期では、日本を支える「企業戦士」と持て囃されましたが、バブル崩壊後は社会情勢が変化し、そういった働き方は殆ど見られなくなりました。
当時のサラリーマンは、なぜそこまで会社に対して「忠誠心」を持っていたのでしょうか。

こういった「忠誠心」の背景には『集団同一視』があります。
個人が特定の集団(組織やチーム、社会グループなど)の信念や価値観、行動様式を「自身のもの」と見なし、集団と自己を一体化させる心理的プロセスを意味する『集団同一視(Group Identification)』。
この『集団同一視』が生じると、自分が所属する集団を「好意的」に感じるようになり、実態以上にその集団を高く評価したり、依存感情や親愛の情を抱くようになって、より一層その集団に尽くすことに喜びを見出すようになるのです。
つまり、「モーレツ社員」は、「在籍する会社という集団」を「自分自身」と同一視することで、会社のために身を粉にして尽くした、というわけです。
そもそも「同一視」とは?

「同一視」という言葉は、「同一」と「視る」という2つの言葉から成り立っています。
「同一」は「まったく同じであること」、「視る」は「みる、みなす」という意味で、つまり「同一視」は「物事や人を同じものとみなす」という意味になります。
また、この「同一視」は「単に似ている」というだけでなく、「区別せずに一体化して考える」というニュアンスが強いのが特徴です。

「同一視」は、心理学では「アイデンティフィケーション」と呼ばれています。
これは、他者の特徴や価値観、言動などを自分のモノとして取り入れる心理的なプロセスであり、「子どもが親の真似をすることで、親と自分を同一視する」ことが身近な例として挙げられます。
この「同一視」は、自己の成長や社会性の発達、集団や組織の一員としてのアイデンティティを形成する際に重要な役割を果たすものとして知られています。
『集団同一視』の主な特徴と影響

『集団同一視』の主な特徴と影響としては、以下の点が挙げられます。
- 「一体感」と「帰属意識」の強化
- 「同調」と「模倣」の促進
- 『内集団バイアス』が強まる
- 「自己肯定感」が高まりやすい
- 「過剰適応」が生じてしまう
「一体感」と「帰属意識」の強化

『集団同一視』によって、「組織やチームの一員である」という認知・感情的な結びつきが強まります。
「同調」と「模倣」の促進

また、所属する集団の基準に自分を合わせる(同調する)ようになり、ほかのメンバーの言動や外見などを模倣するようになります。
『内集団バイアス』が強まる

自分が所属する集団・グループ(内集団)を好意的に捉えて、ほかの集団よりも優先・優遇する心理的傾向である『内集団バイアス』が強まる傾向もあります。
※『内集団バイアス』の詳細については、こちらのページをご覧ください。
自分が所属する集団やその集団に属するメンバーを、それ以外の集団よりも高く評価し、好意的に感じるようになる『内集団バイアス』。発生例や発生メカニズム、発生することで生じるデメリット、弊害を防ぐ方法などについて解説しています。
「自己肯定感」が高まりやすい

『集団同一視』によって「集団の成功=自身の成功」と捉えやすくなるため、集団を介して自己評価を高める動機になります。
「過剰適応」が生じてしまう

一方で、所属する集団の「期待」に応えようと、自分自身の感情を抑え込んだり無理に努力しようとして、心身をすり減らしてしまう「過剰適応」に陥りやすいリスクも。
『集団同一視』の典型例

所属する集団に依存感情や愛着を抱き、集団を自身を一体化させるようになる『集団同一視』。
自身が属する集団を「アイデンティティの拠り所」としようとするため、さまざまな場面で『集団同一視』が見られます。
典型的な例としては、以下が挙げられます。
- 「モーレツ社員」や「ゾス文化」
- 「応援する野球チーム」と「自分」を同一視
- 「怪しい投資セミナー」や「宗教団体の集会」
「モーレツ社員」や「ゾス文化」

典型的な例の一つが、冒頭の「モーレツ社員」です。
「在籍する会社という集団」と「自分自身」を同一視することで、家族も顧みず会社のために献身的に働く、というわけです。
とはいえ、終身雇用制度が根付いた時代から変わり、特にバブル崩壊以降は「会社に尽くした挙句、リストラの憂き目に遭う」ことも見られます。

最近では、あえて厳しい環境で自分を鍛えたい若者や、営業の現場で「行動力を示す」言葉を意味する「ゾス」が、ガムシャラに働く若年層の一部で合言葉になっています。
「応援する野球チーム」と「自分」を同一視

日常の例としては、野球チームの熱狂的なファンが、その贔屓にしているチームと自分を「同一視」してしまうのも、『集団同一視』に当てはまります。
チームが勝てば熱狂的に喜び、逆に負ければあたかも自分が負けたかのような屈辱感を覚えるようになります。
「怪しい投資セミナー」や「宗教団体の集会」

怪しい投資セミナーや宗教団体の集会も、『集団同一視』が芽生えるケースと言えます。
登壇したスピーカーが「仲間」「一緒に」というキーワードを繰り返して発することで、当初「怪しい」と思っていた参加者に『集団同一視』が生じて、「疑いを持つ自分がおかしいのでは?」「怪しいと思っていたのは杞憂なのだろう」と思いやすくなるのです。

余談になりますが、「怪しいのでは?」と思った際、『認知的不協和』が生じて「怪しいという直面した現実」を歪めて解釈してしまうことも起こりえます。
※『認知的不協和』の詳細については、こちらのページをご覧ください。
自身の本音と実際の行動に矛盾が生じる時に不快感やストレスを感じるようになる『認知的不協和』。生じるメカニズムやビジネスシーンにおける発生例、マネジメントやマーケティングにおける活用例と抜け出す方法について解説しています。
企業組織における『集団同一視』の影響

企業組織で『集団同一視』が生じると、以下のような影響を及ぼすようになります。
- 会社に所属していることを「誇り」に感じる
- 「安心感」を得る
- 「仲間意識」や「団結力」が高まる
- 『同調圧力』を受けやすくなる
所属していることを「誇り」に感じる

企業組織で『集団同一視』が生じることで、会社に所属していることを「誇り」に感じるようになりやすくなります。
「安心感」を得る

所属する組織の意向に沿ったり、尊敬する人を真似ることで、不安や劣等感を解消し「安心感」を得ることも、影響(効果)の一つと言えます。
「仲間意識」や「団結力」が高まる

また、『集団凝集性』が誘発して「組織の一員であり続けたい」「掲げる目標を達成したい」と、仲間意識が強まったり団結力が高まる傾向もあります。
※『集団凝集性』の詳細については、こちらのページをご覧ください。
「ステーキを売るな、シズルを売れ!」で知られる『ホイラーの法則』。提唱した人物と、セールスのノウハウとも言える5つそれぞれの公式について解説しています。
『同調圧力』を受けやすくなる

良くも悪くも、所属する企業組織内での意思決定において、「同調しよう」とする心理的な圧力(同調圧力)を受けやすくなります。
※『同調圧力』の詳細については、こちらのページをご覧ください。
多数派が少数派に価値観を暗黙的に強制する『同調圧力』。なぜ発生するのか、メリットやデメリット、日本でよく見受けられる理由やビジネスへの応用について解説しています。
『バイラルマーケティング』との関係性

「属する集団=自分」と一体化させる『集団同一視』という心理的プロセスは、SNSや口コミを通じて、商品・サービスの情報を「ウイルス(Viral)」のように人から人へ拡散させる『バイラルマーケティング』における「熱狂的なファンの形成と情報の拡散」「集団への同調」を生み出す強力なトリガーになります。
※『バイラルマーケティング』の詳細については、こちらのページをご覧ください。
インターネットやメール、ソーシャルメディア(SNS)などを経由して、口コミ(クチコミ)やシェアにより、自然発生的に情報を広めていく『バイラルマーケティング』。メリットやデメリット、事例やバズマーケティング・インフルエンサーマーケティング・ステルスマーケティングとの違い、実施手順や成功率を高めるためのポイントなどについて解説しています。
『集団同一視』を後押しするメカニズムや、「集団同一視×バイラルマーケティング」によって生じる効果としては、以下が挙げられます。
- 『バイラルマーケティング』を後押しする『集団同一視』
- 購買行動を後押しする『バンドワゴン効果』
- 周囲の人々の意向を支持・従う『ソーシャルプルーフ(社会的証明)』
- 『ステルスマーケティング』には注意が必要!
『バイラルマーケティング』を後押しする『集団同一視』

SNSや口コミを介して「インフルエンサー」が商品やサービスを推奨することで、受け手である消費者は企業広告よりも「安心感」を得やすくなります。
自身が支持するインフルエンサーが発信する「商品やサービスのブランド情報」に対して、同一視や愛着がコミュニティ内で形成され、信頼性の高い情報として伝播しやすくなる、というわけです。
購買行動を後押しする『バンドワゴン効果』

『集団同一視』によって「インフルエンサーを支持するフォロワーコミュニティ=自身」と捉えやすくなり、「フォロワーのみんなが選んでいるモノを持ちたい」という心理傾向(=『バンドワゴン効果』)が強くなり、結果として情報が爆発的に拡散(バイラル)することへの後押しとなります。
※『バンドワゴン効果』の詳細については、こちらのページをご覧ください。
バンドワゴン効果とは? バンドワゴン効果とは、経済学者であるライベンシュタインが1950年の論文の中で提示した行動心理学の事象の1つです。 「バンドワゴン」とは行列の先頭を行く「楽隊車」を意味し、「みんなが持っているなら …
周囲の人々の意向を支持・従う『ソーシャルプルーフ(社会的証明)』

また、「フォロワーコミュニティ=自身」と捉えることで、周囲のフォロワーのレビュー・口コミや「いいね数」を基に意思決定しようとする『ソーシャルプルーフ(社会的証明)』が生じやすくなり、コミュニティという「集団」が支持する情報を「ウイルス」のように拡散させるようにもなります。
※『ソーシャルプルーフ(社会的証明)』の詳細については、こちらのページをご覧ください。
周囲の人の意見や行動といった社会的評価に重き(信頼)を置いて、自分自身の判断や行動に妥当性を持たせようとする『ソーシャルプルーフ』。なぜ発生するのか、7つの活用例、獲得するための方法などについて解説しています。
『ステルスマーケティング』には注意が必要!

『バイラルマーケティング』は、消費者の「みんなが選んでいるモノを持ちたい」という心理を刺激することで、ブランドの好感度や売上を高める効果が期待できますが、一方で『ステルスマーケティング』には注意が必要です。
『バイラルマーケティング』と『ステルスマーケティング』はどちらも「口コミ」を利用する点が似ていますが、自然に情報を拡散させるか、企業が意図的に情報の拡散に介入するかという根本的な違いがあります。
『バイラルマーケティング』は自然な拡散を促しますが、『ステルスマーケティング(ステマ)』はインフルエンサーなどを「サクラ」として利用する手法であり、法的な規制対象となるため、「広告」である場合にはその旨明記しなければなりません。
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この続きでは、『集団同一視』によって生じてしまうリスクについて解説しています。
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